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37.そのヒーローは不敵に連れ出す

真冬が那月と結ばれ、失恋したが

友達の関係性になった。

秋が深まり、木々に落ち葉や木の実が目立つようになってきました。

明音です。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

僕はというとですね、えっと、簡単に言うと……


「明音〜いつまでゴロゴロしてるの〜? もうお昼よ〜?」


「振られたからってしょげてんじゃないわよ! だらしないなぁ」


「こら、あんまりそう言うこと言わないの。お母さんたち、ちょっと出かけてくるからね〜?」


母と姉の声がする。

あれから二週間、僕はすっかりやることをなくしていた。

もちろん仕事自体は変わらない。付き合ったとはいえ、二人の関係は他のみんなには口外していない。

知ってるのは、僕だけ。それがなんだか、特別感ある。


真冬さん……じゃなかった、真冬ちゃんと那月ちゃんと友達になったことで、僕の恋は終わった。

彼女との呼び方の変化に、羨ましく思ったのか、那月ちゃんにも名前呼びを言われて、前よりさらに仲良くなった気がする。

そのことに後悔はない。こんなにスッキリ、嬉しく終われることなんてないのだから。


ただ、今まで好きのために走ってきたから、その目的がなくなったというか……ぽっかり穴が空いたような感じがすると言うか……

これから僕は、どうしていけばいいのだろうー……


「あれ、こうからメッセージきてる。いつのまに……」


メールに気づいたのは、物思いに耽っている時だった。

それはこうからで、『暇ならここに来い。大至急』という短文すぎる文字だけ。

こうして呼び出されるのは、いつぶりだろう。店に入る前から、彼が休みの日に出かけようとすること自体珍しくて、びっくりする。

大至急、なんて、何かあったのだろうか?

