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第23話:キスの次は何するの?

【SIDE:初音美結】


 貴雅に許してもらったのもつかの間、私は彼にベッドに押し倒されていた。

 彼氏とは言え、こういう展開は初めてなのでドキドキしまくる。

 

「や、やだぁ。貴雅、冗談だよね?」

 

「……さぁて、それはどうかな。俺も一応、男だぞ」

 

 目の前に迫る貴雅に心臓は大きく高鳴る。

 私の手を掴む彼は男の子なんだって意識させられる。

 

「みゆ先輩、自分が今、何をされているのかぐらいは理解しているよな?」

 

「私を子ども扱い&バカにしないでよ。わかってるよぉ」

 

「それならOK。ここでそれさえ分からないなら、間違いなく引いていた」

 

 彼は意地悪く笑うと、真っ直ぐな瞳をこちらに向ける。

 あぅ、今回の場合はそちらでもよかったかも。

 貴雅の事は好き、生まれて初めてした恋の相手だもん。

 だけども、体格の差もあるし、キスもまだ慣れていないの次に進むのは早いって。

 

「わ、私たちにはまだ早いっていうか……」

 

 慌てふためく私と違い、覆いかぶさるようにする貴雅は余裕の様子。

 恋の経験者はこちらの経験も、もちろんあるということで……。

 

「うぅ、やだぁ……私、負けてるのかな」

 

 あの絵美とそういう事をしていたとか、こういうのはあまり想像したくない。

 

「何が嫌なんだ?」

 

「何でもないもんっ。貴雅の余裕な態度が気に入らないのっ」

 

「余裕?そりゃ、ロリ先輩と違い、余裕くらいは常にあるさ」

 

 その余裕は嫌だ、でも、付き合うという事はそういう事も含まれている。

 私の身体に触れてくる貴雅、いつもと違う雰囲気に気持ちが高ぶる。

 

「す、ストップ~っ!お姉さんはこれはダメだと思うの」

 

「恋人なら誰もが通る道だろ?それとも、俺達は恋人じゃないのか?」

 

「そ、そうだけど。こういうのはもっと大人になってというか、ごにょごにょ……」

 

 私も付き合うという事でこのような展開は想像くらいしていた。

 小夜子からも以前の調教発言後にいろんな雑誌を貸してもらって勉強してたし。

 けれども、漠然としてた想像の話だったので、現実に貴雅から求められるとは思っていなくて、何ていうか、全く実感がわいていない話だったの。

 私はふと貴雅の話を思い出す。

 家を継ぐという問題で言っていた、“理解”してたのと“実感”するのは違うんだって。

 確かにそうかもしれない、覚悟はしていても現実は大変だよ。

 でも、ここは素直に流れに任せてみるのも……って、やっぱり無理!?

 私がどうすればいいか、涙目になりかけると、

 

「くっ、ふははっ……」

 

 ふと、私から身体を離すと貴雅が笑い出す。

 

「予想以上の慌てようだな。これは俺が悪かった、冗談だよ。冗談、あははっ」

 

 笑いながら彼は少し乱れた浴衣を直してくれた。

 私はそこで自分がからかわれていただけだと気づく。

 

「にゃ~っ。も、もしかしてからかわれていたの!?」

 

「当たり前だろ。俺がロリ先輩に欲情すると本気で思っていたのか?」

 

「ムカっ!そう言う発言するから貴雅は意地悪なんだよ。めっちゃドキドキしたじゃんかっ!こういう冗談は今後、絶対に禁止だからね!ドキマギさせないでよ!」

 

 年下にかわかわれるのは非常に不愉快なの。

 私が頬を膨らませて怒ると、貴雅は意地悪な顔のまま笑い続けてる。

 

「……自分でしておいて何だが俺と先輩がこのような展開になるのは無理があるな」

 

「それはそれでめっちゃ失礼だし!いいよ、そんなら今から私の本気を見せてやる!」

 

「俺に好き放題されるのが目に見える。それでもいいならどうぞ?」

 

「うぅ……ずるい、今日の貴雅は意地悪モード全開だよ」

 

 もしや、昼間の仕返しとか?

