42.オレンジはエメラルド色に輝く
前回のあらすじ。
純の文化祭にきたら
お化け屋敷で酷い目にあった(主に橙子と黄河が)
「マジで酷い目にあった……喉枯れるかと思ったわ」
げっそりした顔で、こうはため息混じりにいう。
彼の調子に乗せられっぱなしの僕たちは、お昼がてら休憩していた。
お化け屋敷で遊んでる間に買ってきてくれたのか、真冬ちゃん達がお疲れと言いながら食べ物を分けてくれた。
「本当に作ったの中学生かよ……ぜってー大人の手入ってる……」
「こう君大丈夫〜? そんなにクオリティ高かったんなら、うちらも行けばよかったかな?」
「おかげでこっちは色々回れたけどね。明音も動画、お疲れ様。いいの撮れてたよ」
「真冬……後で覚えてろよ」
「もぉ、ほんっと信じられない! 叫んだせいで喉痛いし、純ちゃんに服引っ張られるし、ろくなことないんだけど!!」
「あはは……後半から純君、蜜柑ちゃんにかっこいいとこみせようと必死だったもんね」
「……まあでも、楽しかったは楽しかったですけどね。こんな風に普通に遊んだの、初めてだから」
文句をこぼしながらも、彼女はどこか満足げに笑う。
蜜柑ちゃんは財前家の娘だ。きっと、誰かと遊ぶことも少なかったのだろう。
もしかして純君は、最初からそれがわかってて……?
「お待たせ」
そんな時、だった。
席を外すと言った純君が、僕たちの元に戻ってくる。
彼は一緒にいる僕たちにも目をくれず、蜜柑ちゃんを一心に見つめていてー
「随分遅かったですね。どこ行ってたんですか?」
「クラスのとこに顔出してた。帰ろうとしたら、みんなに捕まっちゃって。待たせてごめんね」
「……ふうん、随分人気なんですね。ま、蜜柑ちゃんには及びませんけどっ」
「とーこ、みてほしいものがある。みんなも来て」
僕たちが制止するのも聞かず、彼はまっすぐ走ってゆく。
廊下は多くの人で混み合っていたが、そんなの気にもしないようにただ一直線に向かう。
向かった先は美術室だった。
たくさんの絵や彫刻など、さまざまな美術品が置かれている。
彼のクラスの出し物なのだろうか、教室の前にある看板にかいてあったのはー
「これが、ボクの答え。ボクの、気持ち」
テーマ『大切なもの』
クラス全員チームに分けて、作ったものを展示してある、と説明されてある。
その中に、一際目立つ絵が飾られていた。
笑った顔、怒った顔、様々な顔がキャンバス一面に広がっている。
一目見てわかった、彼女ー蜜柑ちゃんの顔だと。
「……これ、全部私……?」
「ん、そーだよ」
「えー、すごぉい! これ、店長さんのコーヒーを飲んでる時じゃない?」
「ふーん……こうしてみると、橙子って色んな顔するよね」
「言われてみれば……誰かを小馬鹿にしたり、ぶりっこぶったり……いつもの生意気っぷりがよく描けてるわ」
「ちょっと、どういう意味よそれ!」
絵の下には、彼の名前がある。
タイトルなのか、そこには「おれんじ」とかかれていた。
お世辞にも、うまいとはいえない。
けれど川沿いで見た時よりも鮮明で、強烈な絵。
これでもかってほど、想いが伝わってくる。
中でも白く、小さく描かれた花……蜜柑の花、だったかな。
それが一番綺麗に見えてー
「あなた!! 一体何のつもりよ! こんなのみせて!」
動揺しているのか、蜜柑ちゃんは震えている。
こんなものを、見せられると思ってなかったからだろうか。
それでも純君は、まっすぐ、正面から彼女に向き合った。
「ボクが提案したんだ、この展示もテーマも。ボクの気持ちは、本物だよって証明したくて」
「上っ面な言葉ばかり並べないで! そう言って近づく人は何人もいた!! けど結局は、財前の娘だからで……!」
「前も言ったでしょ、ボクにはお金持ちとかよくわかんないし。それに、もしもお金持ちじゃなくても、とーこがすきになってたと思う」
「……どうして、そこまで……」
「ずっとみてたし、好きだったから。お店で初めて見た時から、ずっと」
やっぱり彼はすごい。
どんなに高い壁も、純粋な言葉で溶かしてしまう。
僕なんかより全然年下なのに、それすら感じさせられなくてー
「大好きだよ、財前橙子さん。財前の娘じゃない、一人の女の子として、ボクと付き合ってください」
その言葉に、彼女は肩を振るわす。
目からは、涙がこぼれていた。
きっとそれは財前の娘でも、蜜柑でもない。財前橙子としての涙でー
「とーこ、大丈夫? 泣いてるの?」
「なっ、泣いてるわけないでしょ! でもまあ、そうね……そこまでいうなら、仕方なく、付き合ってあげる……」
赤くなった目を隠すように、彼女はそっぽを向く。
その言葉だけで、どれだけ彼女に響いたか、痛いほど伝わってきた。
「よかったね、蜜柑ちゃん。こんなに愛されて」
「……いいわよ、橙子で。言っときますけど、私まだ好きではありませんから! お付き合いも、あくまでも仮の状態で……」
「わーーーーーい!!」
彼女がいいおわる寸前、だった。
すると、純君は彼女に飛びついて……え!?
