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44.ほどけた秘密のその先に

前回のあらすじ。

ハロウィン限定で夜営業したら

明音が転んで黄河が庇った。

紙袋に入ったものを何度も何度も確認して、ふうっと息を吐く。

少し肌寒い影響か、吐く息はもう白い。

なんだか、緊張する。こんなこと、初めてじゃないのに。


聞きなれたバイクの音が聞こえてくる。

ぱっと顔を上げると、一台のバイクが入ってきた。

ゆっくり駐輪場に止め、彼がヘルメットをあげるとすぐに目が合い、


「び……っくりした。なんだ明音、もうきてたのか」


と、驚いたように僕を見つめた。

彼ーこうはお店に、いつも一番初めにバイクでくる。

大体の時間はわかっていたのもあり、いつもより早く出て待ち伏せていたのだ。


「ご、ごめん、びっくりさせて……これ、渡したくて」


そう言って無理やりにでも、こうに渡す。

彼は首を傾げながらも、中身を見ようとする。

入れたのは、ハロウィンで着ていた仮装のクリーニング代の足しと、効きそうな火傷の薬。

全部僕を庇ってしまったせいで、できたものだ。

せめて少しでも、と思って用意したんだけど……

何が入ってるかわかったのか、はぁっとため息をついた。


「お前なぁ……気にすることねぇつったろ」


「だ、だって!! 僕のせいで汚しちゃったし、怪我させてたら大変だと思って……」


「言ったろ、たいしたことないって。そんなに熱くなかったしな。衣装の方も、洗ったら意外と落ちたし」


「ほ、本当に……?」


「大丈夫だって。心配かけて悪かったな」


そういうと、こうは「寒いから店に入ろうぜ」、と鍵を開けてくれる。

ああ、やっぱりこうは優しいな。

こうしていつも、大丈夫だと笑ってくれる。

その笑みだけで僕は、どうしようもなく安心できて……


「そーいや師匠から連絡あった。寄り道が終わり次第来るってよ。初日から自由だよな」


「そっか、今日戻ってくるんだっけ。よかったね、藍さんとまた一緒に働けて」


「ああ。それもこれも、お前のおかげだ」


満足そうに、にかっと笑う。

あ、この顔、久々に見る気がする。

こうは嬉しいと、いつも歯を見せて笑ってくれる。

それだけで、なんだかこっちまで嬉しくなってしまった。


「っし、今日も営業すっか! 行くぞ、明音」


意気込む彼は、いつにも増して頼もしい。

そんな彼に微笑みながら、僕は店内へ入った。




そこからは、いつも通りだった。


「とーこ、これ新作のパフェだって。あーんして、あーーーーん」


「あ、ん……まあ、わるくない、わね……」


「おいこら純!!! それ客に出す奴だって言ってるだろ!! 勝手に食うんじゃねぇ!!」


いつものように厨房から飛び出してきたこうが、純の頭を小突く。

猫を被るのをやめた橙子ちゃんも「一口くらいいいでしょ」なんて言いながら、結局はパフェを食べている。

いつもと変わらない、なんの変哲もない日常。

そんな賑やかな光景を、僕は那月ちゃんと並んで眺めていた。


「二人って、本当仲良しだよねぇ」


「わかるなぁ。今朝とかお店に来た時、ハグしてなかったもん。ほんと、大好きだよね純君って」


「だってボク、とーこと恋人だもん。それが普通」


「あはは、そっか」


その言葉に、那月ちゃんが目を伏せる。

羨ましそうな、そんな瞳。

それだけで僕は、何を意味するかわかってしまい……


「那月ちゃん……あの……」


「そういえば、言ってなかったよね。僕も付き合ってるんだよね。那月と」


僕が声をかけるより早く、隣にいた真冬ちゃんが静かに、でも通る声で言った。

那月ちゃんの震える手を、隠すこともせず、みんなの前でしっかりと握りしめる。

その動作や、言葉が、しっかりとした意思を感じてー


「えっ、いいの真冬!?」


「この際だしね。別にいいでしょ」


「で、でも……」


「大丈夫。不安なのは、僕も同じだから」


