交渉
代理人たちは何事もなく神殿に着いた。その中にはカレードマスターや情報を流した男の姿もある。
制圧が始まれば視界の左上に制圧ゲージが表示されるが、今は制圧ゲージの姿は見えない。
情報はガセだったんじゃないかと怪しむ代理人たちが出始め、疑われた男は動揺している。
「皆、落ち着いて。まだ神殿の中に入っていない。嘘が動画を考えるのは神殿の中を確かめてみてからでいいんじゃないかな」
カレードマスターの一言で代理人の動きは統率される。助けられた側の男は不安そうにしているのが逆に目立つ程だ。
そんな不気味な空気の中、代理人たちは神殿に入っていく。
全員が神殿に入ると、扉はゆっくりと閉まった。前を気にする代理人たちはその事に気付くことはなかった。
夜のせいで薄暗い神殿を、コアルームと呼ばれる制圧をする為の場所にゆっくり進んでいく。
そんな時の事だった。
〈制圧が始まりました!カウントダウンが表示されます〉
〈残り時間30:00〉
〈残り時間29:59〉
〈残り時間29:58〉
しかし、代理人を驚かせるのはそれだけではなかった。
部屋の隅からキラキラと光り輝く中性的な顔が現れたのだ。
・・・・・・
ふぅ、まずは上手くいったようだね。
中々罪人を説得するのは骨が折れたが、強力な戦力になる。
"彼"からカレードマスターには気を付けろとメールが来たが、もう時間もないし、何とかなるように祈るしかない。
「皆さんこんばんは。パーティを中断してここまで来たのでしょう?今から帰ってパーティを続けてもいいですよ?」
「おい、装備を上げた恩を忘れたのか!」
「ここまで来てお疲れでしょうし、話をしましょうか。お互いにメリットのある話です」
「無視してんじゃねえ!」
「うるさいなぁ、外野は黙っててくださいよ」
いいことを思いついちゃった。右手を銃の形にしてっと。
「バン」
「ぐはっ」
これでうるさいやつもいなくなった。楽しくおしゃべりできるね。
「カレードマスターさーん!あなたが代表でしょう?話しましょうよー」
「分かったよ。だけど、これ以上僕の仲間を傷付けるのはやめてくれるかな」
「なんであなたがお願いしてるんですか?立場分かってます?」
本当は見せる気はなかったけど、しょうがない。
指を鳴らすと、神殿の明かりが光った。それと同時に今まで闇に隠されていた姿が浮き出てくる。
弓、杖、武器を持った罪人が代理人を囲んでいつでも攻撃できる体勢で構えている。
「これで分かってくれました?…うん、じゃあ話をしましょう。僕は制圧を見逃してもらいたい。そうすればあなたの言うとおり、手出しはしませんよ」
「見逃すのはいいさ。後で取り返すのはいいんだろう?」
「できるのならしていいですよ。それと、それだけじゃ足りないと思って特別なものを考えてきたんです。何が喜んで貰えるかなって」
「聞きたくないな…。それはなんなんだい?」
「よくぞ聞いてくれました。それは、スキルに関する情報でーす。それだけで状況を一変させると言われるあのスキルですよー。どう?聞きたいでしょう?」
「な……!?ありえない!見逃すだけでそんなうまい話があるわけが無いだろう!」
「そんなこと言うなら条件を追加しましょうか。それなら信じてくれるんでしょう?」
「あぁ。無償の善意ほど怖いものはないからね」
「確か、丘の教会に行ったグループがいますよね?それが帰ってきたら殺し尽くしてください。生き残った方にスキルを教えてあげますよ」
「……なにを、何を言っているんだい、君は。同じ人間だろう?そんな酷いことがどうやったら思い付くんだ!?なんの意味がある!?」
「意味?意味なんてないですよ。ばからしー。それを見るのが楽しいんです。一生笑えるぐらいに」
「ユト!!!!そんなやつだったと見抜けなかった僕が悪かったところもあるだろう!だが、お前だけは許してはいけない!」
「俺達には今までの絆があるんだ!」
「私たちはここまで色んな苦労を越えて頑張ってきたのよ!」
「じゃあ、これも超える苦労ということで頑張ってみては?」
「この…!!」
「待て!…分かった、やればいいんだろう」
「マスター!?」
「どうして!?」
「正直、エリアの攻略が僕に偏っている状況は良くない。みんなもそう思っているだろう。スキルがあれば、そんな状況を変えてくれるかもしれない。僕だけじゃない、みんなで攻略しなきゃいけないんだよ。…だから、仕方ないんだ…」
拳を握りしめて言うその姿から迷い、怒り、悩み、色んな感情が見える。悩んで悩んでもっと悩め!そして絶望して死ね!
こういうのが欲しかったんだ。
「はは、あははははははははっ!!!」
2000文字近く消えて急いで書き直しました。内容が変になっているかもしれないので気付いたら教えて貰えるとありがたいです。