20.オカルト研会議
「最近、誰か出入りしてる形跡があると思ってたけど、やはりお前らか……。」
目を細めつつ、それを横目に棚に向かうと持っていた標本箱を棚に置く。
「俺は無実です。出入りしてたのはこいつです。」
そう言って、座りなおしたお梅君がお松君を指さす。刺された指をお松君が掴んで降ろしながら、ソファーへと戻る。それを見て私もいそいそとソファーに腰掛けなおし、どら焼きをかじる。
「それはそうと先生、先ほど戸を思いっきり叩いたのって先生ですか?」
「あからさまに話を逸らす奴だな……。
まぁいいや、私は戸なんか叩いてないけど?いきなり開けたじゃない。」
何言ってんの?と言う顔をしている桜井先生。
「えっ……じゃあさっきのは何だったの?」
私が怯えたように言えば、桜井先生が「なんかあったの?」と、こちらを向く。
「まぁ、先生も座ってください。
良かったら、このどら焼きも召し上がってくださいよ、うさぎやのですよ」
「おいっ!俺が持ってきたのに、何お前が勧めてるんだよ!
それにお前それで4個目だろ!食いすぎだ!」
怒るお梅君の手をかいくぐりどら焼きを3口で頬張るお松君に、お梅君が「意地汚いぞ!」と追撃を加えるもどこ吹く風のようだ。桜井先生は諦めたようにため息をつくと、私の隣によっこらしょと言いながら座ると
「うさぎやかー、良いねー、久しく食べてなかったからありがたくいただくよ」と、箱へと手を伸ばしていた。
そこでハタと思い出し、自分のリュックサックを漁ると、すぐに見つかった缶の箱。
「あのこれ、桜井先生にお世話になったので、学内でお会いできたらお渡ししようと思ってたんです。友人おすすめのお店のクッキーなんですけど、よかったら。先日は本当にありがとうございました。」
そう言って頭を下げて、献上品を捧げるように桜井先生へと差し出せば
「若いのによくできた子だねー。そんな大したことはしてないのに、わざわざ買って来てくれたの?
ありがとね。感謝の気持ち、ありがたく頂戴するよ」
そう言うと、クッキー缶を受け取ってくれた先生の顔を見れば、今までで一番優しそうな顔をしていた。
「私一人で食べるには多いから、ここで開けて皆で食べよう。どーせお松少年のオカルト話が始まるところだったんだろ?私も聞いてあげようじゃないか、良いかな?佐倉さん?」
クッキー缶を開けながら話す先生の言葉に私が頷けば、お松君がウキウキとしたような声で「話の分かる先生だ」とノートをぺらぺらとめくっている。
「まずは先ほどの現象から……。先生が来るほんの1、2分前ですよ。僕たちがこの部屋で騒いでいたらそこの引き戸が爆風でも受けたのかと思うくらい、外側から戸全体がバンッという音を立てたんですよ。ガラスも振動してましたし間違いなく衝撃を受けていました。なにしろ、ここにいた2人も聞いていたわけですし、先生がこちらに向かってる際に何か見たり、音を聞いたりしませんでしたか?それと、先生が頻繁に出入りしているなら、何か心霊現象的な事象はありましたか?また、職員側での地下1階の噂とか、20年に一度の生贄の話しとか「多い。質問が多い。」」桜井先生が鬱陶しそうに前のめりになっているお松君の顔を押し戻す。
「はぁ~、まずは戸がすごい音を立てた件だけど、私は階段じゃなくてエレベーターで降りてきたんだ。階段よりこの部屋に近いし、向かってる最中もエレベーターに乗ってる時も、特に音も聞こえなかったし、何もみかけなかったけど……この階に出入りしてるの私だけじゃないからね。」
その話を聞いてお梅君が「確かに……」と呟く。
「煩いからっていうので戸を叩かれたってのはあり得るかもな。けど他の部屋の扉が閉まった音とかしなかったしなー」
「やはり心霊現象だっ!」
お松君がノートに書き込んでいく。
「考察と結論がザルだなオカルト研……」と、桜井先生が呟きどら焼きを頬張っている。
「それで、先生が出入りしてる際に何か起きたりしないんですか?」
「現象ね~?あぁ、そこのスーツケースが倒れてることなら度々あるよ」
「「えっ!?」」「おぉ!!」
私とお梅君の驚愕の声と共に、視線がスーツケースへと注がれる。お松君だけが嬉しそうな声をあげている。
「スーツケースが倒れないように段ボールで固定したんだ。
そしたら今度は段ボールごと倒れててね。速やかに諦めたよ。」
あははーと、笑っている桜井先生だが幽霊とか怖い私からすれば、よくそんな所に出入りできますね!?と、問いたくなる。普通の部屋でスーツケースが倒れるなら怖くもなんともないが、ここはいわくつきの地下1階!なおかつ中身は……本物の骨……。なんで笑ってられるんですか!!?とキレたい気分ですらある。




