ユトの変化
「えっ」
「うーん、ユト君が思い切り加減された上で死んでたのを見てたんだけどさ」
「その言い方は語弊があるというかなんというか…」
「あれすごい面白かったよ。本当、あんなに芸術的な吹っ飛び方は見たことないね」
「…あの、なんで助けて貰えないんでしょうか。正直、戦う力がない上にテスペナルティで弱体化している僕ではどうしようもありません」
「あー、確か女神様の祝福がかかってる装備を盗られちゃったんだっけ?」
「…はい」
「じゃあ教会に言えば応援ぐらい寄越してくれると思うよー。それに、他にも助けてくれる人は居る。そうでしょ?」
「え?いや、居ないですけど…」
代理人は敵対しまくってるし、罪人とは関わりが薄いし、助けてくれそうな人なんて…。
「ユト君は今まで何をしてたんだっけ?」
「今まで、何を……あ」
「ふふ、気付いたみたいだね」
「いや、でもあの人たちは戦う感じじゃないと思うんですけど…」
「少なくともユト君の百倍は強いよ」
「ゑ」
「確かにユト君の〈祈り〉は強いけどね。それ以外だったら彼らとは比べ物にならないほど弱いよ」
えぇ…。罪人ってそんなステータス高いの?そりゃ代理人も負けるわ。
こういう所でもカレードマスターの異質性が出るのやばいなあいつ。
「ユト君はちゃんとクエストを真面目にやっていたし、彼らもそれを分かってる。だから、少しは頼ってもいいんじゃないかな」
いつになく真面目だ。いつものカナミさんはもっとこう、だらけてるというか不真面目な感じなんだけど。
こういう所をライミ様は評価しているのかな。
だけど、ちょっと足りないな。
「確かに、クエストで関わった人たちを頼るという考えは参考になりました。その上で言わせてください」
「ん?」
「カナミさん、僕を助けてください!」
「っな!?さっき言ったばかりだよね!?ユト君には彼らが居るんだから大丈夫だって!…ははーん、さては寂しいんだな?私もこっそり見守ってるから安心しなって!誰も死なせないからさ」
「僕は、カナミさんのことを信頼しているつもりです。だから、1人にしたくはないです」
「1人って、そういう仕事なんだから気にしないでよ。別に昔から慣れてるから。それにユト君が早く終わらせてくれれば私だって休めるよ。ね?」
「ならカナミさんが手伝ってくれれば早く終わりますよね?」
「そうじゃなくてっ…!!ユト君はもうみんなから認められてる!階級だって上がれるし、新しい出会いだってある!そこに私が入ったら邪魔になるじゃない!私は…っ!!!」
「邪魔じゃないです!カナミさんは、邪魔じゃないです!!むしろ、居てくれないと困ります!!だから、助けてください!!僕はまだ、こんなにも弱いんですから!」
「ぅ……分かった、分かったから!!だからまず顔を離して!近いって!」
勢い余って顔が近づいていたらしい。少し恥ずかしくなり、急いで顔を話そうとしたら上手くいかずに転んでしまった。
「痛っ」
「大丈夫!?怪我はない!?」
「…大丈夫です、大した傷もないので」
手が差し出され、それを掴んで立ち上がろうとして思い止まる。
「ユト君?」
「カナミさん」
「なに?」
「来て、くれるんですよね?」
「それは…」
僕が手を掴んでいるから逃げることは出来ないぞ。そんな半端な先延ばしは望んでない。
僕の超高速ウインクが効いたのか、渋々頷いてくれた。
「…はぁ、全く、しょうがないわね」
その答えに満足したので、座ったままだった体を立たせる。手の感触が、カナミさんがそこにいることを確かに示している。
「あ」
「どうしたんですか?」
「いやぁ、私急用を思い出しちゃって…」
「逃がしませんよ!」
「一緒には行くって!ただ今はちょっと用事があるから…」
なんか声が聞こえる気がする。空から響くような感じだ。なんて言っているかまでは分からないけど、何故か酷く聞き覚えがある気がする。
「げっ」
さっきまであれほど逃げようとしてたカナミさんが急に抵抗を辞めた。もう間に合わないと悟ったんだろう。
僕も、空から降ってくる人を目視した瞬間に全てを悟った。
「ユ〜〜〜ト〜〜〜〜!!」
ズドォンと豪快に着地をしたのは、ライミ様だった。
「ユト、大丈夫か!何があった!?」
「えっと大丈夫ですけど……なんでライミ様がここに…?」
「ユト君が心配で来ちゃったんだよね?ライミ?」
「な、そうではない!ただ、急にユトが死んだから何事かと思っただけだ!」
「だからって、まだ仕事中なのにここまで来るなんて、ねぇ?」
「えぇい、うるさい!それよりラナミこそどうなのだ!何故ユトと手を繋いでいる!?」
あっ、カナミさんを逃がさないようにガッチリと掴んだままだった。悪いことをした訳でもないのに、罪悪感がやってくる…。
「いや、これは…………そう!さっきユト君が転んだから助けてあげただけだから!その後ユト君がガッチリ掴んできて離せなかっただけだから!」
「なんだその間は!そもそもユトの貧弱な力なんか直ぐに離せるだろう!結局わざと離さなかったんじゃないか!!」
「いや、それは、そのー…。あ、用事あるからハヤクイカナイト!ユト君、ライミ、またね!あ、ユト君も次から人名で呼んでいいから!!」
脱兎のごとく手を離して走り去っていった。やっぱり離せたんだ…。どれだけ僕の筋力は弱いんだよ。悲しくなってくる。
だけど、それよりも今は、怒りで顔が真っ赤になってるライミ様の相手をしなきゃいけないのが怖い。
「ラ〜〜〜〜ナ〜〜〜〜ミ〜〜〜〜!!!」
2章は長くなりそうです。気軽にポンポン話を付け足すせいで、話が進まないのですが文字数を増やした方がいいでしょうか。




