36.奏別の小夜曲
前回のあらすじ。
那月の誕生会をし、
ついに真冬が彼女と結ばれた。
「じゃ、蜜柑はお迎え来てるので。みなさんまた明日〜❤︎」
「ばいばーい」
車に乗り込んだ蜜柑ちゃんと、元店長を連れた純くんが手を振りながら反対方向へといく。
誕生会をおえた僕たちは、片付けのために居残り中だ。
二人は未成年なこともあり、あとは大人たちで片付けるとこうが気を利かせてくれたのだろう。
時間はあっという間だ、あんなに楽しかったのにもう終わりを迎えようとしている。
さて、僕も片付けに戻らないと。
「明音君」
ふと、声をかけられ振り返る。
そこには那月さんがいた。罰が悪そうに頬を掻いている。
「ごめんね」
その言葉が真冬さんのことだと気づくのに、時間は要らなかった。
彼女はずっと、僕のことを応援してくれた。だから自分が結ばれたことを、悪いと思ってるのだろう。
そんなことない、とばかりに僕は首を振った。
「聞いたよ、真冬から。明音君が、応援するって言ってくれたこと。ほんと、ごめん。うち、明音君のこと、背中押してたのに……」
「何言ってるんですか。お二人が結ばれて僕、自分のことのようにうれしいんです。謝らないでください」
「ほんと、バカだよね。今更気づくなんてさ。でも、まさか真冬がうちを好きなんて思わなかった。ずっとそばにいたのに、気づかないもんだね」
どこか吹っ切れたように笑う彼女は、とても美しい。
やっぱり好きな人に気づけたからだろうか。
その笑顔が、雰囲気が、僕はとても嬉しくてー
「えと、もし嫌になったら、すぐに言ってね。うちと真冬がいるの嫌だったら、仕事とかやめるから……」
「もぉ、そんなこと思うわけないじゃないですか。これは僕が自分で決めたことなんですから」
「ほ、ほんとに?」
「僕はただ、真冬さんの笑顔が見たかった。それだけなんです」
その言葉に、嘘はない。
とはいえ、少し、胸が痛いけど。
二人が結ばれた。それだけで、僕はー
「……真冬が、伝えたいことがあるんだって。ひと足先に、そこでまってるから。行っておいでよ、片付けはうちがやっておくから」
「え、でも……」
「大丈夫、こう君にはうまく言っとくから♪」
那月さんが、ウインクしてみせる。
その言葉に甘え、僕は紙に書いてある場所に目を向ける。
場所を見た僕はハッとし、紙を握りしめながらその場を後にするのだった。
初めてここに来た時は、桜が咲いていた。
もう春も終わりだっていうのに、満開で。
……今でも思い出せるくらい、とても綺麗で。
「真冬さんっ!!」
指定された場所は波津乞駅、君と出会った場所。
僕にとって、すべてが、始まった場所だ。
あの日見た桜の花は散り、役目を終えようとばかりに茶色い葉が寂しげに揺れている。
そこに、彼女はいた。金色に輝くあのサックスが握りながら、振り向く。
それでも、木々の隙間から差し込む秋の夕陽に照らされた彼女の笑顔は、あの日の桜よりもずっと眩しく、美しくて――
「あの日、僕はここを最後の場所にしようとしたんだ。もう二度と弾かないかわりに、この音を自分の中に残しておこうと思って。それを君が見つけた……ありがとね」
「そんな。改まって言わないでください」
「サックスも、この気持ちも、なんとかなった。全部、君のおかげだ。一時はどうなることかと思ったけど」
すると、彼女はまっすぐ僕を向く。
その脇にはかつて咲いていた桜の葉が、枯れ葉となって散ってゆくー
「君への、感謝の気持ちだ。受け取ってほしい」
奏でられたのは、聞き慣れた旋律だった。初めて会った時にきいた曲。
真冬さんから教えてもらったその名前は、ムーンライト・セレナーデ。
彼女の奏でる音は、最初聞いた時とも、演奏会で聞いた時とも違う。
曇りない、綺麗な音色。
嗚呼、なんて綺麗なんだろうー……
「明音、君がいてくれてよかった。僕と、友達になってくれない?」
瞬間、涙が出た。
溢れて、溢れて仕方なかった。
恋が終わったこと、そして彼女が初めて僕を認めてくれたこと、すべてだ。
この笑顔が、みたかった。
そのために僕は、今までずっとー
「もう、ひどいなぁ真冬さん。もう十分、友達じゃないですか」
「言われてみればそうだね。だって君、年上なのに敬語ばっかり使うから」
「そ、それは癖で……確かに友達に敬語なんて変ですよね。少しずつ直していきます。えっと、これからよろしく、真冬ちゃん」
「……ん、よろしく」
風が、冷たい。
足元に落ちた枯れ葉を秋風がさらっていく。
はじめての恋。はじめての失恋。
始まりの場所で始まった恋は、同じ場所で終わりを告げたー
(つづく……)
おまけの小ネタ
那月「……あっ、真冬〜、明音君っ!ヾ(>▽<)
真冬「那月。中で待っててって言ったのに」
那月「ちゃんと会えたか気になって。話、できた?」
明音「はい、おかげさまで。真冬さんのサックス、特等席でたくさん聞いちゃいました (´>∀<`)ゝ))エヘヘ」
真冬「真冬、さん?( ・᷄-・᷅ )」
明音「はっ!( ゜д゜)違った、真冬ちゃん!!」
那月「……え? ちゃんづ、け?( ꒪⌓꒪)」
明音「あ、違います那月さん! ただ友達になったってだけで、別に他意はなくて!!」
那月「……ずるい。ずるいよぉ、真冬ばっかり! うちはまださん付けなのに!(⑉・̆༥・̆⑉)」
真冬「ずるいって思うの、そこなんだ」
那月「うちのことも呼んで、那月って! 呼べるまで、お店に入るの禁止だからね!(≧∇≦)」
明音「えぇっ!? だ、誰か助けてぇぇ!\(; ºωº \ Ξ / ºωº ;)/」
この後、呼べるまで永遠とやらされました。




