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プロローグ

 慧吾(けいご)は夕食後、ベッドに寝ころがってスマホを開いた。

 

『明日何時に家出る?』の文字がポップアップで出ている。

 明日からうれしい春休みなのだ。新学期になると受験生になる。遊べる春休みのうちにと親友の涼介と遊びに行く約束を、昼間学校でしていた。

 

 涼介の家は歩いて十五分ほどの距離で、小学校の時に仲良くなった。二人とも市内にある普通高校の進学クラスに進んだ。進学クラスはクラスがひとつしかなく三年間同じクラスとなる。


 

 水原慧吾はいわゆるイケメンではない。身長は百七十二センチで痩せ型、りんかくと鼻だけはきれいに整い、清潔感がある。優しい雰囲気の慧吾には、男女を問わず友人が多い。

 親友の新山涼介は、慧吾より少し背が高くなかなかのイケメン、温厚で慧吾と気が合うのも当然なのだ。慧吾は涼介のことを尊敬し、また頼りにしている。


 慧吾には、一つ下の同じ学校の普通科に通う祐吾(ゆうご)という弟がいて、涼介が家に来たときは三人で遊んだりもする。

 

 三年間同じクラスなのはうれしいが、なるくほかの友人とも交流を持つようにしている。

 だから明日は久しぶりに二人きりで遊べるのを、慧吾は楽しみにしていた。

 

『十一時くらいに出るよ。本屋でいいんだよな?』

『おう、それからコンビニで飯買って俺んチな』

 

 近くの本屋で待ち合わせ、ラノベ好きの涼介のオススメを買う。それから昼食を買って、涼介の家に行くつもりでいた。


『わかった』と送信しようとして一瞬目の前が暗くなる。







(ん?? なに?)


 目を擦ろうとしたが何か変だ。擦りにくいし爪が刺さる。

 目を開けて見るとなぜか地面が近い。寝そべってる?? あれ何この手? と持ち上げてみれば、ぬいぐるみのクマの手のようなものがある。

 

 試しにグーパーしてみる。なんで! 感覚が!! 感覚がある!! 焦ってきょろきょろしていると、それまで気づかなかった何かが視界に入り、それと同時に音も耳に入るようになってしまった。


 

「ぎゃああぁぁ!!! ナニコレ! ウソだろ!!」

 

 と叫んだ……つもり。実際には、

 

「きゃうううん!!! きゃん! きゃん!!」



 だったのだ。 

 慧吾はパニックになってジタバタした。身体をうまく動かせない。

 その時、慧吾に気がついた男がこちらを向いた。

 

「仔犬……?」



(仔犬!? 仔犬って何!? いやそれどころじゃない。やだやだ、助けてーーーー!!)



 そう、そこはなぜだか鬱蒼とした山の中で、大勢の武装した騎士っぽい人達が、なぜだか戦闘中だったのだ。黒っぽい巨大なクマみたいなやつと!!

 

 慧吾は怖すぎて、耳を肉球で覆い目を瞑った。目を瞑れば何もなかったことになって、部屋のベッドにいれるはず……。

 しばらく震えていると急な浮遊感に襲われ、恐る恐る目を開ける。

 


(ぎゃっ! 近い! 高い!)


 

 さっきの男が慧吾を抱えて覗き込んでいたのだ。

 

「危ないからこっちに来い」

 

 案外親切なようだ。声からして思ったより若い?兜でよくわからないけど。

 そうして男を見上げると、黒い影に一気に覆われるのが見えた。

 

「チッ」

 

 男は舌打ちをし、慧吾を抱きかかえて庇うように黒い影に背を向けた。


 

(危ない――――)

 

 身体から力が抜けるのを感じた後、白い雪みたいなものが降ってくるのが視界のすみに映り、慧吾はそのまま意識を失ってしまった。

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