27.僕らの夏は終わらない
前回のあらすじ。
閉店騒動がようやくおわり、
束の間の平穏が訪れた。
わいわいと、はしゃぐ声がする。
楽しそうに笑う声、話す声、人それぞれだ。
そんな中、僕は立ち並ぶ屋台に目がいってー
「こう、みて! かき氷売ってるよ!」
「あ? ああ、そうだな。焼きそばにたこ焼き……色々あるな。酒……酒はどこに売ってんだ??」
「あ、あっちにはリンゴ飴もある! 真冬さんは何が好きなのかなぁ? ねぇどう思う?」
「知るか、本人に聞け。そもそも祭りひとつではしゃぎすぎだろ。子供かお前は」
僕の首根っこを掴みながら、こうは呆れたように呟く。
あれから一週間。閉店騒動がひと段落し、店の近くでやっているお祭りに来ています。
それもこれも、店長だった御領原さんが戻ってきれたおかげだ。
迷惑をかけたお詫びということで、餞別までもらってしまっている。
彼に言われて来たお祭りは、毎年花火が上がるらしく、夏の終盤にも関わらず、人手が多く結構賑わっている。
今年はお店のことばっかりで、あんまり夏っぽいことできなかったし、大学時代に行ったっきりだったから、結構楽しみなんだ!
「しっかしあいつらはどこで何してんだ? こっちは時間十分前に来てるっつーのに」
「そういえば遅いね、二人とも。待ち合わせはここで合ってるはずなのに……」
「お〜い、こうくーん、明音くぅん」
声がする。いつもの二人の声だ。
返事をしようとして、言葉を失う。
下駄の音を響かせてやってきたのは、なんとー!
「おせーぞ、お前ら」
「ごめんね〜真冬の説得と、着付けに時間かかっちゃって」
そこには、天使がいた。
白銀に輝く短い髪には、編み込みがされている。
麻の葉を模した柄に、紫色の帯。どこをみても、それはそれは綺麗でー
「ま、ままままま真冬さん、それ………!」
「……那月が、うるさいから……言いたいことあるなら言えば」
「素敵です! めちゃくちゃ似合ってます!!」
「あっそ」
「あはは、真冬照れてる〜」
「那月うるさい」
「んじゃ、揃ったことだし行くか」
そうして僕たちは四人で歩き出す。
花火が上がるまで、まずはお店を見て回ることになった。
こうはお酒を、僕たちは那月さんが買ってくれたラムネをそれぞれ飲む。
店の食べ物はどれも美味しそうで、すごく目移りしてしまう。
「くぅぅ!! やっぱ何もかも終わったあとの酒はうんめぇ!!」
「飲んでばっかりでお腹すかない? 僕、たこ焼きにしようと思うんだけど、こうはどうする?」
「あー、じゃあ焼きそばとはしまき。お前らもなんかいるか?」
「それ、全部食べ物だよね? そんなに食べ切れるの?」
「あははっ、やっぱ男の子だなぁ、二人は。あ、みて真冬! あのキーホルダー、うちらのとお揃いじゃない!?」
すると、那月さんが指をさす。
そこは射的屋で、小さなぬいぐるみやおもちゃなど、子供向けのものがたくさん並べられている。
その中に二つ、茶色の板に下げられた桜型と、落ち葉型のキーホルダーが並んでいた。
「へぇ、まだあったんだ。あれ」
「知ってるんですか? あのキーホルダー」
「四季をモチーフにしたキーホルダーなんだけど。昔、二人で夏祭りに行った時にお揃いでもらったんだ。ほら、これこれ!」
はしゃぐ彼女の携帯には、雪だるま型。真冬さんの携帯には小さなかき氷型がついている。
雪が冬、かき氷が夏モチーフってことかな?
