探索
ステータスを振り終えた僕は街の探索をすることにしたのだが、現在途方に暮れていた。
とりあえず代理人側の街に来たんだけど、皆死んだような顔で笑いながら走り回っているのを見ると、さすがに話しかけるのを躊躇う。
何とか話しかけやすそうな人を探していると、紳士のような落ち着いた感じの人を見つけた。あの人なら話しやすそうだ。
「すみませーん、さっき始めたばかりなので色々教えてくれませんか?」
「ん、あぁ初心者ですか。チュートリアルは受けましたか?」
「はい。今大変なことになっていると聞きました」
「今も変わらずチュートリアルは説明が少ないですね。うん、私がこの街を案内しましょう。と言っても、西側だけですがね」
「ありがとうございます。やっぱり東側は、入れない感じなんですか?」
「えぇ、罪人と代理人の関係はかなり厳しいですからね」
そう呟いた紳士の顔は悲しそうに見える。全てのプレイヤーが罪人を敵視している訳では無いのか。
「さて、まずはこの街の施設に行きましょうか。と言っても、大したものはないですが」
「はい!」
街は広い上に人も多いので進みづらかったが、10分かけて大きな建物に着くことが出来た。
看板には代理人ギルドと書いてある。
「ここが代理人ギルドです。まずは中に入ってみましょう」
扉を開けると、賑やかな声と忙しそうにしながらも笑っている人達が視界に入り込んできた。
酒場のようなテーブル席と雰囲気のあるロウソクも、プレイヤーのせいで雰囲気ぶち壊しだ。
「多くの代理人はいつもここに集まっています」
「ここでは何が出来るんですか?」
「マップを見ることが出来ます。今あなたの視界の右上辺りにミニマップが見えると思いますが、それは自分が行った場所しか分かりません。しかし、ここのマップはギルドに登録した全ての代理人の情報がまとめられています」
「登録ってどうすれば出来るんですか?」
「ゲームを始めた瞬間から登録されていますので、なにかする必要はありませんよ」
「え、そうなんですか?便利ですね」
「かなりの人数がいますので、手動となると大変だったのではないでしょうか。そうだ、折角なのでマップを見ていきませんか?面白いものが見れますよ」
そう言われて、空中に浮かんでいるマップに意識を集中させた。このゲームは脳で考えることが重要なのだろう。
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フェイスカルマ・・・探索率53%
MVP・・・カレードマスター
北の平原・・・探索率100%
MVP・・・カレードマスター
西の森林・・・探索率1%
MVP・・・無し
南の砂漠・・・探索率1%
MVP・・・無し
東の荒野・・・探索率1%
MVP・・・無し
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MVPがカレードマスターで埋まっているようだ。一体何者なんだカレードマスター…。
「1年経って、ようやく1つのエリアが完全に探索されたんです。あなたはタイミングが良い。今日の夜、ここで祭りがありますのであなたも来てみたらどうですか?」
フェイスカルマというのはこの街の名前らしい。探索率が53%なのは罪人が占領しているからか。
いや、逆か。罪人の街を代理人が占領しているのか。
カレードマスターを1回見てみたいし、祭りに参加しよう。誰でも歓迎らしいし。
「あの、マップ以外に出来ることないんですか?便利なのは確かなんですけど、こんな大きな建物なのにそれだけって…」
「チュートリアルで聞きませんでしたか?罪人から奪ったので、機能が使えないんですよ」
「他の施設って何ができるんですか?」
「神殿では1日1回お祈りをすることでその日だけのバフがランダムに貰えます。かなり便利なので使うことをおすすめしますよ。他には丘の教会だと、お布施をすることでステータスポイントが貰えます」
神殿は街の中央に、丘の教会は最初にチュートリアルをした場所らしい。代理人が奪った施設はこれだけだが、罪人は倍以上の施設を隠している可能性があるとか。
「色々教えて下さりありがとうございました」
「満足して頂けたようで何よりです。では私はこれにて失礼します」
ミニマップに、代理人ギルド、神殿、丘の教会をマークしておく。これで迷うことは無い、はず。
まだ4時なので夜まで暇になってしまった。パーティの準備を手伝えば、何か情報が貰えるかもしれないな。
・・・・・・
なんな凄いことになった。片っ端から手伝いまくった結果、色々貰ったんだけど…。
途中からどうせなら全種類揃えさせようみたいな流れになっていたのは否めない。しかし、本当に集まるとは…。
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特殊条件達成❨祝福シリーズをコンプリートする❩
全ての期待を背負って…
称号〈女神に祝福されし者〉解放!!
職業〈信仰者〉解放!!
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6/9
神殿の場所を代理人ギルドの裏から街の中央に修正。