きっかけ
風呂から電流が走り脳内にまで伝わりました。毎度の如く不定期更新からのふらっと消えることでしょう。 ですがいずれバージョン2チョコクリームになって帰ってきますので、どうかよろしくお願いします。
ガヤガヤと騒がしい都市の風景。
通る人々は多様にして皆忙しそうに歩いている。もはやジョギングにも見えるほどの速さで歩く彼らは何を目指しているのだろうか。
彼らの目線の先には、ビルに映る巨大な広告があった。10年前までは馴染みのなかったVRMMOと呼ばれるゲームである。
・・・・・・
技術革新により効率化が進んだ今、人は娯楽に飢えるようになった。仕事は機械のおかげで楽になった代わりに無能でも働けるようになり、ストレス社会が形成されたのだ。
どこもかしこも喧嘩ばかり。彼らの心は限界だったのだ。
そんな中、社員が笑顔で有名なスマイル会社がVRMMOゲームの発売を発表したのだ。紹介映像が公開されると、予約が大殺到したという。
理由はいくつかあるだろう。例えば、幻想的な美しい風景。心躍る冒険。だが、一番の理由はやはり広大な世界だろう。
近年人口が増えてきている。それにより都市部の人々は常に落ち着きがなく混んでいる光景が見られる。
そんな鬱陶しい社会から抜け出せるのなら、そう期待した人も多いはずだ。
そして、そのゲームが発売されてから1年。人々の期待を優に超えるそのゲーム、メサイア・オンラインは今も注文に発注が追いつかないのだとか。
「だからメサイアはすげぇんだよ!優斗なら多分いけるって!お前日頃の行いめちゃくちゃいいじゃんかよ!」
そう言った彼は、少し息切れしていた。それも仕方ないことだろう。先程のプレゼンはかなりのものだった。
いつもと違う芝居のような喋り方に間、彼は声優になれるのではないだろうか。
「あはは…。いくらなんでも、そんな人気のゲームの応募が当たるとは思えないよ」
「優斗ならやってくれるって期待があるんだ。これはクラスの総意だぜ」
彼が何故ここまで応募を勧めてくるのか。
それは、この応募の特殊性によるものだ。スマイル社は、応募で当たった人物にメサイア本体と、優先購入券5枚がプレゼントされるのだ。
さっき彼が予約が殺到していると言った通り、通常購入する場合はかなり大変だ。値段は30000円と安く、絶対に赤字だろうと言いたくなるものだ。
優先購入券は、予約を無視して買えるもので、ネットで取引されているのを見かけたことがある。スマイル社は今のところ黙認しているようだ。
「うーん、そこまで言うなら応募してみるよ。あんまりゲームは興味無いんだけどな」
「今の時代ゲームに興味無いって、何が楽しみで生きてんだよ?絶対楽しいから、な?」
「分かったってば。えっと、この1周年記念特別感謝キャンペーンってのを押せばいいの?」
僕は最近発売されたaPhone30を操作しながら彼に聞く。
「そうそう。後は住所とか登録して置けばいいから、家で印鑑の準備をしてな」
「うん、ありがとう」
「何、気にすんなって。俺ら友達だろ?」
…?
「うん」
俺はお前の名前を知らないけどな。
「優斗?お前…」
おっと、僕は優しい高校2年生だった。危ない危ない。せっかくの計画か台無しになるところだったじゃないか。
「え?どうかした?」
「いや、気の所為だったみたいだ。すまん」
いいんだ、友達だからね。そういう馬鹿なところ、扱いやすくて好きだよ。
・・・・・・
1ヶ月が経ち、応募の結果を確認してみると本当に当たっていた。
優先購入券を配ったり、届いた機械の組み立てだったりでなんやかんや1週間かかった。
時間が経つのを早く感じた。つまり、僕はワクワクしているということだ。今までゲームに欠片も興味はなかったけど、この機会に少し調べてみるのもいいかもしれない。
だが、とりあえずはこのメサイア・オンラインとやらをやってみようじゃないか。
ヘッドホンのような機械を頭に付けて、パスワードを呟く。
「Let's play」
―――――――――
ログインパスワードを認識
登録者と生体一致
健康を確認
ログイン開始します
Enjoy your trip
―――――――――