41.戦慄、無自覚トラップ発動中!
前回のあらすじ。
「好き」を証明するといった純から
文化祭のお誘いをもらった。
「2組、お化け屋敷やってまーす。よかったら、きてくださーい」
「4組の脱出ゲームはこちらでーす」
「フランクフルト! 売ってまーす! いかがですかぁー?!」
様々な声が、飛び交う。
右も左も人ばかりで、呼び込む人とお客でたくさん賑わっている。
油断してると、僕が迷子になっちゃいそうでー
「明音、列に流されてんぞ。こっちだ」
そんな僕の腕を、こうがぐいっと掴む。
明音です。今日はみんなで、純君の中学校の文化祭にきています!
たまたま店の休みが被り、純君直々にお誘いがあったのでみんなで行くことになったのである。
親であるはずの藍さんは、面倒とかなんとかで、来る気すらなかったけど。
文化祭なんて大学以来だから、なんだか新鮮だなぁ。
「それにしても、すごい人だね〜相手は中学生なのに、どれもクオリティー高めじゃない?」
「私立の中学だからかもね。はぐれないように気をつけてよ、那月」
「はぁい。それにしても橙子ちゃん、本当にその格好でよかったの?」
那月ちゃんが、心配そうに言う。
彼女の視線の先には、地味で控えめな格好をした蜜柑ちゃんがいた。
髪も下ろしていて、いつもの可愛らしい見た目が随分おとなしい印象になっている。
正直最初見た時も、彼女だと気づかなかったほど別人になっていて……
「言ったでしょ、身バレ防止だって。財前の娘がきてるなんて知られたら、学校に迷惑かけちゃうじゃない」
「わからねぇでもないが……店で顔出ししてんのに、今更隠す必要なくね?」
「私がきてるってこと、あの子に知られたくないの! そもそも行きたくもなかったのに、あなた達がうるさいから!!」
「そういえば、純君どこかな? 校門にいるって送ったのに、全く既読つかないけど……」
そういいながら彼女は思い出したように、携帯を見る。
彼が携帯の操作に慣れていないのは、うちじゃ日常茶飯事。
出会った時からそうだったけど、店の連絡にも一向に返事すら打たない。
連絡できないと、こういう時に困るんだよなぁ……
「あ、みんな発見。おーい」
聞きなれた声がする。
気がつくとそこには、純君がいた。
お祭りのお面のようなものをつけていて、「やほ」と小さく呟く。
彼は僕らを一瞥したあと、すぐ、
「来てくれたんだね、とーこ」
と、秒で彼女を見つけてしまった。
「……よくわかったわね、私だって」
「とーこのことなら、なんでもわかるよ」
「ふうん……好きか教えてあげる、でしたっけ? どれだけのものか、たぁっぷり見せて……」
「せっかくの文化祭にきたんだもん、あそぼ」
蜜柑ちゃんの言葉が終わる前に、彼は彼女の手を引っ張ってしまう。
「ちょっと!」と止める声すら聞こえてないのか、どんどん遠くにいってしまう。
「えーっと、どする? ついてく?」
「正直、二人にさせてあげたい気持ちもあるけど……」
「後でもいんじゃね? 単純に興味あるんだよな、あいつが橙子をどう落とすか」
にやにや、こうが笑う。
その小さな背中を見失わないように、僕たちは後を追った。
「ここ、いろんな人が怖いって言ってて。とーこと一緒に入りたかったんだよね」
スキップ混じりで歩きながら、僕らの方を振り向く。
彼につれてこられたのは、違うクラスの出し物であるお化け屋敷だった。
彼の言う通りなのか、出る人全員が「怖い」と感想を述べていてー……
「……最悪」
そんな人達を見たからなのか、行き先がお化け屋敷だったからなのか、蜜柑ちゃんの機嫌が一変する。
心なしか、彼女の体は小刻みに震えていた。
「デリカシーってものがないんですか? 可愛い女の子を、こぉんなところに連れてくるなんて」
「とーこ、怖い? 嫌ならやめる?」
「こ、怖いわけないじゃない! ただの子供騙しでしょ」
