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第五話:地下32メートルの聖域(サンクチュアリ)

――沈黙は雄弁であり、地下の暗闇は全ての色彩を内包する――


アヌルス・アヌス 叙情詩 第二編章 三節より

6月が始まっても気温の上昇はもはや異常気象のレベルを超えて引きこもり生活を加速させていた……。


家には既に10億円の貯金通帳とカードと注意事項が記載された書類などが届いていたが、宝くじに当たってからは既にお金自体に関心がなくなっており、部屋のなかに無造作に放り投げていた……。


(暑くて外に出たくない……)


「そうだ、地下に住もう!」



どこか適当に安い土地を購入して地下に秘密基地でも作れば、今後は暑さに悩まされたり、大雪に悩まされたりしなくなるんじゃないか?


などと思い立ったが吉日と言わんばかりに、俺は直ぐにネットで良さげな土地探し始めた……。



――札幌周辺は海抜0mに近かったはず? だから洪水でも起きたら地下まで水浸しになりかねないから、候補からはずそう……。


ハザードマップで危険地域は避けておこう――。


というより便利だが人が多すぎるのが煩わしい……。


こっそり誰にも知られることのないような場所がベストだな。


それから地盤がしっかりしているのも条件の一つとして考えよう。


「なるほど、この辺りは北海道では数少ない火成岩地盤があるのか……。いいねぇ」


なるほどこの辺りは海抜30mから50mも土地が高いのか……。



洪水などの心配は当面考えなくてすむ立地だな。


ひとけもないし、周りにはあっても農家や森ばかり……。


この辺でもさらに木々に囲まれた場所を選定して……。


土地を購入するために手続きをするため、目的の町の不動産屋を検索してみる。


町への移住の為市役所への手続きも必要だとすると、両方連絡先を調べておこう……。



――まぁお役所仕事をされても困るので、早々にここの土地を購入する手続きに関しては、


『俺が購入する土地は異例の速さで手続きが済みすぐに入手できる』


とノートに書き込んでおいた。


手続きや書類が完璧な日本ではこういうところが面倒だよね……


「ここは俺の土地~」ってできないところはあらかじめ法に乗っ取って慎重にしておき、後々つじつま合わせをしなくて済むようにしておこうという……、後で考えれば意味のない行動をすることに熱中していた。


――後は土地を他の人から見られないような場所であれば、ノートで一気に家を建てて、しばらくしてから家を建てたことを申請して……。


(面倒だが手続きだけはしておかないと後々しわ寄せがきて大変だからな……)



――土地を購入して、こっそりとノートを使い家を建てる。


『俺は想像した通りの家を、自分の土地に建てることができる』


家を建てるにはかなり時間がかかるためにとっとと済ませるためにノートを利用した。


……誰もいないことを確認したうえで、その土地のそばに車を止める。


自分の土地の前で集中して目を閉じて、完成した家を想像する……。



ブ――ン。と音のしそうな青白いグリッドのようなものが現れ一瞬光った後はそこには想像通りの家が建っていた……。


――土地は100平米、まぁ固定資産税を安くするためにも無難な大きさ……?


そこに見た目は平屋で横にコンクリで車庫を併設したような家の形にしてみた。


さて、土地の上に家を建てたので市役所へ報告だな平屋にしたのは市の中間検査を免れるための裏技的なものだ……。



――完了検査は無事合格。後は年末に来るだろう家屋調査を切り抜けるための図面類を作っておこう。


ここまでの作業を終わらせるまでに、まさか6月中旬近くまでかかるとは……。


まぁ、ある程度ノートの力で爆速終了させたのだが、記録を改ざんとかは面倒なので家屋調査はその時に考えよう……。


(我ながら何を言っているのかちょっと分からないデス)



『俺は家を建てる知識、土地を購入する知識を知っておりそれらの手続きをスムーズ行う能力がある』


予めノートに書いておいたための出来事で、実際の俺には何のことだかさっぱりわからないはずだ……。



――我が城完成!


というかダミーのために建てた家は置いておいてめちゃくちゃお金が余った……。


10億円の通帳の中の2千万円ほどで手続きや土地代などはほぼ収まっってしまった。


実際家を建てる資金はノートで立てたためにお金がかかっていないからね。


固定資産税のことを考えて2億ほど手元に残すのもありかな?



