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刀光剣影タイタンギア  作者: なろうスパーク
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第35話「復讐鬼-nemesis-」

「………はぁ?」



その一瞬に、アリアは思わずそんな声をあげた。

無理もない。振り下ろしたブラッディマリーのチェーンソーは、ジャッジサイヴァーを切り裂く事なく、突如ジャッジサイヴァーより広がった謎の光に阻まれたのだから。



「ちょ、ちょっと、こいつバリアなんか………うわっ?!」



光が広がり、まるで聖なる力によって退散する悪魔のように、ブラッディマリーは吹き飛ばされる。

その光の中で、聖なる力とは相対するような漆黒のボディを持つジャッジサイヴァーは、半壊したその機体を立ち上がらせる。



「な、何だ?!何が起きて………!」



蓮もまた、突如発生したこの奇跡に対して戸惑い、混乱する。

そんな中、蓮はコックピットのモニターに表示された、その文字が目に入った。



「何だ………エヴォ、システム………?!」



モニターに表示されるのは、今と同じ頃に竜也も目にした「EVO-system(エヴォシステム)」の文字。


そうだ、ガンドラグーンとジャッジサイヴァーは、ほとんどのパーツを共通とする兄弟機。

ジャッジサイヴァーにも、積んであったのだ。

タイタンギアに進化をもたらす、そのシステムを。



ジャッジサイヴァーが光の中で、金縛りにでも逢ったかのように、ピンッと身体を張った。

瞬間、内側から何かが膨れ上がり、突き破るかのように、ジャッジサイヴァーの下から「それ」は現れた。


ガンドラグーンと大半を同じとしていた機械的なボディは、曲線的かつ有機的な姿に。


胸を突き破り、竜か鳥の「顔」を思わせる形状のパーツが現れる。


手は、尖った爪のような形状に。

腰には、スカート状の黒いマントが現れる。


ボディの各部には、翼か刃物を思わせる放熱板のようなパーツが並ぶ。


溶けたウイングのあった背中を突き破り、新しい翼が生えてきた。

より有機的で、それこそ、悪魔を思わせる黒い翼が。


カーボンソードと二丁のビームショットが、溶けるように混ざり合う。

そして分離し、銃身から剣の生えた二丁の「銃剣(ソードガン)」へと姿を変える。


そして、変異したジャッジサイヴァーがそれを両手に握ると同時に、頭部のバイザーが開いて中から血のように赤い瞳が現れる。



「な、何よ………進化でもしたっていうの………?!」



光が収まった後、その姿を前に驚愕し、困惑するアリア。

単に見た目の変化を見た上での感想であったが、その考えは間違ってはいない。


そうだ、ジャッジサイヴァーは「進化」したのだ。

ガンドラグーンが、サヴァイブガンドラグーンへと進化したように。

機体に内蔵されたエヴォシステムによって、この状況を打破できる程の強さを持った、新しい姿に。



「こ………れは………?!」



蓮もまた、モニター越しに見えるミラービルに反射した、自らの愛機の変貌した姿を見た。


より黒く、より凶悪に、より刺々しく、より禍々しく。

元のジャッジサイヴァーを「黒い騎士」とするなら、今の姿はまさに「悪魔」、もしくは「死神」を連想させる。


まるで、蓮の中に渦巻く怒りと復讐心を形にしたようだ。


そして、変化したのは外見だけではない。

サヴァイブガンドラグーンがそうであるように、機体の出力もエネルギーも増大していた。

元のジャッジサイヴァーとは、比べ物にならない程に。



「………そうか、まだ戦ってくれるんだな」



蓮はそれを、ジャッジサイヴァーが自分に答えてくれているのだと、考える事にした。

目の前の外道を殺せ、と。

今こそ復讐を成し遂げろ、と。



「ああ、解ったよジャッジサイヴァー………いや」



蓮は思った。

「こいつ」は、最早ジャッジサイヴァーではない。

生前、芽以が好きだったアニメのように、こうなったロボットは、名前が変わるものだ。


今「こいつ」に、新しい名前をつけるとしたら。



「………ジャッジサイヴァーネメシス!」



復讐の女神・ネメシスの名を冠する、新たなる黒き処刑人。

「ジャッジサイヴァーネメシス」が、その翼を吠えるように広げた!