そういう彼女の目は震えている。

きっと彼女も同じ、真冬ちゃんも怖いんだ。

でも、大丈夫。

だってここーアルカンシエルは、とても暖かい、僕達の居場所なのだから。


「へー、そーなんだ。よかったですね、おめでとうございまーす」


拍子抜けするほどあっさりとした、橙子ちゃんの声がする。

彼女の反応に思わず、那月ちゃんがきょとんとした顔を浮かべた。


「えっ、それだけ?? もっとこう……ないの? 気持ち悪いとか、そう言う……」


「ちょっとぉ、私をなんだと思ってるんです? 人の好きな人を汚すほど、私は落ちぶれていませ〜ん! むしろいいことじゃない。くっついたんだから。どうせなら、早く言って欲しかったけど」


「……君も、同じなの?」


「ん、だっておそろいってことでしょ? ボクは嬉しいよ。好きなことに、悪いことはないから」


「むしろなんでこのタイミングって感じだわ。お前らが付き合ってたことくらい、とっくの昔に気づいてたぞ俺は」


そう言いながらこうが、そっと僕の肩を叩く。

大丈夫だと言わんばかりに、僕は真冬ちゃんに微笑みかける。

それがわかったのか、彼女は深く息を吐いた。


「つーか気づかねー方がおかしいわ。この前のハロウィンでお前、あからさまに赤面してただろ」


「あ、あれは誰だってするでしょ! 真冬かっこよかったし!」


「一緒に帰ったり、たまに手繋いでますもんねぇ? お熱いようで何よりです❤︎」


「そ、そんなとこまでバレてたの!? それならそう言ってよぉ〜」


「ボクも頑張らなきゃ。まふゆ、負けないから」


「別に勝負してないけど……好きにすれば」


5人が、それぞれ笑い合う。

……なんだか、いいな。この雰囲気。


今までは僕だけの秘密だった。

こうにバレてはいたけど、いうことはないと思っていた。

二人の事情は、わかっていたから。

それを公開してくれた、そしてみんなは受け入れてくれて……

僕も進めるといいな、前に。


「おやおや、随分とお祝いムードですねー」


いつの間にいたのか、ふとカウンターをみると藍さんがいた。

まるで話を聞いていたとばかりのタイミングである。

遅刻上等、すっかりお客さんも引いた頃だというのに、何食わぬ顔でみせびらかすように紙をひらひらさせてー


「そんなあなた達に朗報でーす。ミー、商店街のくじで一等を当てちゃいましたー。みんなで旅行にでも行きますか」


その言葉に、みんなの驚く声が重なる。

冬の訪れを感じるこの季節、何かまた始まりそうな予感です!


(つづく!!)

おまけの小ネタ。

藍は一等賞を手に入れた✧ \\ ٩( 'ω' )و // ✧


真冬「それにしても、初日に遅刻してまでくじ引くなんて……相変わらずだね、店長はε-(´-`*)」


藍「そんな皮肉言わないでくださいよー真冬さーん。ミーだって大変だったんですからー(・ε・` )」


明音「そういえば、すごい荷物ですね。買い物行ってたんですか?」


藍「いやー、これは全部貰い物で……朝起きたら営業時間過ぎてて、あー、詰んだなーと思って二度寝しよーとしたんですよー( '-' )」


真冬「そもそも二度寝に突っ込みたいんだけど( ・᷄-・᷅ )」


藍「家をでたら、道に迷ったおばあさんみつけてー、仕方ないから案内したんです。そのお礼に野菜もらって。いらないなーとか思ってたら、その野菜が欲しい人が果物くれて……で、券になったので、それ引いたら当たりました( ー̀֊ー́ )✌︎」


純「すごーい、パパしべ長者だー( *˙0˙*)」


那月「それをいうなら、わらしべ長者だよー純君(^^)」


黄河「通りすがりの人を助ける志!! さすが師匠っす!( *˙ω˙*)و グッ!」


橙子「でもそんなにあってどうするんですかぁ? 売れもしないのに(*´・д・)」


明音「あはは……藍さんらしいなぁ(^^;)」


持ってる男。

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