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魔の巣食う校舎で私は笑う  作者: 弥生菊美


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4.悲報


  13時過ぎ、ようやく仕事がひと段落した三橋さん達と食堂へ向かう。

大学には食堂が5つある。とは言っても、そのうち3つは病院側にあるのだが大学側の食事に飽きると病院職員も大学職員も双方の食堂を行ったり来たりするのだ。土地柄大学生や病院職員と人が多いため、周辺にも飲食店が多いが社割という誘惑があるため、多くの職員が食堂を利用する。


 学生の方が外に出て飲食する方が多い、何せ学生の大半は私立大学ともあって代々両親がこの大学の出身者だったり、両親のどちらか、もしくは双方が医者であるなんて珍しくない。むしろ半数以上がそういった家庭だ。高い学費を出せるご家庭が多いのだ。その為、財布の中身は安月給の職員よりも潤っている。


 こっちとら、500円のカレーライス単品を食べているのに学生は1000円のパスタセットを食べながら、安くて助かるねー!なんて言っているのを、歯を食いしばって聞いている。授業をすれば、男女問わずブランド物のリュックやカバンが無造作に床に置かれ、実習が終わればもう白衣なんて使わないから、必要ならまた買えばいいしと、ゴミ箱に白衣の山が出来上がる。


 旅行も学生同士で当たり前のように海外に行くし、一人暮らししているマンションは山手線の駅近タワマンだったりする。羨ましすぎてついつい話がそれてしまった。失礼。


 さて、風呂屋から戻ってきたところで三橋さん達と合流して、今日は病院の第一食堂に行こうという事になった。そこは患者や家族も利用できる食堂なので、カフェ的な内容の軽い食事も多く女性に人気だ。

13時になっても未だ賑わう食堂で、薄緑色の安っぽいプラスチックのお盆を手に取れば、自分の目的のメニューの札の下へと並ぶ、私は日替わりのハンバーグ定食にすることにした。

 

 三橋さんは最近胃の調子が悪いという事でうどんの列に並び、山田さんはミートスパゲッティーの列に並んでいた。二人とも麺類か、そういえば席を確保し忘れたなと辺りを見渡せば、ちょうど窓際の4人席が空いたところだった。


 並んでいなかったうどん列の三橋さんが、さっさと受け取ると「席取ってるねー」と言い残して、その窓際の席に向かっていった。山田さんと私が「はーい」と間延びした返事をして、正面に視線を戻す。早朝にパンを食べたきりで、鳴りだしそうな腹の虫を警戒しつつ自分の順番を待った。

 

 「だぁ~やっとご飯食べれる~」と、半ば倒れこむように席に着けば、まだ山田さんはレジ待ちだった。三橋さんもお腹すいた…と呟きつつスマホで何やらポチポチとしている。

 

 最近アプリゲームにはまっており、隙あらばプレイしている三橋さん、今もきっとそれをやっているんだろう。再度山田さんの方を向けばやっとレジの順番が回ってきたようだ。この食堂はメニューをお盆に乗せてもらった後、その流れでレジに行き自己申告して会計をしてもらうのだ。システムはアナログだが、お支払いは社員証がICカードのようになっておりタッチ決済で支払いが可能だ。


 やっとこちらにやってきた山田さんが「おまたせー!」と言いながら私の隣に座る. 窓際に座る私と三橋さんが、いいよいいよと言いながらも素早くプラスチックの箸を持ちイザっ!と、食事を開始する。食べ始めて間もなく、山田さんが食べていたパスタを飲み込むと


「そういえば、待ってる間に後ろのナースが話してるの聞いちゃったんだけどさ、何科の医師か知らないけど医局で血まみれで倒れてて、そのまま亡くなっちゃったらしいよ」


「えっ…」


 その言葉に、口に運ぼうとしたハンバーグが私の箸からボトッと音を立てて落ち、隣の三橋さんのうどんが箸から滑り落ちる。


「それ本当にうちの大学の話?」


 三橋さんが疑わし気に問いつつ、落ちたうどんを箸でつかむ。山田さんの話は間違いなく、今朝見た血まみれの男性の事だろう。


 あの人、死んじゃったんだ…。別段知り合いというわけでもないし、顔も知らない。けれど、見てしまったからには全くの無関係とも言い切れない。なんとなく胸が苦しくなり、ショックを禁じ得ない。


「間違いないよ、2号館の医局でって言ってたんだからさ、うちの大学の事でしょう」


「それは確かに…でも血まみれって、何があったのかな?警察とか来てなかったし、転倒して頭ぶつけたとか?」


 二人の話に、いやぁ…私見ちゃったんだよね。とは、言える気分ではない。勝手にショックを受けて、黙々と口に白米を押し込む。


「分からないけど、殺人だったりして…」


「ちょっと怖いこと言わないでよ!」


語気を強める三橋さんの言葉に私も頷き同意する。


「それは流流石に飛躍しすぎじゃない?」


と言えば、山田さんが「ごめん、不謹慎だった」と呟き再びパスタを食べ始めた。



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