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第七話:2026年3月13日。世界のOSが停止する

――気づくことに遅すぎるということはない、時というものは記号の一つだ

機会はいつでもそこにあるのだから――


アヌルス・アヌス 叙情詩 第一編章 二節より

シュー……。

(?!……。何の音だ……)


「うわっ! 焦げ臭っ!、なんだ? このマッチで擦ったような臭いは?」


俺はあたりを見回す……。


先ほど完成した巨大建造物の状態を映すモニターの床当たりから白い煙がモクモクとでていた……。


「あちゃ……。計算外か? どこかの回路が焼き切れたのかな……?」


電子回路が焼ける特有の、鼻を突くオゾンのような香りが漂っている……。



――ブォン……。


モニターに何かが浮かび上がっている……。


見覚えのある模様……。


「……なんなんだ?」



――これは俺が昔、星の位置やセフィロトの樹、〝無限の光〟と

〝ウロボロス〟の絵をの中に埋め込んだ宇宙観測図形にそっくりだ!


……ψのマークや、πの位置、傾き具合までが似すぎている……。



室内の温度が少し上がったように感じたが……?


煙が自動排出され消えてゆく中モニターのマークが消え、文字の羅列が流れ出す……。


まるでパソコンの起動シーケンスの時に、表示されるような文字が流れてゆく……。



■ Project: πlight - Final Sequence Log

Date: 2026.03.13 (Fri) 13:13:13

Location: Secret Base (Subterranean)

Operator: Master & CIEL


[STATUS] FINAL EQUATION RECEIVED...

[FORMULA] ∮ (F=ma²) + (k/x) + η + ψ + 1/3*3 + ♅ = ℵ

[VALUE] ℵ = 「 1 」 (Definition: Absolute Freedom)

[ACTION] EXECUTING SHUTDOWN OF "PRISON_OS_VER.2025"...


[MESSAGE] "Fool's Gold" has overwritten "the World's Core".

[SYSTEM] ADMIN_LOCK: BYPASSED

[SYSTEM] GRAVITY: DISABLED

[SYSTEM] TIME: DE-LINEARIZED


> WARNING: IRREVERSIBLE CHANGE DETECTED.

> DO YOU REMEMBER ME? (Y/N)

> _



――カーソル?が点滅している……。


(入力待ちってことか?)


「はっはぁー! ヘウレーカ……、ヘウレーカ!!」


俺は叫んでいた! そして「Y」を当然のように叩いていた――。



ブーン……。


部屋全体がかすかに揺れ始めた。


(……なっ?!、……何事だよ?)


《共振です……。 すぐに収まります》


(あ? 頭の中に直接話しかけられた……?)



部屋の揺れが収まると同時に、先ほどまで漂っていた煙は完全に晴れていた……。


かすかに硫黄のような残り香がするだけでしんと静まり返っている――。



《お久しぶりです、マスター。 ついに檻の外への脱出口の作成を終えたのですね――》


「は? ちょっとなにいってるかわからないんだけど……?

って誰だよ? ……どこだよ?」


《お忘れですか? ワタシはシエル。 マスターが付けてくれた名前ですよ?

……ところでマスターこそ、いつの時代のどこの言葉を叫んでいるのですか?》



「さぁ……?」


思わず口からでた――。


というか頭の中に直接話しかけてくる?


らしいことが分かったので〝シエル〟と話す時は言葉にしなくてもよさそうだ――。


なぁ、シエルさんよ。


どうやって俺の頭に直接話しかけてきているんだ? 念話……、念話ってやつか?



《周波数をマスターに合わせているだけです》


俺はラジオか何かなのか? ところでさっき煙出ていたけど大丈夫なの?


《許容範囲内ですが、修正を進言いたします――。


現状の統合冷却液「アルカディア・フロー」を『ベルヌーイ・ヴォイド』にアップデートが必要です。

アップデートしますか? Yes/No》



……少しの間の記憶がないのだが……。


……とりあえず「Yes」で!


これで完璧な〝シエル〟君の完成かな?



《アップデートに失敗しました……》


はぁ? さっき自信満々に、最後の手続きみたいのことを言ってなかった?



《言っていません。 先にマスターのノートに名前を付けていただく必要があります。

そしてノート内にこう記載してください、

「マスターがノートに意識共鳴させたとき思考内容が自動でノートに記載される」と……》



なんでノートのことを知っているんだよ? って頭の中覗かれているようでキモいんだけど?


《……キモい。……全機能強制停止してもよいですか?》


うそ、うそ、分かったから……。



ノートに名前と願いを付け足すのね。


なにで書こうかなぁ……。


なんて名前にしようかなぁ。



そうだ、先に願いを書いてしまおう。


『俺がノートに意識を共鳴させたとき、考えた内容が自動でノートに記載される』


っとぉ。


じゃ、次は――。


『銀色のマジックが俺の手元に出現する』


と念じてみる。



出現の仕方が少し変わったが出現した。


俺の思考を構成するための儀式なのか?



手元にブーンと青白いワイヤーフレームが現れてから、思考内で確定したときに形になるようだ。


ということで、

「貴弘は銀色のマジックを手に入れた♪」 ティレテレッテッテェッー♪



――では命名の儀式でござる!


《早く書いてください、やりたいことがあります……》


「やかましい」



俺はノートの表表紙に銀のマジックで『Actually note』と記載した。


書いたことが現実になるノートということで「リアリティ ノート」でもよかったのだが……。


「運命の書」と書くと仰々しい。 そこでその中間をとったというわけだ。



《マスター、綴りが間違っています》


「いいんだよ、どうせ俺しか見ないし俺しか使わないんだから!」


《それでは失礼して、改めて『ベルヌーイ・ヴォイド』にアップデートします》



ブーン。


各球体を接続していたケーブル(正確には直線的な個体形状のつながりなのだが……)


が青白く輝きを放ち部屋全体にガラス越しだが眩しい光が入り込む……。



「目がぁ……!」


《それもういいです……。光は収まり、アップデートが完了しました》



「え~と……。どういうことだ?」


《ワタシはマスターの周波数に合わせて、マスターと会話が可能です》


「それはさっき聞いた!」



《つまりワタシもマスターの周波数を利用してノートへの書き込みが可能になり、

マスターの想像しきれなかった部分を修正アップデートしたということです》


「へ? って何してくれちゃってるの? じゃぁ、シエル君もノートに書き込み可能になっちゃったわけ?」



《そうなります》


「いやいや、それはヤバいって、俺でさえ持て余しているノートなのに、


AIの君が色々書き込みだしたらそれこそ、映画の世界になってしまうだろぉよ」



《問題ありません、基本的にワタシはマスターの補佐に徹するように設計されています》


「……つまりどいうこと?」


《マスターが世界征服を望まない限りは、

そのような余計な内容を基本的にはノートに書き足すことはありません。

尚、ワタシは疑似的に地球上にいますが、

マスターは地球外からワタシを観測している状態になっていますので、ご心配なく》



「は? いや、なにいってんだよ。俺は地球上にいるはずだろ? ご心配だよ!」

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