「そっか、よかった」
この感じ、蜜柑ちゃん絶対苦手だよなぁ……
もしかして純君、わかってて誘ってるんじゃ……
「……せっかくの文化祭だろ? どーせなら二人で行けよ。俺は外で待つ、出店がよんでるんだ」
そんなことを思ってる最中、あからさまに態度が変わった人がもう一人いる。
ご存じ、僕の親友でありアルカンシエルの店長、天宮黄河だ。
元々険しい彼の顔だが、今だけはより怖く、迫力あるものになっている。
まあ、僕にはこの理由がわかってるんだけど。
それをみていたのか、彼女ー真冬ちゃんがため息混じりに追い打ちをかけた。
「……敵前逃亡はカッコ悪いと思うよ、黄河」
「はぁぁ? 逃げてねぇし。こいつの出し物関係ねぇし、外の出店見た方がいいだろ絶対」
「えー、いいじゃんお化け屋敷! ……ははーん? さてはこう君、怖いんだね?」
「怖くねえって。それより明音、あっちにコーヒーあったよな? その方が気になるだろ、な? な?」
らしくない必死な顔で、僕の同意を求めてくる。
そう。実はこうみえて彼は、お化けの類が苦手なのである。
怖い、というより、驚かされるのが嫌らしい。
大学時代、文化祭の出し物を決める時も、それに決まらないように誘導してたっけ。
まあ本人は、頑なに否定するんだけど……
それを真冬ちゃんが気づかないはずもなく、彼の背後へ回っていてー……
「コーヒーなら、僕と那月で買ってくるから。お化け屋敷は、君たち四人で行ってきて」
真冬ちゃんが、強引に背中を押す。
彼が断る術もなく、僕たちはあっというまにお化け屋敷に押し込まれてしまった。
「てめっ、やりやがったな真冬!!!」
「あ、あと明音は動画回してきて。なるべく二人中心でよろしく」
「あいつマジでぶっ潰す!!!!」
「まあまあこう、入っちゃったのは仕方ないし……」
同時に、悲鳴が聞こえる。
その悲鳴がリアルさを増してきて、こうがぐっと腕を掴んでくる。
どうやら本物みたいだ、無事に動画を回せるかなぁ……
「きゃぁぁぁ!! やだ!! 無理! 帰る!!」
「とーこ、大丈夫だよ。ボクが守るから」
その横で怖がる蜜柑ちゃんの手や体を、しっかり掴む。
大丈夫と言い張る純君は、まっすぐ彼女を見ていて、すごく頼もしくみえてー
「行こう、とーこ」
先をゆく彼が、すごく男らしい。
心なしか、蜜柑ちゃんの頬は赤く染まっていたような、そんな気がした。
(つづく!!)
おまけの小ネタ。
真冬「はい、那月。ワッフル、買ってきたよ」
那月「あ、ありがとう……ねえ真冬、いいのかな? お化け屋敷に行った四人を差し置いて、うちらだけで出店、回っちゃって( ˊᵕˋ ;)」
真冬「いいんじゃない? 純が行くって言ったんだし。それに……」
inお化け屋敷
黄河「ふふふん、なぁにがお化け屋敷だ。たかがガキの出し物だ、こんなもんすぐ出てやる⁝(`ꈊ´)⁝」←急に出てくる系が苦手
橙子「その割には声が震えてるじゃないですかぁ? 強がらなくてもいいのにぃ」 :(;◜ᴗ◝;):←お化け全般苦手
お化け「うらめしやぁ〜( ᜊº-° )ᜊ」
黄河・橙子「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!((((;゜Д゜))))」
明音「……どうしよう、撮影してはみたけど、二人の早さに上手く撮れてる気がしない……( ˊᵕˋ ;)」←ホラーは苦手だが、自分以上にパニックな人を見ると逆に落ち着く
純「あ、あそこに人の手ある。とーこを守るチャンス。あかね、こーが捕まえて。ボクがとーこ、リードするから(`・ω・´)」←お化け大好き
真冬「……この調子じゃ、当分帰ってこなさそうだから╮(•́ω•̀)╭」←平気すぎて高みの見物
那月「あはは……明音君、大変そうだなぁ(^^;)」←意外とホラー好き
この後30分くらい待たされました。