あれ、でも……
「それはわかるが、なんでお前までつけてるんだ? 真冬はともかく、名前に季節入ってねぇだろ」
「ほら、うち、なつきでしょ? 漢字は違うけど、響きが一緒だから親近感わくんだよねー。それに、真冬とお揃いみたいで、よくない?」
「はーん……よくわかんねー変な理屈だな」
「あれ? でもそれなら、逆じゃないですか? 真冬さんが雪だるまじゃ……」
「那月ってば、急に交換してつけようって言い出したんだよね。もとを辿れば、那月の誕生日にってあげたやつなんだけど」
「え〜そうだっけ? 懐かしいなぁ。こうして並んでるの見ると、つい欲しくなってくるよねぇ〜」
那月さんはあははと笑いながら、愛おしそうに携帯についたキーホルダーを撫でる。
それだけで思い出深いものなんだってのがわかる。
二人にとって大切なもの、なんだろうなぁ。
「思い出といえば、僕もあるんですよね。あのちっさな観葉植物」
「えぇ? 明音君ってばおっしゃれぇ〜!」
「母が好きで。それこそこうが一人暮らしするって言った時に、一緒に見に行って。それに似てるんですよね〜」
僕の言葉に、こうの耳がぴくりと動く。
すると二人は目線があったかと思うと、財布を取りながら一歩前に出てー
「黄河、勝負しよっか。僕はあのキーホルダーを」
「んで俺があれだろ? 先に落とした方が花火の場所取り免除権獲得、ってどーよ」
「のった」
その言葉に、思わず驚いてしまう。
那月さんはともかく、僕はなんとなくいっただけなのに!
慌ててやめさせようとするが、二人はもう銃を構えててー
「おっ、二人とも頑張れ〜!」
那月さんの声が、静寂の中で響く。
二人はさながら仕事人のようで、鋭い眼光は狙いを一心に見ている。
あまりの真剣さに、思わずごくりと唾を飲む。
一斉に引き金を引くその動作は、まるで物を狙うスナイパーみたいでー……
「引き分け、だね」
「ちぇっ、つまんねーの」
「か、かっこいい!! すごいよ、二人とも、命中なんて!!」
「さすが、二人はやるなぁ。真冬がとったんだし、好きなのとっていいよ?」
「じゃあ、僕が秋で。那月は桜の方が似合う」
「これでもうち、九月生まれなんだけどなぁ? まっ、いっか!」
「やっべ、そろそろ花火始まんじゃねーか。ほら、いくぞ! 遅れたら洒落になんねー!」
焦るこうが小走りで先頭をゆく。
その後ろを、呆れ混じりに真冬さんがついていって、笑いながら那月さんが一番後ろを歩く。
この光景が、終わらなきゃいいのに。
並んだ三つの影と混じり合う笑い声とは裏腹に、夜風は驚くほど冷たく感じた。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
純「パパー、あれほしい。ヒーローのお面⸜(* ॑꒳ ॑* )」
藍「いりませーん。あなたのことだから、どーせその辺に捨てるでしょ( '-' )」
純「じゃあ金魚、金魚とる。一人じゃ寂しいだろーから、パパのとこで飼って?(ㅅ˙³˙)」
藍「それ、うちに来たいだけでしょ。自分家で育ててくださーい」
蜜柑「みてみてぇ、蜜柑が可愛いからオマケしてもらっちゃった❤︎(⸝⸝´꒳`⸝⸝) 店長さんもいります?」
藍「どーもー。それにしても、あなた達までくるとはねー。ミーは彼らだけに餞別を渡したつもりなんですが?」
純「ボク、パパがいない時頑張った。だから、もらうのは当たり前( • ̀ω•́ )✧」
蜜柑「そもそも蜜柑がいなきゃ、あのお店はとぉっくに潰れてるでしょ? 諦めて、お店のために尽くしてくださーい❤︎( •ω- )☆」
藍「お店の前にミーの財布がピンチですよー。誰か助けてー」
実は同じお祭りに来ていた3人でした。