 喧嘩、そうだ……これってもしかして?

 あまりにも自然なので今日は喧嘩していたことなんてすっかり忘れてしまっていた。

 これはきっと彼なりに考えた行動かもしれない。

 嫌な雰囲気を全て消してしまう、いつも彼は私の事を考えてくれているから。

 さっきだって、ホントに襲うつもりなんてなくて。

 

「……貴雅。私の事、好きならいいよ?」

 

「冗談だって言っただろ?大体、こんな家族のいる家でするわけないじゃないか。はぁ、ロリ先輩はそう言うこともちゃんと考えくれよ。俺相手に不釣合いだ、それにそう言う台詞は震えずに言ってくれ」

 

「くぅっ……ロリ先輩言うなぁっ。ふみゅぅ」

 

 結局、私は貴雅にいつも守られているんだよね。

 喧嘩しても、彼は私が傷つかない方法を選んでくれる。

 これじゃどちらが年上なのか本当に分からない。

 私は貴雅の好感度をさらにあげる。

 やっぱり、貴雅を好きになったのは正解だよ。

 

「機嫌を直せ。悪い冗談だったよ、反省してます」

 

「ホントに?貴雅って冗談と意地悪ばかりするもんっ。私にだって貴雅を魅了する魅惑はあるんだからね?」

 

「それはどうかな。ホントにみゆ先輩がからかいがいがあるというか、面白い子だな」

 

 私の頭をいつものように撫でる、子ども扱いするなぁ。

 そう言う対象に見てもらえないのはそれはそれで残念かも。

 いつか、本当に想いで結ばれた関係になったらこういう展開もありなのに。

 まだドキドキ感が消えないのでそんな事を思ってしまったりするの。

 

「ほら、さっさと天音の所に帰れ。アイツも待ってるだろ」

 

「分かった。でも、恋人なんだからおやすみのキスぐらいして?」

 

「今なら首筋にキスマークでもつけてやるが、それでいいなら?」

 

「……え、遠慮します~。おやすみなさいッ!」

 

 私は危機感に逃げるようにして貴雅の部屋を去る事にする。

 廊下に出た私は深呼吸をひとつした。

 

「……やばい、思い出すだけでドキドキするよ」

 

 恋人同士の行為に興味ぐらいはあって、今日も少しぐらいなら……。

 やぁーん、私ってば何を考えているんの?

 あぅあぅ、私にはまだまだ縁のなさそうなお話だな。

 貴雅に最後までからかわれてばかりの私、いつか見返してやりたいなぁ。

 その前に貴雅がドキッとして意識してくれるような大人になりたい。

 私っていつまでたっても貴雅好みの女の子になれないのかな……。

 

 

 

 

 ――その頃の貴雅。

 彼は自分の布団に座り込んで頭を抱えていた。

 数分前の自分の犯した過ちを後悔している。

 

「うわぁっ!?我が家で彼女に襲い掛かるってどこのオオカミだよ」

 

 顔を真っ赤にさせて自分の行動を恥ずかしがる貴雅。

 

「何やってるんだよ、雰囲気に飲まれるなよ、俺。この俺がマジであのロリ先輩に欲情するとはありえない。理性で暴走を止めれてよかった、ギリギリだったけど。これが浴衣効果と言うやつか?しかもあの大きな胸の揺れ方は必殺技かよ。みゆ先輩が可愛すぎなんだっ。分かっていたけど、年上で可愛いなんて反則なんだよなぁ……」

 

 そんな風に自分を責めて反省をしているなんて私は知らない。

 

「ちくしょーっ。布団にみゆ先輩のいい匂いがついて眠れないじゃないか」

 

 ……心配せずとも、彼もちゃんとしたお年頃の男の子なのでした。

 

 

 

 

 私は天音ちゃんの部屋に戻ると、すでに布団がしいてある状態。

 彼女は漫画の本を読んで私を待ってくれていた。

 

