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40.その少年は恋を描く。

前回のあらすじ。

好きを証明するといった純がいなくなり、

橙子の思いを知った。

「お先に失礼しまーす、お疲れ様でしたぁ〜」


オレンジ色の夕暮れが、広がる。

仕事が終わり、僕は店を出た僕はゆっくりと帰り道を歩いていた。

あれからまた時間が過ぎ、純君の文化祭まで残り一週間になっていた。

それなのに彼は、一向に姿を現さない。

藍さんだけは顔を出していても、彼だけはいないという状況が続いている。

いつもは、逆のことが多いのに。


日が経つにつれ、憎まれ口をたたいていた蜜柑ちゃんは、どこか口数が減っていた。

こうはイラつく奴がいなくて清々する、とは言っていたけど。

那月ちゃんはお菓子を余分に残していたり、真冬ちゃんもよく時間を気にしていた。

みんなは口には出さないけど、やっぱり寂しいんだろうな……


「……あれ? あそこにいるのって……」


そんな時、だった。

川沿いの道端で、見慣れた顔をみつけたのは。

そこにいたのは、純君だった。

スケッチブックのようなものを手に、何かを書いている。


「純君?」


思わず、声をかけてしまう。

それでも彼は、全く気づいていない。

ものすごい集中力だ、一心不乱に何かを書いている。

その顔は真面目で、真剣で。彼と会ってから、初めて見る顔でー


「やっぱりここにいましたか、終わりましたよー。おや、聖さんもご一緒だったんですねー」


気がついた時には、後ろから藍さんが来ていた。

その声でようやく純君は僕に気づき、顔を上げる。


「お疲れ、パパ。あかね、いつからいたの?」


「じ、実はさっきから……邪魔してごめんね、一応声はかけたんだけど」


「ふーん。待ってたら、お腹すいた。パパ、なんかちょーだい」


僕の言葉に構うことなく彼は、無造作に手のひらを広げる。

それだけで何を意味するかわかったのか、藍さんは買ってきたおにぎりをのせてあげる。

それをすぐに取り、彼はおにぎりを頬張ってゆく。

口を動かしてもぐもぐさせる様は、まるでリスのようで少し笑ってしまった。


「久しぶり、だね。こんなところで何してたの?」


「パパを待ってた。おじさん達がいないから、パパのお家に泊めてもらうの」


「それなら、お店で待ってればいいのに。みんな寂しがってるよ?」


「そーなの? でも、終わるまで会わないって決めたから」


その言葉に、思わず首を傾げる。

彼はそーだ、とおもむろに、広げていたスケッチブックを広げながら、


「うまくできたから、あかねに見せてあげる。じゃーん」


と見せてくれる。

そこに書かれていたのは、その川沿いから見える風景だった。

絵の具で色づけられていて、前から描かれていたことがわかる。

わかりはするんだけど……お世辞にも上手いとは言えないような……


「相変わらず、下手くそな絵ですねー」


「ら、藍さん、そんなはっきり言わなくても……」


「お世辞でうまいなんていうより、正直に言った方がいいんですよー。ほら、ここなんて色がはみ出して、隣の家まで青くなってますし」


「うん、知ってる。でも、大丈夫。きっと伝わるから」


そう言いながら、彼は今まで描いたものを見せてくれる。

風景や犬、人。よくみると、どれも形は歪んでいる。

それでも色は驚くほど鮮やかで、一つ一つの線が迷いなく力強いタッチでー見てるだけで、一生懸命さが伝わってきた。


「すごい、たくさん書いたんだね。これ、どうしたの?」


「れんしゅー、文化祭の」


「ああ……でもそれなら、店でもできるような……」


「今は、ダメ。とーこに会いたいけど、ちゃんと好きを証明するって決めたから。それまで、店には行かない」


きりっとした顔だ。こんな顔、今までみたことない。

それだけ、真剣なんだ。好きな人がいた僕には、わかる。

きっと彼も、僕と同じ。好きだからこそ、その人のために何かしたいと思っているんだ……


「あかね、前に言ったよね。その人の笑顔が見たいって。ボクも、同じ。とーこには幸せになって欲しい。でも、誰かじゃダメ。ボクがしなきゃダメなの。とーこを好きなのは、ボクが一番だもん」


強いなぁ、彼は。

僕より一回りも年下なのに、こんなに堂々と自分の想いを口にできるなんて。 「誰か」じゃなく「自分」が幸せにするんだと言い切れる。

それだけ、好きなんだ。彼女のことが。


「あれだけ言われて、よくめげずにできますよねー。昔からしつこい子だとは思ってましたけど、ほどほどにしないと人によってはうざがられますよー」


「パパ、意地悪。とーこはそんな子じゃないもん」


「大丈夫だよ。これだけ真剣にやってたら、蜜柑ちゃんにも伝わると思う。絶対」


僕の言葉に、照れたように笑う。

その笑みはあどけなく、いつもの彼のように見えてー


「そだ、あかねも来なよ。みんなつれて。ちょうどお店がお休みの日だから」


「え、いいの?」


「あかねたちにも見せたいんだ、ボクの気持ち。びっくりするようなものにするから、楽しみにしてて」


恋する人は、誰よりも強い。

意地悪そうに笑う彼をみながら、僕は頼もしさすら感じ、同じように笑って見せた。


(つづく!!)

おまけの小ネタ

明音が帰った後、店ではー

黄河「……あと一週間か……( ・᷄-・᷅ )」


那月「みんな〜帰ろ〜。ん? どうしたのこう君」


黄河「あいつの文化祭、もうすぐだと思ってな」


那月「あー、そっか! もうそんな時期か! 純君何やるんだろう、何か聞いてる?」


橙子「さあ? 聞いたところで、興味もないですから(˘^˘ )プイッ ちなみに蜜柑ちゃんは、メイドカフェでお客さん相手に、蜜柑のかわいさをたぁくさんアピールしまひたよ❤︎ 萌え萌えきゅんって!( ´͈ ᵕ `͈ )♡」


真冬「君、学校でもそのキャラなんだ( '-' )」


橙子「いいじゃないですかぁ、別にぃ〜(・ε・` )みなさんは文化祭、何したとか覚えてるんですか?」


那月「それでいうと、高校の時に男女逆転劇やったなぁ〜脇役だったのに、真冬がすんごい人気かっさらってさぁ!(≧∇≦)」


真冬「……あれは那月がやれってうるさいから……そのせいで、大学でもさせられそうになって大変だったんだからね?」


那月「えー、いいじゃん似合ってたんだし! それで、こう君は何したの?」


黄河「文化祭ねぇ……あんまりおぼえてねぇが……そういや、明音がやけに動き回ってたな。店の客引きとかで」


那月「あはは、明音君らしいね≧(´▽`)≦じゃあこう君はそのお手伝い?」


黄河「いや、さぼり」


三人「え?」


黄河「ほら、俺料理下手だろ? 厨房は任せられねーから、仕方なく客引きになって……んで、怖がって客が来なくなって、結果出禁ε-(´-`*)」


真冬「……意外と苦労してるよね、君」


多種多様な文化祭。

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