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誰がこんな男と

作者: 鬼丞沙弥

「大丈夫だよ、絶対元気になる。だから頑張って」

 涙ながらに話してくる旦那を見て、わたしはにっこりと返す。

 考えてみたらこんな男と何年も過ごしてきて、つくづくわたしがこいつのことを、どんなに好きなのか思い知ってしまう。


――結婚はできないんじゃないかな


 誰がこんな学校に来たくて来るかよ、わたしは職員室のドアを思い切り閉めた。人の人生に対して口を出してくる先生を思い出し、腹が立つ。あの先生ぶってる感じがたまらなく嫌いだ。真面目な奴らは損ばかりしてると思う。たかだか八十年の人生を必死こいて生きてるやつを見るのは大嫌い。適当に生きようが、真面目に生きようがどうせ死ぬのに、あそこまでやってるやつらは、やっぱり人生損してると思う。お堅い公務員は退職してから気づくんだ。俺の人生って何だったんだろうってな。

 そんな風に思ってると、隣の高校の男から連絡が来た。

『今からいつものとこに来い』

 いつもならめんどくさいな、と断ってたかもしれないけど、今日はイライラしてたから久しぶりに良いかと思い、()()()()()()に向かった。

 待ち合わせ場所には彼がいて、腕を組み歩いていこうとした。その瞬間、隣の男は宙を舞っていた。そして、わたしは状況を察す前に、誰かに引っ張られ、大通りにいた。わたしを引っ張ったのは、クラスのわたしが嫌いな()()()だった。

 そいつは、直ぐにわたしの前からいなくなった。

 やはりわたしは、そいつに苛立ちを覚えた。後から聞いた話だが、そいつはわたしが連れ去りると思って助けたつもりらしかった。とんだ迷惑だ。とか思ってたのは一週間。わたしはそいつを目で追ってしまっていた……。わたしのことながら、恥ずかしいほど乙女だった。一瞬でも白馬の王子さまに見えてしまったのは、わたしの唯一の黒歴史だろうか……。告白して撃沈した。しかしながら、わたしはそいつとのお付き合いに成功した。いつの間にか、わたしは先生から丸くなったなと言われた。うっせーばーか!

 将来の夢のようにわたしはそいつに言った。

「いつかわたし達結婚できるかな〜?」

 するとそいつは、

「結婚はできないんじゃないかな」

 許さない!!

 

 なんだかんだ言ってわたしたちは結婚した。旦那にして思ったけど、やっぱりこいつは昔から変わらなかった。

 わたしが何か言うと、まず否定的な意見を言った。それに対し、わたしは見返してやりたくて、否定されたこと全て実現してきた。たまには、わたしが何も言わないのに、否定的なことを言われたこともあった。それも全て実現した。言ってしまえば、この男は最低なのかもしれない。時間が経てば経つほど、悪いところばかりが目に付いてくる。挙動不審なところ、優柔不断なところ、直ぐにほかの女の胸を見るところ、冷蔵庫をよく閉め忘れるところ、風呂掃除が適当なところ、変なところで理屈を並べて論破しようとするところ、ご飯がまずいところ、靴下を裏返しにしてるところ、ゴミをゴミ箱にすら捨てないところ、虫が苦手なところ、テレビを見ながら寝るところ、酒を飲んだらすぐ寝るところ。いくらでも上げ続けられる。逆にいい所はたったの一つ。

 たったひとつだけ。私を好きでいてくれるところ。

 いつもネガティブなことしか言わないこいつが、初めてプラスな発言をした。良かった。わたしにはこいつが『君は助からない』と言われても、それをひっくり返すような力は残ってないよ。


 だから、ありがとう。今まできちんと言ってないけど、愛してたよ。わたしの旦那さん。

初めまして。鬼丞沙弥です。これから少しずつ書いていこうと思うので、よろしくお願いします。さて、今回のお話ですが、世の中には様々な愛のカタチがあると思います。このお話の彼女は、自分のことを乙女と表現していましたが、彼女の中に、真面目に生きるということに対し、憧れがあったようにも感じます。皆さんの目にはどのように写ったのでしょうか……。では、失礼します。ここまで読んでくださりありがとうございます。貴方にとって幸せな日になりますように。

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