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刀光剣影タイタンギア  作者: なろうスパーク
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第26話「全てを手にした男」

ニューヨーク。

そこは、眠らない街。

常に誰かしらが、人と金を動かしている、世界の中心。

100万ドルの夜景が輝く、発展と進化を繰り返して生まれた、人類の叡知が産み出した、文明の象徴。



今日も男は、愛用のスポーツカーで夜の光の中を疾走し、自宅へ向かう。

仕事帰りではあるが、その顔に疲れは見えない。


白に近い皮膚色と、獅子を思わせる跳ねた金色の髪が、男に北欧の血が流れている事を物語る。

着こんだ高級スーツと腕時計が、男が社会的に強者の立ち位置にいる事を物語る。


そこは、限られた一部の上流階級のみが住まう事を許された街。

当然、男の屋敷も、それなりの大きさと豪勢な見た目をしている。


スポーツカーを地下の駐車場に止めた後、男はスーツを脱ぎながら、自宅の扉を開いた。



「おかえりなさい、あなた」

「ああ、ただいま」



男を出迎えたのは、褐色の肌をした女性だった。

ドレスに包まれた彼女の身体は、肉付きのいい、豊満なバストとヒップを持っており、その唇はふっくらして柔らかそう。



「んっ………」

「ん………ちゅ」



男の妻である彼女は、男と口づけを交わす。

少々ディープな、啄み絡むようなキスではあるが、男は勿論の事、彼女も疑問に思わない。

それが、彼等の日常なのだ。



………男がネイティブアメリカンの妻を娶ったのは、別に人種を差別しない事をアピールする為でない。


選んだ理由は、身体だ。

男の情欲を煽るバストとヒップを持つ元気な子を産めそうなその身体が、男が求める全てを満たしていたのだ。


だから彼女は、男よりも若く、みずみずしい。

男としての本能が、若く、豊満な彼女を求めたのだ。


本来「トロフィーワイフ」というのは白人の女性に使う言葉であるが、ある意味、彼女も立派なトロフィーワイフといえるだろう



「あなた、今日も「お友達」と会議?」

「ああ、終わったらすぐ行くよ」



年齢に似合わぬ精力が、セーターから覗く妻の豊満な谷間に視線を向かわせる。

だが男は妻にスーツを渡すと、屋敷の奥へと向かう。

彼女の身体を味わいたかったが、男にはやらなければならない事があったからだ。



「じゃあ、寝室で待ってるわ」



自分より他人を優先されるという、妻としては屈辱的な光景。

それでも、彼女は怒らない。


南米の貧乏な村で生まれ育った彼女は、もし男の目に止まっていなければ、こんな生活は出来ていない。

そもそも、男尊女卑の強い村で育ったのだ。

夫に傅き、従う事は、彼女にとって当たり前の事なのだ。





………………





「アレックス・クリス・グレーファントム」。

それが、男の名だ。


30歳の若さで、世界に轟く巨大企業「ジオ・エレクトロニクス」の代表取締役………つまる所の社長に登り詰めた男。


車も、戦闘機も、タイタンギアも。

そして、今我々が触っている携帯電話やパソコンも。

この世のほとんどの物が、どこかしらでこの男の息のかかった物といっていい。


巨額の富と、政治にも干渉できるほどの権力。

男の夢を全て手に入れた男と、某有名雑誌で紹介された事もある。



「………さて、と」



今アレックスがいるのは、彼の住む屋敷の地下にある、秘密の部屋。

そこは、扉を除いて一切の家具のない、真っ白な部屋。

この場所を知るのは、アレックスとその妻を除けば、ごく一部の人物に限られる。


アレックスが部屋の中心に立つと、突如、部屋にザザザとノイズのような物が走る。

これはあくまで立体映像であり、部屋が変化しているわけではない。


しばらくノイズが走ったと思うと、アレックスが見つめる風景が、白い部屋から変わってゆく。


ほんの五秒ほどで、白い部屋はきらびやかな空間を映し出した。


そこはまるで、ホールのようだった。

