日常
少し動けば身体をぶつける洗面所
床に冷やされた裸足で睡眠薬をぶちまける
赤い浴槽沈んだ錆色剃刀ワンシーン、映画のようにはいかない
吐瀉物塗れのシンク、煙草の先を塩水で濡らして
自分のせいじゃないと蹴り飛ばした空き缶アルコール
カーテンに黴の装飾、アンコールもスポットもない奈落
液晶が垂れ流す排泄音に馬の群れ
青い鳥、歩道橋、地上15階の花道、線路に跳んだ鹿
ささくれだらけ爪の割れた手、生命線の上に白い命を吐き出して
切れた電球、水玉の反射ガラス、うねる墨色の前髪の奥、青い顔が僕の目を憎んだ
嫌った顔が、切れた唇で馬鹿だと嗤った
蠅みたいな、蜚蠊みたいな生き方で
頭の上の木偶は目を閉じて僕らを嫌ってすらくれない
桜の代紋、グラフの折れ線3万人弔い合戦
新聞配達の音で針の先の数字を知る
挙手で心臓を売り払えたら椅子に座って眠りたい
大丈夫じゃ足りない 大丈夫じゃ足りない
いらなくないって肩を掴んで揺さぶられながら自分に
言われてみたい