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刀光剣影タイタンギア  作者: なろうスパーク
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第25話「"悪魔"を討て」

男は、名を田所という。

この島ではガオウを名乗り、一時的とはいえこの島の勢力の頂点に立っていた。


そして、その天下は僅か五日で終わりを告げた。

人間狩りで捕らえた他のプレイヤーが反乱を起こしたのだ。

そして、ガオウ自身もタイタンギアで出撃するも、蓮の操るジャッジサイヴァーに敗れ、王国の崩壊と共にその生涯に幕を閉じた………。



………はずだった。



ガオウの亡骸は、密かに回収されていた。

そして、ガオウは蘇生手術を施され、甦った。


異形のタイタンギア「デモンギア」の一部として。

機械に身体を繋がれ、生命を維持されているパーツとして。



『あぎぃああああ………』



培養液に満たされ、身体の至る所から伸びたコードに繋がれたガオウは、デモンギアのメインカメラ越しに、その相手を見つけた。


眼前に、デモンギアの前に立つ二体のタイタンギア。

その片方、それは忘れもしないガンドラグーン。


自身の天下を、王国を崩壊させた原因。

その一つ。



『テメェは………テメェはてめぇハてメェわァァァァ!!』



怪物が咆哮するがごとく、ガオウの怒りの怒号が響き渡る。

デモンギアの巨体が、暴走する馬かバイクのウィリーのように大きく立ち上がり、眼下の二機へと襲いかかる。



「危ない!」



咄嗟に飛び上がるガンドラグーンとジーガロス。


先ほどまで二機がいた場所に、デモンギアがその巨体を叩きつける。

轟音と共に土煙が上がり、陥没する。



『にィィィガスカあァァァァ!!』



直後、ガオウの咆哮と共に、デモンギアの背中に無数の穴が出現。

そこから、紫に輝く無数のビーム弾が放たれた。



「うわっ?!来た!」

「くううっ!」



デモンギアから全方位に向けて放たれる光の弾丸を前に、ガンドラグーンとジーガロスカスタムはそれを避けるので精一杯。

とても、デモンギアには近づけない。


ズオオ!

ドワオッ!


二機のタイタンギアだけでなく、ビーム弾は周囲にあるビルや建物も当たり、破壊する。


そして不運にも、その内の一発が、ガンドラグーンのすぐ近くにある高層ビルに激突してしまった。



「や、やばっ!」



竜也が気付いた時には、高層ビルは真っ二つに折れ、ガンドラグーンの頭上向けて落下してくる。

強度を考えても大破とまではいかないだろうが、動きを止められる事は明らかである。


その時。



ズバァッ!