古代の西洋で、ミュージカル等を上演する為に作られた劇場。

バーチャルリアリティで再現されたその光景は、それに酷似していた。


観客席には、着飾った多くの、人、人、人。

皆、目元がペンで書きなぐったようなくしゃくしゃした物で隠されており、その素顔は解らない。

当然だ、彼等は顔を知られてはならないのだから。


彼等は、この黄金劇場の観客。

そしてアレックスは、彼等を喜ばせる劇場のスター。



「みなさんお集まりいただき、ありがとうございます!さて、最初に質問させていただきますが………」



演技がかった態度で、アレックスは人々に語りかける。

アレックスがこの場の人々に問う事、それは………。



「私の考案したデスゲーム「刀光剣影」は楽しんでいただけてますでしょうか!」



アレックスの一言と共に、彼の背後に表示されたのは、彼が湯水のような建設予算と各国家への口止め金を払って作り上げた人工の島「ケイオスアイランド」。

そして、そこで繰り広げられている、血で血を洗う死のゲーム。


それを見た途端、劇場から歓声が上がった。

そこには、彼等のこのゲーム………「刀光剣影」に対する称賛と、興奮の意が込められていた。



………「刀光剣影」。


「今にも殺し合いが起きそうな雰囲気」という意味の四字熟語の名を持つそれは、

「彼等」の代表であるアレックスが考案した、この平和な時代における、擬似的に再現された戦争。


内容は単純。

「彼等」によって選ばれた人々を、特定のフィールドに閉じ込め、殺し合いをさせる。

最後に勝ち残った者には「何でも願いを叶える」という、餌をぶら下げて。


ここまでで言えば、ただのデスゲームである。

ただ違うのは、殺し合いに使う道具は、「彼等」の息のかかった物であるという事。


この平和な時代において、停滞しがちな兵器開発の為のデータ取りとしての側面も、このゲームにはあるのだ。

サバイバルナイフから銃器までが「彼等」が開発し、参加プレイヤーに実戦テストとして使わせているのだ。


そして「彼等」は、殺し合いのフィールドに仕掛けられた監視カメラ等を通して、その様を見て楽しむ。

人々の殺し合いを、エンターテイメントとして楽しむのだ。



そして今回は、アレックスの主導の元、人工的に作られた島・ケイオスアイランドを用意し、タイタンギアまで投入するという大規模な物となった。

参加者も、事前にタイタンギアの操縦に適性のある人間を選んでいる。



結果は、この歓声を見ての通りだ。

「彼等」は皆、今回の刀光剣影に満足している。



「イベントの時の、凄かったよな!」

「ああ!あれは燃えたぜ!」



まるで、テレビ番組の感想でも言うように盛り上がる者達。

凄かった、燃えた、実際そうなのだが、他人事のような感想だ。

実際の参加者達は、命懸けで殺し合いをしているというのに。



「アリアちゃん可愛い!最高ッ!」

「エマちゃんもたまらん!あのおっぱいがたまらん!」

「俺、リクエストして一人頂こうかなぁ?」



参加者の女性に、汚いという言葉すら生易しい欲望を向ける者達。

彼等が「リクエスト」をすれば、参加者の中から一人選んで、「商品」として購入できるのも、この刀光剣影の特徴。

同じ人間でさえも、ここにいる「彼等」は商品にしてしまう。

そしてその事に、何の抵抗感も抱かない。

「彼等」には、それだけの財力も、権力もあるのだ。

人一人の人生など、平然と奪える程の。



「皆さん、静粛に、静粛に」



騒ぐ人々に対し、アレックスは一旦黙るよう呼び掛ける。

すると、数秒とかからず、人々は騒ぎを止めた。

この場のほとんどが分別のある大人だからというのもあるが、舞台に立つアレックスが「彼等」の代表………組織のトップであるという事もあった。



「皆さん、今回の刀光剣影は楽しんで頂いているようで安心しました………さて」



「彼等」が静かになった事を確認し、アレックスは本題に入る事にした。

彼が手を翳すと、ステージの上に新しい画面が表示される。



「最初に話した通り、今回の刀光剣影には、我が社の開発した新システム「エヴォシステム」を搭載した、新型タイタンギアを投入しております」



