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訳アリッ!ハイスクチルドレン  作者: MACKEY
第一章
7/7

原動力


自転車を全力で漕いで鉄雄に追い付こうとする。鉄雄はまるでかわりにプロの短距離選手が走るっているのかってぐらいのスピードで走り回り、たまに後ろをチラッと見て走ってることからもしかしたら俺を撒こうとしているのかもしれない。そして俺のほうは最初から全力で漕いでいたせいか、走ってる内にどんどん距離が離れていってしまう。何で自転車よりも走るほうが早いんだよ。


「クソッ!おかしいだろ!」


 次第に足が重くなり、漕ぐことを意識しようとすると自転車の漕ぎ方を忘れかける。

 

 まずい、このままだと鉄雄に逃げられてしまう。鉄雄のあの様子。ひどく顔色が悪く、ワイシャツはボロボロになっていて所々破れていて、あんな様子の鉄雄は初めてだった。そんなんだから、なんだかこのまま逃がしてしまったら取り返しのつかないことになってしまう気がしてならないのだ。


 鉄雄が角を曲がり、俺もそれに続いて角を曲がる。この路地は初めて行くので帰りしっかり帰れるか心配だが今はそんなこと考えている暇はないし必要ない。


「あ、あれって!」


 鉄雄が見えるその先にはなんと一つの塀が見えた。。その周りに曲がり角はなく行き止まりになっていて、それが分かっていないのか鉄雄は激突するような勢いで走る。このまま行ったら間違いなく激突するのだが大丈夫なのか。


「よし、追い付いた………!」


 何はともあれ上手く鉄雄を追い詰めることに成功しそうだ。


 ………と、思ってた矢先のことだった。


「—————————は?」


 見間違いなのだろうか。鉄雄は塀を軽々と飛び越えその先にある家の屋根に飛び移った。なんという脚力なんだろう。


「って、感心してるところじゃないだろ!はあああああああ?」


 塀の前で立ち止まり、鉄雄のいる上のほうを見上げる。よし、こっから塀に上って………。いやいやいや、そんなパルクールできるわけないだろ!あれか、鉄雄は俺が知らなかっただけで運動神経めちゃよかったってことなのか。



 とか無駄なこと考えている隙にとうとう鉄雄の姿がは見えなくなってしまった。俺は軽く舌打ちをして、もう一度自転車を漕いで鉄雄の家に向かった。








「なにぃ~お兄ちゃんがヘイト飛び越してピョンピョンと飛び回っていった?そんなことあるわけないじゃない。アンタ素直に逃げられたっていえないの?」


「え、じゃあ鉄雄は別に何かやっていたわけじゃないと。」


「ええ。お兄ちゃんは私が来た時から今までスポーツは基本的に野球しかしてなかったわ。そんなパルクールじみたことなんてしたこともなかったはずよ?」


 じゃあ、俺の見たあの動きはなんだったのだろうか。いや、そもそもあれは鉄雄ではない誰かだったのか?いやでもあれは確かに—————————。


「でもあれは間違いなくお兄ちゃんだったわ。影のせいで顔はくっきりしなかったけど匂いもお兄ちゃんの匂いだったから間違いないわ。」


 体格と俺たちを呼ぶ声からして鉄雄本人のはずなんだ。


「というか匂いって。そんな匂ってたかアイツ。」


「ま、まあまあ、お兄ちゃん汗臭いから。ハハハハハ。」


 なんだろう、誤魔化された気がする。が、今はそれどころではない。鉄雄がどこかへ行ってしまったのならば追いかけてみよう。俺が見たのは絶対に鉄雄だ。あんなボロボロで苦しそうな様子を見る限り何かあったに違いない。


「とりあえず、俺は鉄雄の向かっていた方向に向かってみるからもし鉄雄が帰ってきたら連絡してくれ!」


 そう言い残して俺はペダルを踏んだ。


「向かうって、何でアンタそんなに必死なのよ。」


「なんでって、そりゃあ心配だからっていう理由じゃダメか?」


 彼女に向かってそう言い残し、俺はペダルを漕ぎ始めた。





 恐らく優芽ちゃんは鉄雄のことを心配はしていないわけではないと思う。兄のことだから何か巻き込まれるはずはないと、ちゃんと帰ってくるんだろうと、ある意味信頼しているんだと思う。。正直俺は彼のことを信頼していないわけではない。が、あの異常な動きからして何かあったのではないかと思ってしまったのだ。これが信頼できていないというのかもしれないし、フィクションの見過ぎなのかもしれない。でも確かなのは―――――。


『美空、優芽………。』


 あの時のアイツの顔は、誰かに助けを求めているような顔で、今俺が動いている理由そのものだった。


 



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