スライムの強さ
「審査員のマイメだ」
そう言うと、彼女?は口を閉ざした。フードをしていて、中性的なよく分からない声だったから性別は分からない。多分彼女で合っている、と思うんだけど確信が持てない。
「それだけか?もっと話すことがあるんじゃないか?」
「マムウごときが調子に乗ってんじゃねぇよ。いつから勝手に発言出来るほど偉くなったんだ?あ?」
「…」
マイメさんはガン無視した。
審査員は階級が高いんだろう。全く気にしてないように見える。
「…」
あ、今度は馬鹿にしたような沈黙だ。喋ってないのにここまで感情を伝えるなんて…すごい。
「皆、スライム討伐行こうか」
「あの…神殿で加護を受けてからの方がいいんじゃないですか?」
「加護?」
「はい。その日によって効果は違うんですけど、神殿で祈るとステータスを上げてもらえたりするんです。日付が変わると効果は切れますけど」
なんか聞いたことがある気がする。
やれそうなことはやっておくか。
♦
神殿の加護は運動神経が良くなるとかいうなんとも言えないものだった。
皆はステータスが上がったりしていた。運が高いから僕だけ変な加護になったのか?
「ほんとに北の平原って大丈夫なんですか?代理人が居ると思うんですが」
「ユト君は代理人なのに知らないんだね。説明してあげよう。確かに代理人は居るけどね、俺たちにちょっかいを出すほど勇気のあるやつは居ないのさ」
「でも集団で襲ってきたら負ける可能性もありませんか?」
「ここで俺たちを襲う意味があるかい?そんなことをしても、戦争の勝ち負けは何も変わらないのさ」
マムウは説明する時だけ気分が良さそうだな。優越感にでも浸っているのか。
「皆さん!孤立しているスライムを発見しました!」
「どこだ?」
「あそこです!」
アリアさんが指を指した場所には確かにスライムが1体だけ居た。
さすがに最初だからということで僕達は1体のスライムを探していた。調子が良かったら2体のを、という風に決めた。
「よし、マムウとアリアさんは後ろで準備して。ガイゼルさん、僕達はまずスライムの攻撃を見よう」
「分かってる」
「アリアさん、僕は攻撃を受けたら間違いなく死ぬので回復はガイゼルさんを優先してください」
「はい!」
「マムウは、何かしたら分かりますよね?」
「もちろん。ユト君からもらった恩を返すとしますかね」
マムウの言葉だけ薄っぺらい。今に始まったことじゃないけど。
代表だから、という理由だけでリーダーみたいになっているけど、出来ているかな?
とりあえずやってみる。それでダメだったら考える。話はそれからだ。
「ガイゼルさん、スライムの攻撃範囲は10mです」
「ってーと、ここら辺か」
「止ま――」
バゴン!
目の前にスライムから伸びた触手がある。攻撃速度が速すぎて見えなかった?
土がえぐれているし、もし僕の体に当たれば粉々になってしまうだろう。
「危ねぇな、想像より攻撃が速ぇぞ」
「僕は左に行くからガイゼルさんは右に行ってくれますか。触手を同時に何本動かせるのか知りたいです」
「隙があれば攻撃するぜ。無理はすんなよ!」
「ガイゼルさんこそ!」
走りがら触手を見ると、まだ地面に刺さったままうねうね動いていた。攻撃速度は速いけど戻るのは遅いのかもしれない。
ただ、他に触手が動かないとも限らないし今は待とう。
この間に〈優しい火〉とかバトルグローブの準備をしておこう。場合によってはすぐ攻めることになりそうだ。
「制限解除」
腕が機械に覆われたのを確認した。機械は燃えても大丈夫そつだ。
腕だけ前に出してみて反撃できるか試してみよう。
「?」
攻撃が来ないな。
もう少し前に出てみるか。
ガギィン!
「ぐっ!」
鈍い金属の音と、攻撃を防がれてもにょもにょしてる触手が目の前にあるのを見てようやく攻撃されたのを理解した。
ほんとに見えないな、これ。
反撃はどうなるんだろう。触手を再現するなんてバトルグローブができるのか?
「あ、れ」
腕の制御が聞かない。勝手に腕が動いて…。
ふむふむ。後ろに腕を引いて?力を溜めて?一気に前に突き出して?後ろから触手が出てきて!?
「え??」
どっからでてきた?
その触手はそのままスライムに攻撃した。スライムの表面が凹んだような気がしないでもないな。
「ピギャァ!」
声出せたの!?でも声が出たってことはダメージは入った感じか。これ反撃だけでいけるんじゃないか?
…いや、無理だな。さっきの攻撃はまだ最初の触手が戻っていなかったのに始まった。ということは、少なくとも同時に2本は動かせるということだ。
「ガイゼルさん!同時に2本以上は動かせるみたいです!」
「ユト!さっきのはなんだ!?やけに自信があると思ったらすげぇなぁ!俺も負けてられねぇ!!」
嫌な予感しかしない。今にも突撃したいとうずうずしてるんじゃないかなあれは。