僕は不安を抱えたまま、重い体を引きずるように、指定された駅へと向かった。



「よぉ、待ってたぜ明音」


指定された駅に着いたが否や、こうはなにやらご機嫌だった。

モノトーンカラーのパーカー、機能性重視のスウェットに、レザーの小物やアクセがついている。

かたや僕は普通すぎるポロシャツにズボン……性格が違うと、こうも違うんだなぁ。


「ごめん、ちょっと遅くなって……どうしたの? 何かあった?」


「明音、俺は今な………猛烈に遊びてぇ気分なんだよ」


「……えっ……? それが、大至急の用事?」


「いいだろ、別に。文句言ってねーでいくぞ。ぼさっとしてると置いてくからな」


彼はいつも強引だ、勝手に物事を淡々と進めていく。

そんな彼が連れてきたのは、学生時代によく通ったアミューズメント施設だった。

大学時代、よくここで遊んだのをよく覚えている。

協力系ゲームを求める僕と違い、車やパンチングなど、対決系を好むこうは、とにっかく勝負を申し込んできてー


「3回勝負だ。負けたらジュース奢りな」


エアホッケーのパックを、片手で飛ばしてはキャッチする。

仕方なく向かいに立つが否や、豪速球の球が飛んでくる。

相変わらずの容赦なしに、思わず悲鳴を上げた。


「えっ、今のずるくない!? 僕まだ準備してないのに!!」


「勝負にズルいも何もねーだろ」


「もぉ……! 仕返し!!!」


負けずと劣らず、僕も彼のゴールへパックをスイングする。

彼は素早く反応するが、惜しくもパックはゴールへ入ってゆく。

すると彼は、にやぁっと笑ってー


「……やったな?」


彼の勢いが、さらに増す。

カーン、カーンと、プラスチックがぶつかる高い音が響く。

右へ、左へ、全力でパックを追いかける。


昔からこうだ。負けず嫌いの彼が、とにかくいろんなゲームを仕掛けてきては、付き合わされる。

何もかも普通すぎる僕は、彼に勝ったことが一度もない。

それでも楽しくて、時間すら忘れられる。

結局、スコアは僕の惨敗で、約束通り炭酸飲料を奢った。


「ジュースごっそーさん」


「あー、いいところまでいったのになぁ。学生時代から通算したら、どれくらい負けたんだろう僕」


「無論、オレの58勝だな」


「数えてるんだ……? でも、すっごい楽しかったよ。まるで、学生時代に戻ったみたいで」


「……やっと笑ったな」


ふと、彼の言葉に振り返る。

気がつけば、自然と笑みが溢れていた。

今まで笑えなかったとか、そんなわけではない。

でも、こんなに晴れやかな気持ちで笑えたのは、久しぶりかもしれない。

そんな僕にこうは照れ臭くなったのか、頬をかいてみせた。


「いやほら、お前、最近色々あっただろ? だからその、気分転換、的な?」


「……もしかして、気づいてたの? こう。僕が、真冬ちゃんに……」


「俺がきづかねぇとでも思ったのか?」


さ、さすが親友、と言うべきなのだろうか。

藍さんに相談を頼んでくれたとはいえ、まさか、勘づかれていたとは……


「お前の言ってた遠い友達? あれ、真冬のことだろ? すぐにわかったぜ。応援した挙句、付き合うのを祝福するとか……俺だったらぶっ潰すとこだっての」


「そこまでバレてたんだ……でも、これでよかったんだよ。真冬ちゃんの笑顔が見れて」


「ふーん。ならなんで、そんなに元気ねぇんだよ」


「んー……寂しくなっちゃったんだよね。二人は幸せになったけど、僕には何が残るんだろうなって」


気がつけば、全部話していた。

こうには振られたことも、応援することも話していなかったと言うのに。

それでもこうは、聞いてくれた。いつものうんざりではなく、静かにずっと。

そして彼は、はぁっとため息をついてー


「……まさかお前、自分には何もないとか思ってねぇだろーな?」


「え? そ、そうだけど……」


「逆だろ。目的まで突っ走って、それを自分の力で解決してきた奴が何言ってんだ。十分すげーだろ。……まあ走りすぎて、目も当てられねーことの方が多いが」


「……それ、褒めてるの?」


「まあ、要するに、あれだ。お前は、そのままでいいんだよ」


彼が、笑う。

その言葉が、すとんと胸に落ちた。まるで探していた答えが見つかったような。

こうはいつもそうだ。僕が欲しいものを、いつもくれる。

今まで心にあった穴を、その温もりで埋めてくれるようなー


「……ふふっ、不思議だな。今日のこう、いつもよりかっこよく見える、かも」


「あ? かも?? いつもより? 失礼な奴だな、俺は365日かっけーだろ!」


「あはは、そうだった。ねえ、もうちょっと遊んでいかない? 僕、車のゲームもしたい!」


「はんっ、いいぜ。どーせ俺が勝つけどなっ」


その言葉が、いつも通りすぎて笑ってしまう。

こうとの時間は、無くした穴を埋めるように、ゆっくりとすぎて行ったのだったー


(つづく!!)

おまけの小ネタ

明音「あーー、楽しかったぁ(〃´o`)やっぱりこうはすごいね、何でも勝っちゃう」


黄河「まあオレだからなっ( *¯ ꒳¯*) にしても、随分マシになったな。真冬真冬うるさかったから、どうなることかと思ったが……思い切ってメールした甲斐があったわウンウン(( ˘꒳˘))゛」


明音「そ、そんなに言ってな……今、思い切ってって言った?(˙꒳˙*?)」


黄河「………あ(' Δ ')」


明音「もしかして、結構前の方から、僕を元気づけようと考えてた?」(*´ `*)


黄河「まさかソンナワケ( '-' )」


明音「あ、やっぱりそうなんだ。こうって意外と可愛いとこあるよね(*´艸`)」


黄河「う、うるせーな! そーゆーのは、俺に勝ってから言え!!ヽ(`Д´)ノ」


明音「えー、勝てるわけな……あ、じゃあ今度、系統を変えた勝負しない? どっちが早く糸の針を通せるかとか、どっちが早く料理を作れるかとか!(*!⃝ᗨ!⃝)」


黄河「………………好きなだけ言っていいので、その勝負だけは、全力で辞退させてください( '-' )スン」


明音「そこまで嫌なの!?」


この後、たっぷり遊んで帰りました。

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