45.秋空への片道切符
前回のあらすじ。
ハロウィンが明け、那月と真冬が公表し、
幸運にも藍がくじで一等を引いた。
ものすごいスピードで、列車が走って行く。
あんなに近かった駅が、みるみるうちに遠くなってゆく。
うつろう景色に、思わずわあっと声が漏れた。
「わぁぁ〜、すごいよこう! 景色綺麗!」
「明音、あまり騒ぐな。子供か、お前は」
「だって嬉しくて。びっくりしたよ、まさか旅行に、みんなでいけるなんて」
はしゃぐ僕に、それなとばかりにこうが頷く。
あれから一週間、僕らは1泊2日の温泉旅行に行くことになった。
それもこれも、藍さんが福引で一等賞を当てたからである。
当てたこともすごいけど、それがペア旅行券で、まさかの6人分。
しかも足りない分は橙子ちゃんが出してくれることになって……
結果、みんなで行けることになり、店は臨時休業にすることになったのだ。
「つーか本当に良かったのか? わざわざ店まで休みにして。クレーム来ても知らねーぞ」
「いいんじゃない? もともとそんな開けてないし」
「お前なぁ……他人事だと思って適当言いやがって」
「万が一来ても、君が請け負うだけだしね。ま、頑張って」
そういいながらも、真冬ちゃんは読んでいる本から目を逸らさない。
通路を挟んで隣にいる彼女は、相変わらずだ。電車の中でも、黙々と本を読んでいる。
その横で、向かい合って楽しそうにトランプをしてる3人がみえた。
「ふゆにゃんのいう通りですっ。休業なんて今に始まったことじゃないでしょ? 私なんて、プライベートジェットばかりで、新幹線で行くこと自体初めてなんですよ〜?」
「お前なぁ……しれっとボンボン発言すんなよ。旅行なんて死ぬほど行ってんだろ」
「そうですけど、みんなと行くことに意味があるんですぅ〜。あ、そろった! はい、一抜けたぁ❤︎」
「あっ、奇遇だね〜橙子ちゃん。うちもあがり〜♪」
「がーーん、まけたー。なつき、とーこ、強すぎ。ずるしてないよね?」
「純君がわかりやすすぎるんだよぉ〜ババ持ったらすぐ顔に出てるし」
「素直すぎるのも罪ですねぇ〜約束通り、ジュース奢って❤︎」
「……むむむ……ババ抜き苦手」
みんな、自由だ。
藍さんだけは席が離れていて、何をしてるかわからないけど。
なんだか、いいな。こういうの。
学校の友達とは修学旅行で行ったことあるけれど、職場の仲間たちと、しかも彼らといけるなんて。
神様に感謝しないとなぁ。
「そういえば、チェックインまで時間あるよね。どこか行くの?」
「ん〜そうだねぇ……そういえば、橙子ちゃんが行きたいところがあるって言ってなかったっけ」
「そうなんですよぉ〜駅の近くに、写真映えスポットがあるって、ネットにあがっていてぇ。ちょぉど紅葉が見頃みたいなんです。みんなでどうですか?」
橙子ちゃんが、楽しそうに写真を見せてくれる。
なんだか、楽しみだ。はやる気持ちに、思わず笑みをこぼした。
「うわぁ………すごい………!」
辺り一面に広がる景色に、思わず声を上げる。
電車に揺れること30分、僕たちは旅館がある駅に着いていた。
そこから徒歩圏内で行けるところにあるのは、電車内で橙子ちゃんが言っていた場所だ。
左右どこをみても、赤く色ついた紅葉ばかり。
風で揺れて落ちてゆく光景は、とても綺麗でー
「写真で見た時も凄かったけど、実際見るとやっぱ違うなぁ〜。真冬、写メ撮ろ!」
「景色、撮るんだよね? それなら一人で撮った方が……」
「こーゆーのは二人で撮った方がいいの! ほら、寄って寄って!」
那月ちゃんが、親しげに真冬ちゃんの腕を組む。
最初は遠慮してきたものの、その腕によりかかるように、真冬ちゃんはそばへよる。
みんなに公表したから、かな? どこか二人は吹っ切れたようにみえる。
二人の幸せそうな顔を見てると、僕まで嬉しくなってくるなあ。
「あーちゃんっ、手出してくぅださいっ♪」
そんな中、ふいに橙子ちゃんが僕に近づいてくる。
言われるがまま、手を広げるとそこにはどんぐりや紅葉の葉など、秋を感じられるものがたくさんあってー
