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訳アリッ!ハイスクチルドレン  作者: MACKEY
第一章
3/7

スクールデイ2

 

 あの後、特に何事もなく昼休みに突入した(二度寝の影響か、授業が退屈だったのか、はたまたどっちもかはわからないが、一回意識が飛びそうになったけど)。


「あ、弁当忘れた。」


 まさか二度寝のツケがここにまで来るとは。学食に行こうにも財布も忘れているときた。鉄雄は昼休みに入ると学食に走っていったし、楓は友達と弁当食べ始めようとしてるから声かけにくいし………。


「…帰ったら何か食べるか。」


 普通だったら他のクラスメイトに何か奢れだのお金を貸してくれだの言うのかもしれないが、仲がそこまでいいわけでもないのでやめにした。






『その代わりと言っちゃなんだが………。』


 暇をつぶすために適当に自分の記憶をほじっていた時、朝、先生に頼みごとをされていたのを思い出した。頼み事といってもというのも明日授業で使うらしい教材がクラス全員分図書室にあるから取ってきて欲しいということだった。本当は放課後に取りに行く予定だったのだが、やることもないし、このまま時間をつぶしてるだけだと時間を無駄にする感じがするのが嫌だったので今のうちにやってしまおうと今やってしまおうという結論になった。


 図書室に着き、ドアを開ける。廊下内は教室前などで生徒達が会話しているからかかなり騒がしかったのだが、図書室に入った途端その音がシャットアウトされた。廊下(そと)とは偉い違いで、聞こえるのは換気扇の音ぐらいだ。俺は教材を貰いに貸し出しカウンターへ向かったので換気扇+足音が耳に入った。

 どうでもいいけど、足音の『カコッカコッ』って音いいよね。


「あれっ?今日は珍しく人がかなり来る思ったらなんだ、君か。」


 カウンターまで来るとそこには小学六年生のような見た目をした少女が本を読みつつ優雅に紅茶を飲

んでいた。


「俺も人なんですけどね。ていうか、いくら人があんまり来ないからって満喫しすぎでしょ。」


「言っておくが、別に遊んでいるわけではないぞ?こうやって知識を蓄えているのさ。知識は人間の最高の宝。いくらあっても損をしないからね。」


「読書は最高の娯楽って言ってた人がよくもまあ。」


 気になったので彼女の読んでいる本を少し見てみると辞書のような分厚さで表紙には何語か分からない文字が連なっていて、とても読めそうにはなかった。


「おお~っ?君もこの本がきになるのかい?」


俺の本に対する視線に気づいたのか自分の宗本に抱きしめニヤニヤしながらこっちを見てきた。見た目はまるで宝物を是が非でも渡したくない子供みたいだ。


…なんか皆今日ニヤニヤしすぎじゃない?


「気になりますけど、俺には読めませんし、読めたとしてもどうせ難しい本なんでしょう?」


「それはわからないよ。たとえ難しい内容だとしても君が興味を持ったら難しいは楽しいに変換されるのさ。君にだって好きなものの一つや二つはあるだろう?」


…好きなもの、か。


「おっと、そういえば要件を聞いてなかったね。」


「ああ、実は―」


「ちょっといいかしら?」


 今度は後ろから声をかけられた。それなりに整っている容姿にピンクの一つ結び、制服のリボンの色が俺ネクタイと同じ赤なので、同学年だということがわかった。だが、自学年の顔はある程度認知しているつもりだったのだが、この人は初めて見た。


「えっと…どうかされました?」


「どうかしなかったら普通話しかけないわよ。…探してる本があるんだけど。」


「探し物か、なら私の後輩に任せてくれたまえ!」


え。


「今って先輩の当番なんじゃないんですか?」


「まあまあ、せっかくだし一仕事してくれよ~。君、大体の本の場所はわかるんだろ?私には多すぎてどれがどれだか………。検索用のパソコンが修理から戻ってこれば私でもわかるんだけどね☆」


 じゃあ図書室の奥の外国の本スペースの一番上にあるその本は適当に持ってきたんですか?というツッコミは置いておいて、このままだとあの人の案件が解決されなさそうだしやってあげよう。場所ならこたえられるし。

「わかりました。どんな本をお探しなんですか?」


 まあ、見た目からして最近ドラマ化した原作の本とかそのあたりを探しに来ているのだろう。俺も気になったら原作を読むからなあ。




「ふーん。あなた、本の場所がどこにあるのかホントにわかるのね。」


 彼女が探していたのは予想通り、とある恋愛ドラマの原作だった。場所を見つけると彼女は一瞬笑みを見せ、そのスペースから何冊か取り出していく。


「一度見たものは記憶に残るんだ。だから、本の整理をしてたら自然に覚えてた。」


 自慢ではないが、俺は一度見た物は忘れずに記憶に残っていることが多い。例えば、休日に買い出しなんかに行くと『布津森君だ~。』と声をかけられたりすることがある。その時に特に関わりがなかった相手だとしても、記憶内にある映像を思い出して『あ~中学の時の!』と、うまく切り抜けることが可能なのだ。

 とはいっても顔は覚えているが名前は覚えられていないので、正直そんなに使える能力(能力といえるかは分からないが)ではない。あまり声をかけられる状況にもならないし。


「へえ、便利な脳をしてるのね。さぞかし成績優秀なのでしょうね。」


「残念ながら俺が覚えられるのは人の顔や物の形状、見た景色ぐらいだから勉学能力はそこそこだよ。」


 すると彼女はなーんだ、みたいな顔をしながら貸し出しスペースに戻っていた。


「悪かったな、抜けてる脳みそで。」


 俺も俺の要件をすましに貸し出しスペースに戻るのだった。







 








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