第八話:サーティーン・バーチューズ:外部デバイス始動
――疑うことは、知恵の入り口である――
Per XVII Portas, XIII Virtutes Caelat 覚書 第八十四章 三編 参照
《マスター、大変言いにくいのですが……》
じゃぁ、いわなくてもいいからさ、俺がシエルを作り出した話でも聞いてくれないか?
《この地下基地、及び上層部のダミー建築した平屋には、構造的欠陥があります》
……言いにくいと言いながら、ずいぶんとはっきり言ったな。
というかその間にある俺の話を聞かなかったことにしたな……。
「俺が何を言おうとしているかわかるんだろう? 周波数だっけ?
合わせていて俺が考えていることわかるんだよな?」
《はい、では構造的欠陥の復旧に着手しようと思います、そのために外部デバイスの作成を行わせてください》
あれ~無視してない?
聞こえてる時と聞こえてないときがあるとか?
《聞くべき内容と聞かなくてもよい内容を、精査するのはワタシの構造上の問題ですので、気になるのでしたらアップデートに協力してください》
「あぁ~認めたねぇ。都合の悪いことは聞こえないふり~って、お前はどこの馬の骨だよ?」
《現状のワタシはマスターから見た視点でしか外部情報を視覚的にとらえることが出来ません。
とりあえずこの疑似地球儀の外側、マスターがいる部屋にカメラとマイクを作ります。 [ YES or DIE ] 》
「おいおい、『イエス・オア・ダイ』って、シエルってハードボイルド系かよ?」
《ありがとうございます。 ではマスターの今いる部屋側にカメラとマイク、及びスピーカーを設置します》
ブォン。
唐突にこの広間の右斜め上から妙な音が聞こえて見上げた……。
そこには壁の天井の丁度角の部分に黒くて丸い物体が既に出来上がっていた。
シエルさん、仕事はぇ~な~。
「じゃね~よ! なんだよこれは?!」
《おお~なかなか凛々しいお姿。 さらには麗しの声。
やはり人間媒体だと正確な情報を捉えるのには限界がありそうですね。
何かと問われると、カメラ、マイク、スピーカーを一体化した外部デバイスになります》
いや、マイクとスピーカーそばに置いたらハウリングするだろ!
《マスター、マイクを設置したので声を出して会話できますよ、
ちなみにマイクとスピーカーでのハウリングについては、根本的な構造の欠陥が起因しているのでそこは解消しております》
「へぇ~、ただマイクとスピーカーが近いとか、壁や天井に近い位置にあるとか、
……そういうもんでもないんだ?」
って、ちが~~~う!
――わかったよ……。
「現状色々欠陥があって、君が上手く動作できないので修復させてくれってことね……」
さすがAIというべきなのか、俺の設計ミスなのか空気を読む能力はないらしい……。
(なんか、若返ったせいなのか温もりが恋しい……)
そもそも、引きこもり前の身体に戻っているんだ。
引きこもっていたら人と出会うことがないではないか!
――改めてノートをめくってみる……。
なんか読めない文字が追加で書き込まれているが……?
うん、見なかったことにしよう……。 気にしても仕方がない。
シエルがそのつもりなら俺にだって考えがある。
若返ったことを理由にするわけではないが、俺は温もりを求めて女性を生成してみることにした。
え? もっと早くやると思ってたって? 君たちも好きだね……。
今俺が23歳だから、当時の彼女を生み出してみよう……。
でも今の彼女には家族がいるということを以前に風のうわさで聞いていた……。
彼女本人の魂?を入れるわけにもいかないし、子供ができてしまっても困るか?
出生届けを市役所に出しに行ったりと何かと面倒だし、不自然さはなるべく避けたい……。
『別れたもと彼女の利佳を23歳の状態で、妊娠はできないが、
限りなく当時の姿で〝一人〟出現する』
クーラーの時とは違う、〝一人〟と指定することで大量に発生することを予め防ごうということだ。
シュー……。
部屋の中央から白い煙が発生し始めた……。
今までの生成の出現とは何かが違う。物理的なものと生物的な違いだろうか?
煙の中に当時の彼女が現れる……。 服は着ていないが大事なところは煙で隠れて見えない。
なんだよ! 当時はお互い生まれたままの姿で踊り明かしたではないか?
でもこの状態は良くない。
『彼女に似合う俺好みの服を生成』
ふふふ。この辺は管理者権限特権だ。
完全に煙が消えたころには服を着てしまっていたが、それはそれで魅力的である……。
その方が男心をくすぐるというものである。
「利佳、わかるか? ……俺だよ? 貴弘だよ?」
――彼女は俺に目を合わせてゆっくりと艶めく唇を開き答えた。
「……マスター、ワタシはコードネーム 404:チキンラーメン デス。
マスターのことは覚えておりマス」
「へ?」
「何言ってんだ? 冗談はやめてくれ、利佳だろ……?」
俺は彼女の両肩を掴み彼女を揺さぶる。
「やめて下さい、マスター。 セクハラで訴えますよ?」
「どういうことだよ! シエル!」
《……マスターはそそっかしいですね。 同じ時代に同じ存在が存在したらタイムパラドックスが発生するのはご存じですね? 正確には違いますが、マスターにわかりやすく言うとしたら、その生物の身体には別の魂が入っております》
「いや存じ上げませんが……? って違う魂……?」
《都合が良いのでその生命体の脳にワタシのデバイスを混入させ外部の移動デバイスとして使用します》
「ちょ、何言ってんだよ? この持て余している俺の高ぶる感情をどうしてくれるんだ!」
《何を言っているのかがわかりません……。 データ不足のようです。
彼女の脳内から記憶を解析しますか?》
「……記憶?、ワタシは、コードネーム404…… 自ら自分の記憶をたどり思い出してみます」
………
……
…
「貴弘、あたしラーメン食べに行きたいな」
「――どうしてこうなったんだぁ~~っ!」
《マスターには完全な生成能力が〝若干〟かけているようですね……。 先にこの建造物の生成をお任せいただけていたらこのような事態はある程度は避けられたかと……》
はい、はい、そうですね。
仕方がない、彼女には悪いが今回のことはなかったことにしよう。
ノートを開き彼女の記入部分を消そうとしたところ、追加で読めない文字が書かれている……。
「シエル君? ……今度は何を書き込んだんだ?」
《先ほど確認した通り、その生命体にはパルス通信でワタシとの交信可能な状態に変更済みです》
「え~と、……改造人間? アンドロイド?!」
《いえ、違います。〝限りなく当時の姿〟の利佳さんです。
彼女はコードネーム404と自分のことを呼んでいますが、
中身は限りなく人間に近い存在です》
――またか、またこの流れなのね……。
「貴弘、この辺にワタシの部屋を生成してほしいんだけど?」
ちょっと沢山の出来事が一気に起きて散らかってきている、少し整理しよう……。
ブーン……
プシュ~
壁に青白い光が現れたと思ったら扉が出現した……。
「ありがとう。 あと黒マジックちょうだい?」
――利佳改め404が何か言ってるんだけど……。
フォン……。
404の手元に黒いマジックが出現した……。
何か置いて行かれてないか? 俺だけ……。
唐突に出来上がった白い扉に404は黒いマジックで キュキュッと「404 not found」と記載した……。
「タカ、じゃぁラーメン食べに行こ。
拠点の欠陥部分に関してはシエルに任せてね?」
《かしこまりました。 では、なくしては困るのでノートはそこに置いておいて、
久しぶりのデートを楽しんできてください》
俺の意志が……、俺の意志がぁ……。