「なんだか知らないけど!あんたはブッ殺す!」



対するアリアも、トドメの一撃を邪魔された事に怒り、ブラッディマリーを突撃させる。



「来いッ!」



蓮も、それに対抗する為に、ジャッジサイヴァーネメシスの操縦桿を握る。


振り上げられたチェーンソーが、加速による勢いと共に、ジャッジサイヴァーネメシスに向けて振り下ろされる。

対するジャッジサイヴァーネメシスは、ソードガンの刃の部分を構え、振り下ろされたチェーンソーを受け止めた。


がぎぃっ!

ぎゃぎゃぎゃぎゃっ!


二つの刃がつばぜり合い、金属が擦れ合う不愉快な音が響く。



「このまま腕ごと切り裂いてあげる!」



アリアは、ジャッジサイヴァーネメシスのソードガンはブラッディマリーのチェーンソーで破壊できると考えていた。


いくら刃が付いているとはいえ、ソードガンの刃はタイタンギアサイズのジャックナイフと言った感じで、格闘技武器というよりは、あくまで「近接戦闘に持ち込まれた際の予備装備」としか見えなかったからだ。


なら、大きさもパワーも上のチェーンソーを使っている自分の方が有利だと、そう考えたのだ。

単純な思考であるが、間違ってはいない。

現に、ジャッジサイヴァーネメシスの方が押されていた。



「それは………どうかなッ!」



だが、そんな単純な考えで左右される程、戦いは甘い物ではないのも事実。


チェーンソーの回転を早めようとした瞬間、ソードガンの刃より、光が放たれた。

ビーム弾ではない。

それは、刃の部分より放たれたのだ。



「えッ!?」



アリアが気付いた時には、ソードガンとつばぜり合っていたハズのチェーンソーは、その部分から真っ二つに切り裂かれていた。


切断されたチェーンソーの半分が、地面に落下して突き刺さった時、アリアはようやくジャッジサイヴァーネメシスが何をしたのかに気付いた。



それは、なんとビームの刃。

ソードガンの刃から伸びた、緑色のビームの刃が、チェーンソーを切り裂いていたのだ。


そう、それはビームセイバー。

長さこそガンドラグーンのそれに劣るものの、短さ故に威力を濃縮し、切断力と破壊力が上昇しているのだ。



「お、の、れぇぇぇ!!」



ヤケクソになったアリアは、今まで余裕か笑顔か、そうでなくてもそこまで崩した事の無かった顔を、怒りと苛立ちに歪ませる。

そしてブラッディマリーのもう片方のチェーンソーを、ジャッジサイヴァーネメシスに向けて振り下ろす。


だが、それがジャッジサイヴァーネメシスを切り裂く事は無かった。

チェーンソーが振り下ろされた瞬間、ジャッジサイヴァーネメシスは霧のように姿を消した。



「は、はぁ!?」



目を見開いたアリアの前で、コックピットのセンサーが背後に敵影が移った事を知らせる。


ならば後ろか。

今度こそ仕留めてやろうと、ブラッディマリーは、勢いよく振り向きつつ、その勢いでチェーンソーを横に振るう。


確かに、ジャッジサイヴァーネメシスは背後に居た。

そこに、その悪魔のような機体を鎮座させていた。

だが。



「は、はぁっ!?」



また、消えた。

チェーンソーが振るわれると同時に、再びその姿は霧のように消え、今度は頭上に反応が現れる。



「こ、このっ!このぉっ!」



チェーンソーを振るう。

消える。

チェーンソーを振るう。

消える。


その繰り返しであった。

いくらブラッディマリーが攻撃を浴びせようと、それがジャッジサイヴァーネメシスに届く事はない。



ジャッジサイヴァーには、相手のセンサーを騙す機能、つまる所の「ステルス機能」が存在していた。

ジャッジサイヴァーネメシスへとパワーアップするに至って、それは格段に強化された。



「何よ………何よ何よ何よ何よ何よッ!私をイライラさせないで!倒れなさいよ!私に殺されなさいよ!!」



アリアは苛立っていた。

生まれてから今まで、自分の思い通りにならなかった事など無かった。


それなのに、目の前に現れたこのジャッジサイヴァーネメシスは、どうやっても倒せない。

アリアには、それが堪らなく許せなかった。



