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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第三章 魔法科学校の秋は、イベント盛りだくさん

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第41話 カルメ焼き

「おまたせ。イクタおじー」


 プリティカが、写真撮影から戻ってきた。


「撮影会は、もういいんだな?」


「他のスタッフが交代してくれたから、大丈夫だよー」


「大変だな、写真を撮るだけでも」


「おじが来るまではー、デボラちゃんが人気だったんだよー」


 プリティカが言うと、銀トレイを持ってデボラが顔を隠す。


「恥ずかしいですわ。プリティカさん」


「でも、男性貴族様に大人気だったじゃーん。メイドさん衣装のデボラちゃん」


「よ、よしてくださいましっ」


 ミニスカ衣装を抑えて、デボラがまた頬を染めた。


「でも、よかったよね。一番見てほしかった人に見てもらえてさー」


「プリティカさんっ! いいんですわ。イクタは、毎回見慣れていますし」


「えー? 誰もおじのことだなんて言っていないよー」


「もう、プリティカさん! 茶化さないでくださいまし!」


 トレイでプリティカを叩かん勢いで、デボラが怒り出す。 


「まだ、おじのお店が開くまで時間があるじゃーん。デボラちゃん、文化祭を見て回ったら?」


「よろしいんですの?」


「ていうか、ウチら二人だけがクラスの子たちからお客さんを独占しちゃってるから、ウチらは退場でいいってさ。あと男装のペルちゃんも」


 儲けすぎるのも、考えものなんだな。


「ではイクタ、一緒に参りましょう」


 デボラの案内で、オレは文化祭の出し物を見て回る。


 学園をこんなふうに見て回るのは、初めてだな。ビジネスだと思って、学園や生徒たちには接してきた。相手は女子である。あまりオレみたいなオヤジが関わるべきではないと、思っていたが。


「いかがでしたか、イクタ? リックワード女子の文化祭は」


「焼きそばが、うまかったな」


 異世界の漫才は、どこが笑いどころかわからなかった。が、料理の腕はたしかなようである。


「じゃあ、みんなのところに戻るか。オレのカルメ焼きを出す時間だ」


 文化祭巡りを終えて、オレも店を始める。食堂の前で、簡単な骨組みを組み立てた。簡易屋台の、完成だ。


 オレが出すのは、カルメ焼きである。


「まずは、重曹でタネを作っておく」


 材料は重曹と卵白と砂糖だ。粘り気が出てきたら、すりこぎ棒に塗っておく。


 あらかじめ作っておいた砂糖水を、銅製のオタマにすくって熱する。


「中が一二〇度になったら、重曹タネを塗ったすりこぎ棒で思い切りかき混ぜる」


 ゴシゴシと、中央部をかき回した。


「どれくらいで、できますの?」


「中身にオタマの底が見えるくらいの粘り気が出たら、手を止めるんだ」


 十分にかき混ぜ終わると、中身が膨らんでくる。


 女子生徒たちから、歓声が上がった。


「どういった原理ですの?」


「砂糖の結晶化と、熱分解によって、こんな現象が起きるらしい」


 原理を教わっても、よくわからなかったが。


「おいしそうですわ」


 デボラには、科学的な解釈より味に興味がおありのようだ。


「ほら、エドラ」


 オタマの底をわずかに熱し、エドラに差し出す。


「おー。ありがとー」


 理科の実験などでも、このスイーツは出てくる。


「これ、めちゃウマいんだぞー。去年食って、やみつきになった」


「そうね。半分こしたわよね」


 エドラたちは、一年生組にカルメ焼きを渡す。


「いいんですの?」


「食べてみて、好きになって欲しいぞ」


「ありがとうございます。はむ……フワフワで、おいしいですわ!」


 できたてのカルメ焼きを味わって、デボラの顔がほころんだ。サクッという音が、また食欲をそそる。


 まずは、一年生組が食べ終えた。


 カルメ焼きは甘みも程よく、ふっくらしているために腹に溜まりにくい。


 あれだけ屋台の料理を食べたデボラも、カルメ焼き一つを軽々と平らげた。カルメ焼きが、オタマサイズだからかもな。


「先輩方は、食べませんの?」


 唇を舐めながら、デボラが上級生たちに尋ねる。


「違うんだ。オイラたちは、自分で作るんだよ」


 上級生は全員、マイオタマを用意していた。


「用意がいいな」


「そりゃあそうだぞ」


 エドラが、オタマを持ちながらポーズを決める。


「この屋台のすごいところは、自分で作らせてくれる体験コーナーがあることなんじゃ」


 外出に消極的なパァイも、このときばかりは嬉々としてカルメ焼きを作った。


「おお、膨らんできた! やっぱり、いつやっても面白いな、これ!」


 ミュンも、子どものようにはしゃぐ。


「いつもおっちゃんの料理といえばラーメンばっかりだけど、これも楽しくていいな!」


「そうじゃろう」


 パァイも、自分のカルメ焼きを口にして、満足げだ。


 デボラたち一年生組も、カルメ焼きづくりを始める。


 そんなことをしていると、続々と人が集まってきた。


「今年もカルメ焼きですかー? 楽しみだったんですよー」


「おお、シスター・ダグマ。一緒にやりますか?」


「いいですねー。火加減を見ないといけないので、お手伝いしますよー」


「お願いします」


 みんなが店番をしてくれている間に、オレはやや大きめのカルメ焼きを作る。子どもたち用に、大型サイズを用意するのだ。


 今年の文化祭でも、カルメ焼きは無事に完売した。体験コーナーも、女子生徒の協力があったおかげで盛り上がっていたし。言うことなしである。


「では、温泉があるから入ってくれ」


 ペルが、温泉を用意してくれているという。


「温泉だと?」


「知らないのか? リックワードではキャンプファイアーの火で湯を沸かし、温泉に浸かるのが習わしなんだぞ?」


「それは、知ってるよ」


 でも湯を用意してくれるのは、ペルなんだよな? どういうこった?


「おやかたー。持ってまいりやしたー」


 いつぞやのスライムが、バカでかいサイズで現れる。湯気が立っていた。


 こいつがお湯だったのか?

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