チュートリアル
目を開けると、僕は神殿の中に居た。かなり丁寧に掃除されているのかゲーム的なものなのかとてもピカピカしている。
景色を眺めていると、突然声が聞こえた。
〖新たな子よ、あなたは生まれたばかりで何一つ分からないことでしょう〗
〖施しを受けたいのなら私に従いなさい〗
〖なに、すぐに終わります〗
〈チュートリアルを受けますか?Yes/No〉
メサイア・オンラインについては多少調べてはある。なので、このチュートリアルを飛ばしてもいい、という訳では無い。
このゲーム、チュートリアルをクリアすると5レベル分のステータスポイントが貰えるというのだ。
つまり、このチュートリアルをクリアしている人としていない人で5レベルの差が出来るということだ。
僕は当然Yesを選んだ。頭で考えるだけで認識されるなんて便利な時代になったもんだなぁ。
〖素直なことはいい事です〗
〖まずはその教会を出なさい〗
〖真っ直ぐ進めば出ることが出来るでしょう〗
神殿じゃなくて教会だったのか。だけど今はそれよりも言いたいことがある。
「一言一言区切って言うのやめて欲しいんですが。聞きづらくてイライラします」
脳に直接喋られてる感じで非常に不快だ。
〖私に向かって正直に物を言う人は珍しいですね。まぁいいでしょう、さっさと教会を出なさい〗
なんかちょっとマシになったか?それはそれとして、いつまでも教会に居てもしょうがないので声に従って教会を出た。
初めて外の景色を見た僕は、困惑した。
「え?なんだこれ…」
プレイヤーがなんかしら影響を与えている所じゃない。街が分裂しているのだ。ちょうど線が引かれているみたいに、街の様子がガラリと変わっている。
教会はかなり上の方にあるから街の様子がよく分かる。
これははっきりいって異常だ。
〖これがこの街の現状です。罪人達と代理人は非常に仲が悪く、戦争手前のような状態です。…なんでこんなことに〗
えぇ…。ちなみに罪人と言われているのが一般的に言うとNPC、つまりAIだ。と言っても人間より頭がいいと言われているものもあり、罪人もその一部だ。
代理人が僕達プレイヤーのことだ。ネットでは罪人クソという言葉が多かったが、まさかここまでとは思わなかった。
〖とりあえず話を進めますね。メサイア・オンラインは、基本的に魔物の討伐をして世界の解放を目指すゲームです〗
ゲームって言っちゃって大丈夫なのだろうか。まぁいいのだろう。多分。
〖そして、その手助けとなるのが罪人達の仕事なのですが、ご覧の通り非常に仲が悪く、都市の機能は全くと言っていいほど使われておりません〗
「プレイヤーは今までどうやってきたのですか?」
〖彼らは、都市の施設を奪って無理やり使っている状態です。機能を知らないせいで少ししか使えていない上に、一部の人は本来の使い方をしていないようです〗
〖罪人達に聞けば分かるのですが、彼らも奪われて今更使い方を教えろなんて言われても無理でしょう。その結果、代理人達は未だに最初の街で冒険をしています。何故スライムに苦戦するのか…〗
「うわぁ…辞める人とか居ないんですか?」
〖それがあまりいないのです。彼らはこのゲームを超高難易度終末系だと勘違いしていまして、やる気はむしろ高い方なのです。実際は縛りプレイに縛りプレイを重ねたようなものですがね〗
「チュートリアルでそれだけ教えて貰えるなら何とかしようと思う人もいるんじゃないんですか?」
〖最初は頑張る人も居ます。ただ、罪人達がそう簡単に心を許してくれず、結局諦めてしまうのです。だからこそ、あなたには頑張って欲しいのです〗
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❨チュートリアルを聞く❩ 達成
基本報酬
ステータスポイント500
特殊条件達成❨意思を継ぐ❩
あなたは託されてしまった…
祝福の指輪が報酬に追加
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優斗「チュートリアルの人が施設の機能とか教えてあげればいいのでは?」
チュートリアルの人〖罪人達が勝手に作ったものなので私が知るわけないじゃないですかー〗