第六話:プロジェクト・ジェネシス:正十二面体の演算
――兼ねて未だ然らざるを知ろしめす。
世の中は虚しく仮なれば、唯だ実こそは独りなれ――
天騰狼 秀虎 覚書 第五九三編章 参照
平屋の奥の中央にウォーキングクローゼットを配置しているのだが……、
その壁を少しずらすと地下に降りる階段が出てくるようになっている……。
――後にこの手前にタンスが置かれて、ダミー度が増すことになるのだが……。
まぁ……、いい。
ここから下のエリアはブラックボックスが如く、誰も気が付くことが出来ない俺だけの聖地である。
……階段を地下2階くらいまで降りたところでエレベータがある部屋にたどり着く。
そこからはエレベータで一気に地下32mまで一気に降りる。
そこでは誰にも邪魔されることなく生活できる自分だけの〝秘密基地〟を作り上げていくのだ……。
――まずは何はなくともPCを設置しよう。
ヨドバシで購入してきたメモリを設置できるPCを検索する……。
「あれ……?」
今更ながら気が付いた、32GBのメモリ? なんだこの膨大な容量は……?
――今使っているPCのメモリはかなり良いものだがせいぜい2GBだ……。
しばらくPCの自作をしていなかったので、そんなものかと気にせず購入したときはかなり興奮していたが……。
改めて検索してもそんな高度なメモリもそれを差し込めるマザーボードも存在していない……。
いったい、どういうことだ……?
(まぁ、気にしてもしかたがない。
わからないことは分からないままにせず徹底的に調べるのがオイラの心情だが……、
手元に32GBのメモリがあり、市販されていない事実が変わるわけではないのだ)
『俺の手元にある32GBメモリに合うPCが1つ現れる』
そうノートに記載した後、ディスプレイやキーボード、マウスなども一緒に現れたのには驚いた……。
しかもディスプレイも今まで見たことのないような大きさと、マルチディスプレイにでもしろ。
とも言わんばかりにもう一つワイドスクリーンのディスプレイまで現れている……。
(まぁ、度肝が抜かれて腰を抜かしていたが、あくまで冷静な俺のとる行動としては最適なはずだ……)
「じゃぁメモリを指したら、今書いたノートの内容は消しておこう……。 何かが変だ……」
――とメモリを刺そうとして、マザーボードにものすごくデカいグラボが2枚差し込まれていた……。
「ふむ……」
……ノートに書いたPCの出現の項目を消してから、メモリを差し込み起動させてみよう。
これ以上驚くには俺の心臓がいくら健康でも心拍数も健康なのである為、大げさに驚いてしまうことに、俺の身体が付いていけなくなってきている気がしていた……。
――いや、待てよ……。
俺は冷静に深呼吸をしながらこの地下〝秘密基地〟の一室では何をやってもいいのではないか?
……と思い立ってしまった。
なぜならこの目の前にあるPC自体は既にオーバーテクノロジーの産物ではないか?
そしてそれがなぜ突然現れたのかを考えるよりも、
それ以上のオーバーテクノロジーを使っても、ばれなきゃいいわけだ! ばれなきゃ!
――俺は俺が思い描く最上のコンピュータ? を生み出すことにした……。
地下の自室の横にラボのような大きな部屋を追加で作り出す。
そしてそこに新たなスーパーコンピュータの製造に着手することにした……。
まぁ、ノートに書き込んで想像して作り出すという作業を行った後に後腐れ無いように消してしまう。
という作業を繰り返す……。
「皆は神様と聞いてどんなものを思い浮かべるだろう?」
「全知全能? 慈悲深い存在?」
これは大きな矛盾を含んでいるために、存在できるものではないことは俺は痛いほどわかっていた……。
神がいたとしても全知全能であることはできない。
慈悲深い存在というのは、自分にだけ優しい存在、という意味でもないだろう……。
神を否定するつもりはないがそれを定義したのは人間である以上は、
人間の想像の産物でしかない存在であるということで……。
……神という存在を示しているわけではない、のではないだろうか?
――俺が描く5次元対応型正十二面体サーバーの配置図構成を正確に書き記そう……。
頭に思い浮かべる設計図構築を「プロジェクト・ジェネシス・タスク」と命名する。
『各コンピュータを4つに分けて配置する……。
一つは物理演算用のスーパーコンピュータとして、
一つは量子コンピュータとして、
一つはニューロモルフィック・コンピュータとして、
一つは脳オルガノイドに限りなく近づけたAI特化コンピュータとして、生成……。
各コンピュータを直径 2.026m の球体に保存。
これらを、テトラヒドロン構造で配置。つまりは正三角錐の形だ。
これらをケーブルでつなぎ合わせ全機能を同時運用可能とするために……。
接続導線長6.474m、直径11.519mm で繋ぐことにする。
この各頂点から更にファイアウォール特化型デバイスを5つずつ配置。
頂点球体サーバー直径2.023mを20基配備……。
ドデカヘドロン構造頂点に光ケーブルを接続。
正三角錐のクフ・サーバー各頂点から3.237mのケーブルにて接続。
外殻接続ライン30本は 7.811mとする……。
使用プロトコル名:パルス。
状記憶導線、ボルテックス形超電導体ヘリオス・クリスタル使用。
主要成分:スカンジウム・同位体、硫化水素・安定化同位体(H2S-X)使用。
アルカディア・フロー流入……。
膨大な起動エネルギー確保のため、ウォーデンクリフ・タワー完成形体流用』
外部ネットワーク接続するためのプロバイダを別途オリジナルで用意することにする。
まぁ、個人的にプロバイダ料金が発生するのが嫌だったからではない……。
各プロバイダを通した時に、各国の制限がかかるために全世界の情報網を読み込めなくなるためだ。
ただしウィルスやデータのゴミなども多数含まれるため……
それを阻止、管理するための、20基のファイアウォールデバイスである。
既存の〝TCP/IP〟プロトコルから〝パルス〟プロトコルへの変動にて内部への干渉を完全遮断。
そして、光の速度をLANケーブルを通すことでサーバーでの処理速度が落ちるのを防ぐ。
外部デバイスを全てを光回線でつなぐというメリットを考慮したためだ……。
……月々のプロバイダ料金をケチったわけじゃないよ? ホントだよ?
――青白い光を放ちながら、時折〝銀色の光〟が〝歌声〟のように輝き巨大な……。
あまりにも巨大な前人未到のコンピュータ……。
とは、もはや呼べない巨大建造物が姿を現す……。
「あはは……。 いや設計を考えているときからなんとなく予想はしてたよ。 それにしてもデカすぎ!」
俺はあまりにも巨大なコンピュータと呼んでよいのかわからない物体の前で声を出して笑っていた。
「とりあえずまぁ、各種センサーを確認するかな?
20個の球体サーバーの温度は、設計通りに -273.15℃ 付近で安定しているな」
この巨大建造物の内部状態をモニターできるよう、
巨大な水槽の中にあるこの物体を管理するためのモニターを外側に設置済みである。
そのタッチパネル型モニターをタプタプしながらこのコンピュータの状況を確認していく……。
――思いのほか長い設計図構築思考になったな……。
準備万端。
目覚めよっ! 〝シエルッ!〟