まぁ、後で思いつくのだが、俺の家の存在に気付く人がいなくなれば良い。


という設定にしておけば、そういう資金や土地なんか全てスルー出来た……。


……可能性があるが、やったことを悔やむよりも今やったことは堂々と暮らせる家が出来た。


ので近所づきあいをしても怪しまれない、と良い方向で考えよう……。



「まぁ……。完成!! ダミー完成!!」


とりあえずは、早速家に入って拠点づくりの始まりだ……。



……ふと、耳鳴りのような音がした。


〝1975414 Hz〟……いや、もっと低い、物理的な空間が歪むような音だ。


何もないはずの空間の解像度が急激に上がり、ワイヤーフレームのような光が収束していく。


次の瞬間、そこには本来あるはずのない『冷たい塊』が鎮座していた。



ブーン。


部屋の片隅に突然クーラーが現れる……。


「なっ!?」


(なんか俺の意志とは別に何かが起きた!)


そのことに驚きながらも冷静沈着な俺は、ノートを見直してみる。


『俺の部屋に、クーラーがつく』



……ノートを手に入れた時、部屋が暑くて思わず書いてしまった内容である……。


このままだと、ノートが俺の部屋と認識した瞬間にどの部屋にもクーラーが付いてしまうのではないか?


しかも見直してみて気が付いたことがある、数の制限を書いていない!



俺が一度この部屋から、もとの部屋に荷物を取りに戻ったり、その荷物をこの家に運び入れるたびに……。


……部屋にクーラーが増えていくのでは?



(部屋中がクーラーだらけになって住みにくいことこの上ない!)


往復するたびに、空っぽだったはずの新居の壁に「ボフッ」と新しいクーラーが増えていく。



「……待てよ?」


俺はこれから、実家の私物を運ぶのに最低でもあと七往復はする予定だ……。


もしこのまま気づかずに運び続けていたら……。


実家の自室と、この新居の部屋。


両方の壁が、あわせて十四台ものクーラーで埋め尽くされるところだった。



冷房効率とかそういうレベルじゃない。


部屋が狭くなるし、何より室外機の音が爆音すぎて、


〝サンクチュアリ〟どころか工事現場だぞ、これ。



想像してゾッとした俺は、ここに書いた文章を消せるように……。


ルール追加を消すことのできる〝消しゴム〟を用意することで解消しよう。


(さすが冷静沈着な俺だ、このような些事で心を乱すことはない)



『ノートに書かれた内容は俺であれば普通の消しゴムで文章を消すことが出来る』



ルールの一文を追加して、クーラーの項目は消しておくことにした……。


しかし出来上がってしまったクーラーは新しい家の居間からは消えなかった……。



まぁ、つけるつもりだったので良しとしよう。 ……ホントだよ?



――まぁ、今を嘆いても仕方がない、というか手元に10億あるのに何をやっているんだ。


という話だが正直ノートに色々書き込むことなんでも出現させられるならお金いらなくね?


と思いだしてきている……。



――これからはノートに記載しながら、地下の隠れ家を一気に作っていこう。


一通りダミーの家に荷物を移動するついでに自家用車を購入した。


お金が余っているんだから仕方がない……。


というわけでは決してないことを予め言い訳しておく。



今までまるで自分は一人暮らしをしているように書きなぐっていたわけだが……。


仕事をしていない引きこもりが、生きながらえているのは両親に世話になっていたからなのだ。


(自慢にもならない……)



――そこで宝くじが当たったことを両親に話し、自分の車を購入してから……。


10億円の通帳を見せて、そこから2千万円ほど別の通帳に移して――。


のこりの9億円以上のお金は実家の両親に渡してきた……。



これで20年の引きこもりを世話してくれた親孝行になるとは思ってはいないが、


少しでもよりよい生活を送って欲しいと思ったからだ。



あとたまに外食する かも? とお金を別な通帳に移動しておき、


そちらを手元に置いておくことにした……。



――購入した車や家の場所などは、詳しく書かないことにしておく……。


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