裏切り
丘の教会側にも裏切りの誘いを出す。
裏切りをするつもりはなかったが、先に裏切られたことで殺意が湧き殺し始める。
〈制圧が始まりました!カウントダウンが表示されます〉
〈残り時間30:00〉
〈残り時間29:59〉
〈残り時間29:58〉
「制圧が始まったぞ!コアルームを確認しろ!」
「代表!コアルームに異常なし!神殿だと思われます!」
「よし、神殿に向かうぞ!」
カレードマスターが居なくても代理人たちは団体行動を取れていた。カレードマスターが居ない時用に代表が決められていたからだ。
代表の指示のおかげで代理人たちは統率の取れた動きを取れている。
その影響がなければ、突然の事態に大混乱が起きたかもしれない。
「はぁい代理人の皆さん、今宵はいい月が見えますね」
「お前は……死生笑い!姿が見えなかったが、我々を裏切ったのか!」
「いいえ、裏切ってなどいませんわ。私はいつだって代理人の為に行動していますもの。これまでもそうでしたでしょう?」
「ならどうしてここにいる?パーティの途中に居なかったのは偶然か?」
「あら、言い方が悪かったですわね。代理人の為に罪人に協力しているのですわ」
「…ならそれを説明しろ。今までの死生笑いの行動は決して褒められたものではなかったが、戦いに貢献してきたのも事実だ。話は聞こう」
「スキル…と言えば分かりますかしら?」
「何?」
「罪人に協力すればスキルの情報を教えてくださるんです。スキルを習得できる可能性すらありますわね」
「……それはお前だけか?それとも我々もか?」
「あなたがたにもチャンスはありますわ。ただし、無条件でという訳にはいかないのも必然」
「我々は何をすればいい」
「カレードマスター率いる神殿組を1人残らず殲滅させる」
「は?」
「それが出来なければあなたがたに可能性はありませんわ。そして、今も刻一刻と時間が過ぎていっています。迷っているほどチャンスは遠のきますわよ?」
ここに来て初めて代理人達の動きが乱れた。スキルを取りたい者と、裏切りたくない者に別れたのだ。
「我々はそんなことはしない!たとえ今スキルを手に入れられなくても、罪人がその情報を持っているのであれば吐き出させればいい!」
賛同の声が上がる。スキルを取りたい者も和を乱す程ではなかったようで、団結し始めた。
「…それなら仕方ないですわ。私とて無理強いはしませんもの。ですが、急いだ方がいいことには変わりませんことをお忘れなく」
そう言って女は走ってどこかに消えてしまった。
少しばかり止まってしまったものの、代表が動きをまとめることで直ぐに動き出した。
神殿に着くのも時間の問題だろう。
〈残り時間24:23〉
〈残り時間24:22〉
〈残り時間24:21〉
10分で神殿に着いた代理人一行。
扉が開いていることに疑問を感じながらも焦りにかき消され進んでいく。
代表は開けた空間に出て違和感を覚えた。
「静かだ……その上戦闘の跡もない。一体どういうことだ?」
その言葉に他の代理人も疑問を持ったのか、周りをキョロキョロと見回し始める。
だが、それは遅かった。もっと早く警戒していれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
「ぐあぁぁぁ!な、マスター!?なんで…」
後ろからの奇襲で10人やられた。残り50人。
やられた、そう思った代表は直ぐに呼びかける。
「敵襲!敵襲!目標はマスター含む神殿組!裏切られた!!」
そうこうしているうちに3人やられた。
闇で見えづらく、どこから奇襲されているのかすら分からない。
状況を変えるべく代表は口を開く。
「陣形!円陣を組め!盾を構えろー!」
代表の一言で直ぐに整えられる代理人たちはまさに精鋭と言えるだろう。
代理人の数を減らされていたが、それでも数の有利はこちらの上。逆転の可能性はあると考えた代表はすぐに次の一手を出す。
「全員、武器を投げろ!どこでもいいから怪しいところを狙え!」
それはさしずめ武器の嵐と言ったところか。宙を舞う武器の群れに怯んだのか奇襲はやんだが、ジリ貧なのも事実。
武器が尽きてしまえばまた奇襲攻撃の始まりだ。
相手の数は40も居ない。どうにかしておびき出せればそこから有利を取れるはずだ。
「マスター!あなたは我々を裏切るのですか!1年間苦楽を共にした仲間を!罪人に良いように言われて裏切るのですか!」
そういう代表も、隙あらば神殿組を全滅させる気だ。最初から救いはなかったのかもしれない。
この戦い、どちらかが全滅するか、タイムリミットが来るか。
どちらにしても、制圧を止めることはもう出来ないだろう。
〈残り時間7:15〉
〈残り時間7:14〉
〈残り時間7:13〉