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コヤネに降る雨  作者: あむあむ
1/1

プロローグ

「おい、さっきの女はどこ行った!」

ダッダッダッダッ

狭く暗い図書館の中を弓や剣を持った大勢の男たちが彷徨っている。

「...........」

「クソッ 逃げられたか」

「お前らほかを当たるぞ」

ダッダッダッダッ

男たちは武器を本棚や壁にあてながら図書館を出ていった。

「...........いてっ」

誰もいないはずの部屋の中で聞こえた女の声は、

ポルターガイストの仕業ではなかった。

「静かに、まださっきのテロリスト達は近くにいるはずです」

「しばらくはここで隠れていましょう」

口元を服で隠した青年はそう言った。

「んーーんんっんーん」

青年に口元を手で押さえられた女はそう言った。

青年はテロリスト達が戻らないか出入口を見つめていた。

「んーんんんっんっっっぱ!」

手が離れ破裂した水道管のように声が漏れる。

「だから静かに!」

「あなたが突然離すからですよ...」

小声で抵抗をするがすぐに出入口を見つめなおした青年には、

その声は聞こえなかった。

「...........」

静かな図書館の中で赤髪の女研究者、春日こやねは考えた。


(一体、なぜ私は、図書館に隠れているのでしょうか...

この男性は先ほどの武器を持った方々をテロリストと言っていましたが、

それは本当でしょうか...

まずこの方は誰でしょうか...

警備の方々に、このような小柄な方はいらっしゃらなかった気が...

口調は丁寧でしたが、口元を隠した姿はさながらテロリストのような...

助けてくださっている方を悪く言うのは良いことではないですが。

自己紹介もしてくれないのですから、仕方ないでしょう。

まあそんなことしている場合でもないのですが...)


「ふぅ...どうやら彼らはこの階を出たようです」

「春日博士大丈夫ですか、少し手荒に扱ってしましましたが」

大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば、大丈夫ですが

このまま大丈夫と言ってしまうのは惜しい気もします。

「大丈夫ですよ、それよりあなたはどな...」

遮られました、

「すみませんが休憩は挟めません、諸々のことはあとで」

そう言うと私の手をつなぎ出口へと向かいました。

その私たちの姿は駆け落ちするような男女のようにロマンチック、

ではありませんでしたが、

図書館の出口までに三回こけた私に手を差し伸べてくれた姿は、

私の人生の中で一番ロマンチックなシーンとして死の間際再放送されることでしょう。


無事に図書館を出た私達ですが、窓から施設の入り口を見るとテロリストの方々と

思われる方たちが10人はいました。

「上下の階にもテロリストが残っているかもしれません」

「無闇に移動のはやめた方がいいでしょう」

とは言いますが一体どうすれば。


どう脱出しようかと私も考えていると、

口元を隠した方が

「おそらく裏口にも監視がいるでしょう」

「......こうなったらいっそ窓から飛び降りてしまうとか」

と言ってきました。

「たしかに施設の裏側には大きな生垣が覆ってたはずなので、それが

クッションの代わりになるかもしれませんが...」

...とは言ってみますが創作からの知識で実際にクッションになるかはわかりません...


とりあえず施設の裏側の窓へ来てみました、

窓を開けると、強い風が部屋へ入ってきました、

恐る恐る下をのぞくと...


やはり六階からの景色は足がすくみます...

確かに記憶どうり大きな生垣がありましたが、

私の命を預けられるほどには至らない姿でした。

吹き荒ぶ真っ暗闇の中へ投身する勇気はなかなかでませんでません。


口隠した方は半身を乗り上げ少し笑みをこぼし楽しそうにしていました。

私は、彼から少し離れ考えてみました。

そうすると、

やはり彼がテロリストで、私に飛び降りさせて殺そうとしているのでは、

という説が脳内をめぐりだしました。

「そんな怯えた表情をなさらないで良いですよ、春日博士」

彼の顔を見続けると、やはりその説は濃厚ではないかと思えてきます。

「大丈夫ですよ春日博士、だって私いつもここから飛び降りてますから」

.....やっぱり私の考察はまちがえてないのではないでしょうか?

「勇気が出ないのでまた手をつないで一緒にいきますか?」

その「いきますか?」はどの「いきますか」なのでしょうか。


ダンッダンッ

上が騒がしくなってきました。

また戻ってくるかもしれません。

....飛び降りる以外に選択肢はないようです。

「私は先に降りてますよ」

と言って窓へと向かう口隠しさんの手を、

私は思わず握ってしまいました。

「..............」

「...行きますか。」


風に煽られながら空中に彷徨う刹那の中で春日こやねは考える。


一体、なぜ私は、このような状況を甘んじなければならないのでしょうか?



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