「ちょっ、何するのよいきなり!!」
「これでとーこはボクのもの。ボクの彼女」
「話聞きなさいよ!! は、離して!!」
「離さないよ。永遠に」
彼が、キスをする。
途端、その場にいた人たちが、わっと歓声を上げてー
「あ、あああなた、何してんの!!」
「キス。もっかいしていい?」
「していいわけないでしょ! あなた達も!! 見てないで、これ剥がして!!」
「あ、俺ら部外者なんで。よしお前ら、いくぞ」
「え!? いいの? ほっといて」
「あとはお熱い二人でどーにかするんじゃない? じゃ、そーゆーことで」
「えーっと……お邪魔しましたぁ〜」
「ちょっ!!」
「あ、結婚の挨拶しに行かなきゃ。パパにはボクがいうとして、とーこのおじさんが先だよね。おじさんどこ〜?」
「ま、待ちなさいってば! 誰か助けなさいよぉぉ!!」
蜜柑ちゃんーいや、橙子ちゃんの悲鳴が鳴り響く。
アルカンシエルにまた、もう一つのカップルが誕生した瞬間でした。
§
二人が、いちゃついている。
それを黄河は、外からなんとなく眺めていた。
あどけなく、生意気な年下だと思っていた彼は、自分の思いを素直に告げたのだ。
そして硬かった橙子の心の壁を、見事に壊した。
その気持ちの強さと、真っ直ぐさで。
「……すごいよね、純って」
気がつくと、隣に真冬がいた。
どこか羨ましそうにに見つめている。
そんな彼女の目線には、那月が捉えられていてー
「お前だってちゃんと言ったんだろ? たいしてかわらねーと思うが」
「気づいてるんだ。まあ、結果的にはね。けれど僕には、ああはできなかった。まだ不安になるよ、これでよかったのかって」
「はんっ、明音泣かせといて何言ってんだ。言っとくが俺はまだ許してねーからな、お前のこと」
「別にいいよ、許されると思ってないし。でも黄河、このままでいいの?」
鋭い視線を、思わず向ける。
それでも彼女は、まっすぐこちらを向いていた。
まるで、自分の心を見透かしているようだ。
その目から離せないくらい、まっすぐな意思を感じられてー
「僕が言えた立場にないのはわかってる。明音を傷つけたことは、一生許さなくていい。だからっていつまでこのままにしておくの? 蓋をあけない限り、君は前には進めない」
「……」
「僕も那月も、純も橙子も進んだよ。次は、君の番じゃない?」
真冬を呼ぶ声がする。
それに釣られて、彼女は那月の元へ行ってしまう。
彼女に微笑む顔は、前と違う。愛しい人を思う目だ。
純にキスされて嫌がる橙子の姿も、どこか嬉しそうにみえる。
その隣には、いつもと変わらない優しい笑顔で、二人の門出を祝っている彼がいてー
「……わかってるよ、んなことくらい。お前がいたから、俺は……」
彼の声は、誰にも聞こえない。
秋晴れの空、静かに夕陽だけが沈んでいたー
(つづく!!)
おまけの小ネタ。
純「これでボクもとーこの恋人〜。嬉しい〜。ぎゅーーー(つ・ω・(-ω-*)」
橙子「ちょ、抱きつかないで!!ヽ(`Д´)ノ」
明音「あはは、二人とも本当よかったね( *´꒳`*)」
真冬「でも、よかったの? こんなところでおおっぴらに告白してε-(´-`*)」
黄河「いわれてみりゃぁ……橙子は変装してるし問題ねぇだろーが、純は問題大有りじゃね?( ・᷄-・᷅ )」
那月「確かに! 中学生ってそういうとこ厳しいんじゃ……」
純「ああ、それなら大丈夫。ボクの学校、ゆるゆるだし。それに……」
生徒A「ごーがい! ごーがい!! ついに純君が! 純君の恋が実ったぞー!! ( 」゜Д゜)」」
生徒B「まじか! やっとか!? 今日はケーキだな! 先生にほーこくしてくる!٩(>ω<*)و
生徒C「あぁ……私たちの天使がぁ……嬉しいけど、寂しい……(´;ω;`)」
純「告白がうまく行ったから、みんながお祝いしてくれるんだよ。みんなもくる?」
黄河「お前学校でどういう存在なんだよ( ・᷄-・᷅ )」
もはやアイドル級の扱い。




