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インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される  作者: 椎名 富比路
第一章 女子魔法使いたちの春メニュー

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第11話 ポンコツ賢者のやり直し

 パァイが現役だった頃の時代は、魔法は口伝などの方法で学習するしかなかった。専門外の分野も多い。


「そこで、この図書館を借りておるわけよ。ここは禁書も多数揃っておる。その管理をやってやるから、吾輩をこの図書館に住まわせよ、と学長と契約したのじゃ」


 しゃべりながら、パァイはホットドッグにマスタードをドバドバとかける。


「学長とは、ご友人同士ですのね?」


「なにをいうとるか。あやつは、吾輩の弟子よ」


「え、学長がパァイヴィッキ様のお弟子様!」


 脳がバグるよなあ。校長先生のほうが生徒より年下で、しかも弟子だとは。


「しかし、どうして学生に? あなたほどの実力者でしたら、ここの職員として」


「面が割れたら、色々質問されて吾輩が学べぬ!」


 賢者様ともなると、先生が聞きに来ることが多い。


「パァイは、人に教えるのが苦手なのだ」


 なんたって、フィーリングで魔法を覚えていた年代だから。


「そんな。確証がありませんわ!」


「あるんだ、それが。ソースは、こいつだ」


 オレは本棚から、一冊の本を取り出す。さっきオレがディスった、『ゼロから始められる錬金術』を。


「それ、何世代に渡って語り継がれている、奇書ですわね。魔法科学園三大奇書とも呼ばれておりますわ!」


「その奇書の著者が、コイツだ」


 オレが説明をすると、デボラが固まった。


「バカな! だってこれ、名前が全然違いますわ!」


「編集に変えられたんだ」


 あまりにも悪書過ぎて、著者名すら登録させてもらえなかったという。


「うむ……凡人にもわかりやすく、錬金術のイロハを詰め込んだはずなんじゃが。『タイトルがダセえっすねえ。これじゃ、サギ広告っすよ』と、編集にも苦言を呈されたぞい」


 なので、パァイは人にレクチャーするのをあきらめたそうだ。


「そんな人のお弟子様が、学長にまで上り詰めるなんて」


「コイツを反面教師にして、ちゃんと魔法を教えようってなったらしい」


「すごく、理解できましたわ……」


 かくしてそんな経緯があり、生徒に扮してパァイは勉強をやり直すことにした。 

 さすがにこれはイカンと思ったようである。


「毎回擬態して、生徒に変装して、ただの一生徒として扱ってもらっておるのじゃ。一部の人間にしか、正体を知らぬ」


 三年経ったら別の顔になって、この学校に入り直すのだ。


「おかげで、イクタの学食も堪能し放題というわけじゃよ。あむ」


 マスタードが垂れないように、パァイは下から顔をのぞいてホットドッグを食らった。


「かなり重宝しておる。特に、イクタの手料理はうまい。ニホン人と言うだけあって、食へのこだわりが強く、かつこちらの舌に味を合わせてくれる。こんな器用な者は、そうおらなんだ」


「賢者に言われたら、恐縮だな」




「ここでは、ただの学生ぞ。しかし、話の合う者がおらんというのは、やや寂しいのう」


 パァイが、ポテサラをモゴモゴする。


「賢者だからな」


 とはいえ、同レベルの話ができないのは孤独を感じるのだろう。


「たまに余興で、修学旅行なども参加するのじゃ。この間は、ドラゴンの住まう岩山じゃった」


 あそこか。温泉たまごがめちゃウマいんだよな。


「しかし、そこのドラゴンの中に顔見知りがおったんじゃ。危うく、身バレするところじゃったわい」


 コーヒーのおかわりを飲みながら、パァイがガハハと笑う。


「すごく貴重なお話のはずなのに、内容がえらく庶民的ですわ」


 賢者なんて、そんなもんだ。


「この図書館を利用する生徒も、少ない」


「今は、魔法だってスマホだもんな」


 この世界では、魔法の使用に電子書籍デバイスを利用している。重たい魔導書を持ち歩くのは、もはやファッションの領域でしかない。


「図鑑はさすがに実物でないと読みづらいが、簡単な魔法ならスマホでポポポーンだもんな」


「吾輩としては、静かで居心地がよい。しかし、本がかわいそうじゃのうと思うてなぁ」


 本棚に、さみしげな視線を送る。


「なるほど。事情はわかりましたわ。イクタの思惑が、なんとなくわかりましたわ」


「どういうこった?」


 オレは特に、他意はないんだが?


「パァイヴィッキ様は、お友だちを欲しがっておられるのでしょう?」


「なぜ、そういう話になるんじゃ?」


「隠さずとも、わかりますわ。ではパァイ様、お友だちになりましょう。ひとまず、連絡先交換から」


「う、うむ」


 デボラに続いて、パァイもスマホを差し出す。第一世代のもので、一切機種変もしていない。


「学長に言われて買ったものの、使わぬと思うておったわい。が、さすがに動作が遅すぎるのう」


「では、機種変から覚えましょう」


「ふ、ふむ。これで吾輩も、『でじたるねいてぃぶ』とやらになれそうじゃ」


 悪戦苦闘しつつも、どうにかパァイは連絡先交換ができた模様だ。


「では、下がってよい。足止めして、悪かったのう」


「とんでもございません。では、今後ともよろしく。では」


 さすがに、もう朝のHRに出席しなければ。


「よい。ちんからほいっと」


 デボラの前で、パァイが指先をクルッと回す。


「わわ!」


 驚いた状態のデボラが、パッと消えた。


「教室まで転送してやったわい。これで遅刻は免れよう」


「だが、ちょっとまずいんじゃないか。あいつまだエプロン取ってねえ」


「……あっ」



~*~

 


 突如教室に現れたデボラの姿を見て、生徒が黄色い声を上げる。


「きゃー。デボラちゃん今日の衣装かわいいー」


 クラスメイトのプリティカが、ぎゅーっと抱きついてきた。


「お待ちになって! これには深いわけがありましてーっ!」




 その日、デボラのクラスにて、文化祭の出し物が『メイド喫茶』に決まったという。


(モーニング編 おしまい)

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