「もう帰ってきたんですの?貴雅兄様は許してくださいましたか?」

 

「……ふぇ?許すって?」

 

「何を言ってるんですか?みゆちゃんはお昼の喧嘩で許してもらいにいったんでしょう。それすら忘れて……あれ?お顔が赤いようですけど何かありましたの?」

 

 天音ちゃんがこちらを向くので恥ずかしくて顔を隠す。

 こんな顔を天音ちゃんに見られたくはない。

 

「べ、別に何もないよぉ。貴雅は普通に許してくれたから、問題は何もなかったの。そう、何一つありません。だから、無事に解決したんだ、えへへっ……さぁ、もう寝ようかな?」

 

「怪しいですわ、みゆちゃん。何かありましたわね?」

 

 天音ちゃんの鋭い指摘にも私は誤魔化すしかない。

 だって子供の彼女にはまだ早いお話だもんっ。

 

「……やだなぁ、何もないよ。ちゃんと理由を話したら許してくれたの。貴雅は優しいから好きだよ。私も貴雅のことが少しだけ分かったんだ。そろそろ寝ようか、うん、そうしよう」

 

「みゆちゃん、首筋の所が赤いです。そんなキスマークつけて言う台詞じゃありませんわ」

 

「え?嘘?ホントに!?」

 

 急いで首元を見ると確かに赤くなっている。

 いわゆるキスマーク、この痕って中々消えないんじゃないの?

 いつのまに貴雅がつけたんだろ、うぅ……。

 

「こ、これは……あの、やましい事をしてたわけじゃないくて」

 

「ショックですわ。兄様とみゆちゃんがそんな深い間柄になっていたなんて」

 

「違うのっ!何もなかったんだってば」

 

「皆、そういうんですね。昔、お母様も同じ事を言って誤魔化していました」

 

 美琴さん~、せめて娘の前ではもう少し上手く誤魔化してください。

 その後、私はしっかりとどういう展開になったかを説明する事に……貴雅のバカぁ。

 それにしても、今日はホントに大変な1日だったなぁ。

 そろそろ、時間になっていたので、私は天音ちゃんと一緒に寝ることにする。

 

「お友達と一緒に寝るのって初めてですの。こういうお泊りって言うのにも憧れていました。みゆちゃんは私にいろんな事を経験させてくれて嬉しいですわ。ありがとうございます」

 

「天音ちゃん……。そうだ、学校ではどうなの?うまくできている?」

 

「少しだけ前進と言った所でしょうか。クラスで浮いた存在なのは変わりませんけど、話しかけてくれる子は増えました。みゆちゃんと小林君のおかげです。彼が今、私にいろんな子を紹介してくれるんです」

 

 あの件以来、小林君の事を天音ちゃんは気にかけているみたい。

 恋する一歩手前、と言う感じかな。

 

「小林君って天音ちゃんに優しいじゃない。いい感じの関係してる?」

 

「……はい。私の中で彼に期待してしまう気持ちが膨らんでいますもの。このまま行けばいいんですけどね。クリスマスに一緒に遊ぶ約束もしたんですよ。みゆちゃんもクリスマスは貴雅兄様と一緒でしょう?」

 

「うん。貴雅がデートに誘ってくれたんだ。楽しみだよ」

 

 数えるくらいに日数が迫ったクリスマスデート、特別な日になりそうな予感がするの。

 天音ちゃんは布団の中で私の手を握りながら言う。

 

「みゆちゃんに出会えて私の世界は変わりましたわ。貴雅兄様も同じみたいですの。これからも貴雅兄様と私をよろしくお願いしますね。私のお友達としてお付きあいして欲しいですわ」

 

「こちらこそ、よろしくだよ。私も二人に出会えて毎日が楽しいの」

 

 この巡りあいを与えてくれた神様に感謝、私も毎日が充実しているんだから。

 大好きな貴雅と幸せな日々を送る事ができたら、それだけでいいんだ。

 

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