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39.偽りの君にシュウシフを

前回のあらすじ。

あまりにも純がうるさいので

好きを証明しろ、と言ったら

あっさり許可された。

木々に実った葉が、茶色く色づいている。

そんな外の光景をみることもなく、次から次へ皿が置かれてゆく。

その上にあるのは、今後展開する予定のスイーツがずらりと机に並べられていてー


「もぉ、なんなんですかあの人。ほんっと最悪」


そんなスイーツを、一口、また一口と口に運んでゆく。

その様子を呆れながら見ていたこうが、ため息混じりに


「お前なぁ、そんなに食って大丈夫か? 太るぞ」


と、うんざりしたように呟いた。

今日は定休日を利用した、これからに向けての新メニュー考案会だ。

秋は短い、あっという間に冬がやってくる。

那月ちゃんを中心に、季節限定のメニューをどうするか、話し合っていたのだけど……


「デリカシーない人ですねぇ、まったく。ご心配せずとも、体型管理はバッチリですよーだ」


「一応これ試食会なんだけど、ちゃんと味わってる?」


「感想も何も、他の店と似たようなものばっかりで正直飽きちゃった。白玉とかあんこでも足して、お月見パンケーキ〜とかでもやったら?」


「……君って口だけは達者だよね、純と一緒で」


「そういえば、純君あれから来なくなっちゃったね。もう一週間経つのに」


那月ちゃんが言いながら、彼の定位置であるカウンター席を見る。

文化祭に来て、そう言った彼はあの日以来姿を見せない。

この時期は文化祭や体育祭で、学校が忙しくなるとは聞いていたけど。

でもそれは彼女も同じなはずで、全く来なくなったかわりに蜜柑ちゃんはバイトの時間になれば必ず顔を出していた。


「あれだけ大口たたいたんです、文化祭に向けて頑張ってるんじゃないですかぁ? よくやりますよねぇ、やるだけ無駄なのに」


「そ、そこまで言わなくても……蜜柑ちゃんも文化祭とかあるよね? 学校の方はいいの?」


「……いい。学校より、ここの方が居心地いいもの」


声のトーンが、急に落ちる。

そう言う彼女の顔は、どこか寂しそうに見えた。

確かお嬢様学校に通ってるんだっけ。やっぱり財前コーポレーションの娘ってだけあって、色々大変なのかなぁ……


「ねえ橙子ちゃん、ずっと気になってたんだけど」


「蜜柑ですぅ〜」


「それだよそれ。なんで、偽名使ってるの? 橙子って名前、うちは可愛いと思うけど」


那月ちゃんが、優しく諭すように聞いてくれる。

さすがだ、彼女は人の懐に入るのが上手い。

けれど蜜柑ちゃんは目線を向けるだけで、ケーキを食べる手を止めない。

答える気はない、とでも言うのだろうか。話すのを待ってることしかできない僕は、ただ見守ることしかできなくてー


「よかったら、聞かせてよ。うち、橙子ちゃんのこと、もっと知りたいな。同じ、アルカンシエルの仲間なんだからさ」


「……嫌いなだけです。財前って名前が」


やっと吐き出してくれたその想いに、どこか腑に落ちる。

財前と聞けば、誰だってあの財前コーポレーションが思いつく。

社長さんである彼女の父親も、ニュースでよく見かけるくらい認知度が高いから……


「それって、あのおっさんのことか? 師匠がいない間にたまに店にきてくれたが、そんな悪い人には……」


「別に、お父様のことは嫌いじゃないわ。むしろ尊敬してるわよ。お母様が亡くなっても、たった一人で私を育てて、会社を大きくして。……おかげで私は、周りにとってはただの商売道具。どこ行っても財前財前……馬鹿げた話よね。ただ、お父様の娘として生まれただけなのに」


どれだけ、彼女は苦労してきたのだろう。

きっとこの前のお客さんみたいに、近づく人は皆彼女を「財前の娘」としかみていない。

だから、彼女は演じていたんだ。みんながみてくれる、「蜜柑」としての自分を。

でも、それでも彼はー


「だから、蜜柑として違う自分を作ったんです。違う自分としてなら、見てくれると思ったから……あの子はああ言ってたけど、どーーせ他の人と一緒に決まってます。橙子って呼ぶのも、どうせ単なる気まぐれか、呼びやすいからで……」


「そう、かな?」


気がついたら、言葉に出ていた。

蜜柑ちゃんの目が向くと同時に、みんなが僕を

みている。

その目に思わず戸惑いながらも、自分の言葉を告げた。


「ご、ごめんね、うまく言えないんだけど……僕は、純君の気持ちは本物だと思う。初めて会った時から、彼は嘘をついてない……だから、大丈夫だと思うよ」


「……彼のことを知らないくせに、よくそんなことがいえますね。あなた達だって、同じなくせに……」


「それは違うよ。僕には……ううん、アルカンシエルのみんなは、君のよさはちゃんとわかってるから」


僕の言葉に、那月ちゃんが微笑む。

真冬ちゃんはまた言ってる、と呆れるようにため息をついたけど。

でもきっと、彼らもそう思っているのは間違いない。


「ね、そうだよね、こう……」


「つーかお前、そのキャラにしたってことはそれが可愛いと思ってんだよな? あんま変わんねーぞ、ぶっちゃけ」


と、憎まれ口を叩けるほど、余裕が……あれ?


「か、可愛くないですってぇ!? 見る目なさすぎ! 眼科行った方がいいんじゃないですかぁ?」


「いや、どう考えてもぶりっ子の方がウケ悪いだろ。生意気ぶったガキの方がお前らしい」


「まあ、一理あるね。そもそも僕としては、橙子でも蜜柑でもたいして変わらないと思うけど」


「二人とも〜、あんまり橙子ちゃんをいじめないの〜うちは好きだよ! 文句言いながらも、お菓子完食してくれるとことか!」


「言わせておけば、好き勝手に言ってくれちゃって!! そもそもあなた達が脳内お花畑だから……」


彼女の挑発的な物言いに、こうや真冬ちゃんが張り合うように続く。

なんだか本当の仲間になったようで、嬉しくなった僕は、少し笑ってしまったー


(つづく!!)

おまけの小ネタ

黄河「それにしても橙子が蜜柑ねぇ……( ˙ᒡ̱˙ )一文字もかすってねぇのに、なんで蜜柑なんだ?」


橙子「えぇ、だって可愛くないですか? みかんって響き!( *´꒳`)」


黄河「そんな理由かよ、聞いて損した( ・᷄-・᷅ )」


橙子「ていうかぁ、あなた達こそどうなんですか? 散々ぶりっこがどうっていいますけど、どういうキャラなら納得いくんです? 王道なツンデレ、とか?( *¯ ꒳¯*)」


黄河「あ? 別になんだってよくね? そーゆーのどーでもいい(乂'ω')」


真冬「正直どれも好みじゃないかな( ˙-˙)」


那月「う、うちは、そのままが一番だと思うな! ねえ明音君!(^^;)」


明音「え、そ、そうだね!?( ºωº ;)」


橙子「ほんっとあなた達きらい!!ヽ(`Д´)ノ」


なんだかんだで仲良し。

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