画面に表示されていたのは、三つのタイタンギアの内部構造図。

そして、そのタイタンギアの名前。

どうやら、その全てに「エヴォシステム」と呼ばれるシステムが搭載されているらしい。



「まず一号機、ガンドラグーン」



ガンドラグーン。

木葉竜也が手にいれた、二本のビームセイバーを持つ、エヴォシステム搭載機第一号。



「続いて、ジャッジサイヴァー」



ジャッジサイヴァー。

加納蓮の駆る、ステルス機能と単体での飛行能力を持った、ガンドラグーンと共通の内部フレームを持ったエヴォシステム搭載機第二号。



「そして、イベントにも登場した試作機、デモンギア」



デモンギア。

人間を生体ユニットとして使うそれは、エヴォシステムを試験的に搭載した試作機だ。

この機体から得られたデータを元に、ガンドラグーンとジャッジサイヴァーは作られた。


そして、今回の「イベント」で、限定エネミーといういかにもゲーム染みた役割のために投入され、生体ユニットにされたガオウ諸共、ケイオスアイランドに散った。



「デモンギアは稼働するもほぼ暴走、ガンドラグーンとジャッジサイヴァーに関しては、皆様の知る通り………稼働すらしていません」



おそらくデモンギアの、デスレイヴを産み出す、無尽蔵の火力といった兵器の範疇を越えた力の数々は、そのエヴォシステムによる物だったのだろう。


だが、ガンドラグーンとジャッジサイヴァーには、それらしき現象は見られない。

デモンギア戦でガンドラグーンのビームセイバーの出力が一時的に上がったが、アレックスからしたら稼働とは言えないようだ。



「そして、刀光剣影も、今シーズンの終わりが近付いています………ですが皆さん、ご安心を!」



アレックスが、次の画面を映した。

三機のエヴォシステム搭載機の図面を押し退けて表示されたそれは、会場にいる「彼等」をどよめかせた。



その図面は、タイタンギアの物だった。

それも、ガンドラグーンやジャッジサイヴァーと共通のフレームを持つ。


その各部には、これまでのマーズトロンやジーガロスを始めとする、どのタイタンギアにも無いような、様々な最新鋭のシステムが組み込まれているのが見えた。



「これは私の「次回作」………ガンドラグーンとジャッジサイヴァーのデータを元に設計した、来年公式発表する予定の、タイタンギア………いや、タイタンギアを越えた、新兵器になります」



おお!と、客席から歓声が上がる。

目に見えて協力な機体を前に上がった歓声を、アレックスはシャワーのように浴び、愉悦の笑みを浮かべる。



「しかし、この機体には欠けているパーツが一つあります、それは「ソフトウェア」、これを動かすには、既存のタイタンギアの物の流用は効かないのです」



演技がかった態度のまま、アレックスは話を続ける。

気分はまるで、旧ドイツに君臨した独裁者だ。

彼も、演技がかった演説で、人々の心を掴んだ。



「………しかし、今回の「イベント」で、データは揃いました!ケイオスアイランドに広がった、デモンギアとその増殖体の戦闘データを元に、この機体はついに「完成」したのです!」



次に口調を強め、強く呼び掛けるように、「彼等」に向けて宣言する。

この強力なタイタンギアは、完成したと。



「私はこれを、今シーズンの「最後」のイベントとして、皆様の前に紹介しましょう!きっと、皆様に満足のいく形で、刀光剣影の最後を彩ってくれるでしょう!」



アレックスがそう宣言すると、劇場はシーンと静まりかえる。

少しの沈黙の後に、「彼等」の一人が立ち上がり「ブラボー!」と称賛を飛ばした。


それを皮切りに、次々と拍手喝采が飛ぶ。

その全てが、この最高の「ゲーム」の仕掛人、アレックスへの称賛と賛美のハーモニーとなり、彼はそれを浴びるように、両手を広げた。



「皆さん、ありがとうございます!これからも、我等「サンドマン財団」に栄華のあらん事を!」



バーチャルリアリティの黄金劇場が、拍手で埋め尽くされた。

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