「このっ!このっ!このっ!このっ!」



チェーンソーを振り回すもそれが当たる事はない。

それ所か。



「ぎゃッ!?」



ブラッディマリーの攻撃を高速で避けながら、ジャッジサイヴァーネメシスはソードガンのビーム刃を使い、すれ違いざまにブラッディマリーに攻撃を浴びせてくる。



「こ、こいつ!私のブラッディマリーをぉぉっ!!」



ドレスのような装甲が。

人形のような機体が。

アリアが腕によりをかけた「芸術品」が、破壊されてゆく。


それがアリアに苛立ちと、そして焦りを感じさせる。



「ぎいいっ!?」



そしてとうとう、ブラッディマリーの足が切断され、その機体が地面から離れる。



「ぎぃいいいーーーっ?!」



それと同時に、ジャッジサイヴァーネメシスも攻撃のペースを上げた。

四方八方から、ビームの刃がブラッディマリーを切り裂きながら、その機体を空へとかち上げる。


もう片方の足が。

チェーンソーを失った右腕が。

チェーンソーごと左腕が。


空中に飛ばされる程に、アリアが腕によりをかけた芸術品、ブラッディマリーは無惨に破壊されてゆく。


相手には翻弄され、一方的に攻撃され、自慢の芸術品は破壊される。

生まれてきて初めて味わった「自分の思い通りにならない状況」に、アリアの顔は憎悪で歪みきっていた。


そこに、それまで見せていた美少女としての面影など微塵も無い。

………このゲームの「観客」に居た、アリアを欲しがっていた男が見たら、なんと言っただろうか。



「が………ッ!?」



そして、アリアは見た。

月を背にこちらを見下ろす「悪魔」の姿を。

怒りと復讐に身を焦がす「処刑人」の姿を。

自分が悪とすら自覚しない外道を迎えに来た「死神」の姿を。



「佐瀬アリア………貴様の罪、己の命で償え………ッ!!」



地獄の封印が解かれるように、ジャッジサイヴァーネメシスの胸の「顔」が開く。


その、竜や鳥類を思わせる「口」の奥には、蓮のこれまで滾らせていた怒りのような、地獄の炎が渦巻いていた。

そして。



「地獄に………落ちろォォーーーッッ!!」

「ぎぃあぁぁぁーーーッッ!!」



放たれる、裁きの閃光。

拡散ビーム砲「ヘルブレス」。


サヴァイヴガンドラグーンのドラグブラスターと同じ熱線砲ではあるが、これはより広範囲への攻撃を目的とした物。

破壊力こそ劣るが、ブラッディマリーを完全に破壊するには、十分であった。



四散したブラッディマリーの残骸が、地表に降り注ぐ。

胸が、頭が、手足が。

それはまるで、壁に叩きつけられた玩具のように。


それは皮肉にも、これまでアリアが行ってきた「芸術」に、どことなく似ているようにも見えた。



「………後は、閻魔様に任せるとするか」



翼から緑色の光を放ちながら、ジャッジサイヴァーネメシスが地上に降り立つ。

翼を畳み、佇む姿は、どこか安心しているようにも見えた。



「………ふう」



コックピットに座る蓮は、深く息を吐いたかと思うと、背を伸ばした。

そして、ずっとかけていたサングラスを外す。


ジャッジサイヴァーネメシスと同じように、蓮もまた安心したかのような顔を浮かべていた。

蓮の復讐は、終わった。

アリアは、この手でケジメを付けさせた。

人殺しと使者への冒涜を楽しんだ、美少女の仮面を被った狂った魔女は、文字通り本来いるべき地獄へと送ってやった。


これでようやく、彼女の犠牲となった人々の無念も、少しは晴れる事だろう。

そして、芽以の事も。



「………視てるか?芽以」



月に語りかける。

その瞳から零れ落ちた涙が、一筋の線となって蓮の頬を伝う。



「………終わったよ、ようやく」



ありがとう。

そう、芽以の言葉が聞こえた、気がした。


復讐を終えた蓮は、ジャッジサイヴァーネメシスと共に、半壊した夜の街に佇む。

月明かりが、ようやく憎悪から解放された蓮を優しく照らしていた。

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