「ふふっ、可愛いでしょ? お裾分けです❤︎」
「えっ、あ、ありがとう……でもなんで急に?」
「べっつにぃ。確かあなた、ふゆにゃんが好きだったでしょ? 二人が付き合った事は、振られたってことじゃないですか? まあ……私なりの労いよ」
「あー、とーこ照れてるー」
「純ちゃんは黙ってて!!」
「じゃあボクもあげる。いっぱい持ってくるから、ちょっと待ってて〜」
そう言いながら、二人が紅葉並木に消えていく。
そういえば、橙子ちゃんには僕の気持ちがバレてたっけ。
彼女なりに励ましてくれたのだろうか。
今では吹っ切れているとはいえ、この優しさがすごくあったかいなぁ……
「あいつら、変わったよな。いい意味で」
ふと、隣から声がする。
気がつくと隣に、彼がいた。
その横顔は、どこかいつもと違う。
何かを羨ましむような、そんなふうに見えてー
「こう、どうし……」
「聖さーん、後ろに超絶でっかいカマキリがいますよー」
「え?? うわっ!!!」
瞬間、鎌を振り上げた虫が僕の視界に入る。
いきなり出てきたせいか、大幅にバランスを崩してしまう。
が、倒れることはない。
隣にいたこうが、間一髪受け止めてくれてー
「っぶねーな。大丈夫か、明音」
「ご、ごめん、ありがとう……びっくりして」
「気をつけろよ、ったく……つーか師匠、何撮ってるんすか」
カシャカシャと、たくさんのシャッター音がする。
僕たちの前にいたのは、紛れもなく藍さんだ。
自分のスマホを手に、真顔でとにかく撮りまくっていてー
「えー? 見ての通り、紅葉の撮影ですよー」
「紅葉じゃねぇだろ。それ、ぜっっっったい今俺らを撮ったな?」
「あー、ちょっとお間抜けな顔だなと思ったので、手が勝手に動いちゃいましたー」
「消せよ!!!」
「あっちもそうですが、お二人もなかなかに仲良しですよねー」
その言葉に思わず、首を傾げてしまう。
確かにこうとは大学時代からの仲だし、当然っちゃ当然かもだけど。
こうやって他の人に言われると、仲がいいと証明してくれているようで、それがなんだか嬉しくて、思わず笑みを浮かべてみせた。
「まあ、僕たちも長い付き合いだし、何より親友ですから! ね、こう」
「……………ああ、そうだな」
あれ? 気のせいかな、今答えまでに間があったような……
「おーい、明音君達〜! こっちおいでよ! せっかくだから、みんなで撮ろう?」
少し先の場所で、那月ちゃんが手を振る。
その声に同意する様に、僕達は彼女達の元へ足を運ばせたのだった。
(つづく!!)
おまけの小ネタ。
純「んーーー、これで撮れてるのかな? けーたい、よくわかんないなぁ( ˘•ω•˘ )」
明音「純君、上手く撮れた? って、橙子ちゃんばっかり! 紅葉は!?Σ(°д°ノ)ノ」
純「紅葉よりとーこのほうが可愛いと思ってε-(`・ω・´)」
黄河「風情がねぇなぁ( ・᷄-・᷅ )せっかくだから二人でまとまれよ。写真ってのはこうだってのをみせてやる( ˘꒳˘)」
真冬「それなら男同士で固まったら? 僕、撮ってあげるから」
橙子「じゃあ、次は私たち女組でお願いしまーす❤︎(*´˘`*)」
那月「撮った写真は、うちに送ってね〜アルバム作っちゃうからd(≧▽≦*)」
藍「那月さーん、ミーのも送っていいですかー」
那月「えっ、店長さんも撮ってくれたの? こういうの面倒くさがりそうなのに……ってちょっと待って、これうちと真冬が、手繋いでるやつじゃん!Σ(°д°ノ)ノ いつ撮ったの!?」
藍「たまたま偶然通りかかったので。他にもありますよーほら」
明音「うわああ! これ! 僕が大きな口開けてるじゃないですか! 恥ずかしい!!(/ω\*)
黄河「俺が涎垂らして寝てるとこまで撮ってやがる……しかも絶妙に上手いのが腹立つ……( ・᷄-・᷅ )」
藍「いやー、シャッターチャンスだらけで指が止まらなくて……あ」
真冬「那月、この人の写真今すぐ消して。捕まえとくから( ・᷄ὢ・᷅ )」
この後、ほぼ消されました。