突如飛来した一撃が、落下してくるビルの残骸を貫き、粉砕する。

ジーガロスカスタムのドリルアームだ。



「晴斗さんか!」

「ぼさっとするなガンドラグーン!もっと動けッ!」



晴斗の叱責を受け、ガンドラグーンはホバー走行でその場を離れる。

そこに着弾する、デモンギアのビーム弾。



『オ゛ノ゛レ゛ぇぇぇぇ!!逃ゲルなァァァァァ!!』



ガオウの怒りの咆哮と共に、デモンギアの背中が盛り上がる。

そして現れた、タコの腕を連ねたかのような球体のような機関。

そこに空いた無数の吸盤のような穴から、爆発と共に無数のミサイルが射出された。


取り込んだ建造物やタイタンギア等のパーツにより、デモンギアの内部で製造されたそのミサイルは、二機のタイタンギアをターゲットに定め、飛来する。



「このぉっ!!」



それに対して竜也が取った手段は、マシンガン。

迫るミサイル向けて、弾幕を張って撃墜してゆく。


空を飛ぶ相手の狙撃は難しい。

だが、全てとはいかなくとも、弾幕を張って相殺する事は可能。

下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、というやつだ。



「ふんっ!」



ジーガロスカスタムが使ったのは、背中の支援ユニット。

触手を伸ばし、それを振り回す事でミサイルを迎え撃つ。


以前ガンドラグーンが戦ったオクタヴィアやロンブリスを見ても解るが、触手の強度はかなり強く、ミサイルに当たってもビクともしない。



『お゛ん゛ど゛れ゛ェェェェ!!』



ガオウは怒り狂い、二機を追ってデモンギアの巨体を前進させる。

それにより、進路上のビルは粉砕され、破壊される。



ビーム弾やミサイルを回避する内にデモンギアから距離を置いた二機は、見つからないようにビルの影に隠れていた。



「まいったな………アレじゃ攻撃どころか近づけないよ」



弱気になった竜也がつぶやく。

ガンドラグーンもジーガロスカスタムも、近接戦闘に特化するよう作られている。

全身に火器を搭載したデモンギアを相手にするには、分が悪い。



『ドゴニ隠レダァァァァァ!!出てコイぃぃぃぃ!!』



遠くから、ガオウの絶叫が聞こえてくる。

ここからでも、街を破壊するデモンギアの姿ははっきりと見えた。


デモンギアの巨体も、十分驚異である。

少し動くだけで、周りのものを破壊する。



「………待てよ?」



その姿を見て、竜也の頭にある考えが過った。

上手くいけば、デモンギアを倒せるかもしれない考えが。



「晴斗さん、ちょっといい?」

『どうした』

「………俺に、いい考えがある」



成功するかも、そもそも効果があるかも解らない作戦だった。

だが、今彼等に打てる手は、それ位しかなかった。





………………





『………飽きた』



ふと、ブラッディマリーより響く、アリアの声。

その眼前には、ありとあらゆる攻撃手段を使ってもブラッディマリーを仕留める事が出来なかった、蓮とジャッジサイヴァーの姿。



『お前、何を言って………』

『言ったまんまだよ、この戦いはもう飽きたの』



瞬間、ブラッディマリーのスカート部分より、カランと音を立てて転がる、三つの缶のような物。

蓮にはそれが、発煙筒………つまる所のスモークだと、すぐに解った。

それも、軍隊で使われている、ジャミング効果のある。



『じゃ、バイバ~イ』

『待てッ………!』



ぶわあっ!


発煙筒から、白い煙が勢いよく噴出される。

それはジャッジサイヴァーの視界を覆い尽くし、スモークに含まれるナノマシンがジャミングを引き起こし、ジャッジサイヴァーのセンサーをダメにする。



「ぐっ………!」



スモークが晴れた時には、そこには何も無かった。

ブラッディマリーは何処かへ消え、そこにはジャッジサイヴァーと、遠くに見える戦火だけがあった。



「………畜生がッ!」



ダン!

蓮は、コックピットの窓に拳を叩きつける。

それでアリアが戻ってくる事はないのは解っている。

それでも、蓮の中に渦巻く悔しさが、そうさせた。


自分は負けた。

今の蓮には、ただ敗北を噛み締める事しかできなかった。





………………





さて、竜也達の方はと言うと。



『ドゴダぁぁぁ!ドゴニがぐれだァァァァァ!!』



怒り狂ったガオウの操るデモンギアが、ボディに血管のような赤い光を輝かせながら、ビルを破壊している。

その赤く光る目は、見る者に畏怖の念を抱かせるように、禍々しい。



『こっちだ!』

『グウウ!?』



怒り狂うガオウの耳に、あの忌々しい声が響く。

デモンギアが、声のした方へぐにゃりと首を曲げる。


そこに居たのは、デモンギアのすぐ前に立つ、ガンドラグーンの姿。



『お前が探してるのは俺だろ?来いよ腰抜けっ!』

『イッタなァァァァァ!!』



竜也の挑発に、ガオウの怒りのボルテージは最大値に達する。

デモンギアは、ガンドラグーンに向けてその巨体を突撃させた。


周囲の建物を薙ぎ倒しながら進むデモンギアを前に、ガンドラグーンはすぐに反転し、その腰のバーニアを吹かせて逃げてゆく。



『どうした!俺はこっちだぞ!』



その間にも、竜也はガオウに対する煽りをやめない。

それはガオウの神経を逆撫でし、怒りを増幅させる。



「(上手く挑発に乗ってくれた………後は………!)」



竜也は、額に冷や汗をかきながらもニヤリと笑った。

ここまですれば、相手に最早冷静な判断を下すだけの余裕は残っていない。


後は、デモンギアに捕まらず、そして離しすぎないよう距離を保ちながら、相手を「目的の場所」へと誘導するだけだ。





………………





「これでよし、と………」



晴斗の方も、準備を終えていた。

ジーガロスカスタムと共に身を隠し、時が来るのをただ待つ。


しばらくすると、遠くの方から地鳴りのような音が聞こえてきた。

他のタイタンギアの戦闘の音ではない。

これは。



『マデええええ!ごろずううううう!!』



来た。

ホバーでボディを浮かし、地に足がつかないようにして駆けるガンドラグーンと、

その巨体で這うように、周りの物を破壊して迫るデモンギア。


もうすぐ。

もうすぐだ。


距離まであと、3、2、1………。



ガンドラグーンが、その場を通りすぎる。



「今だッ!!」



竜也が叫ぶと同時に、デモンギアが「そこ」へ到達する。

それと同時に、晴斗は手に握った、小型爆弾の起爆スイッチを押した!



ずばおっ!



突如爆発する、デモンギアの足元。



『ナ、ナナナ?!』



突然の事に、ガオウも驚き、デモンギアの頭を狂ったように右往左往させる。



全ては、作戦通りだった。


単純な作戦だ。

まずは、この街の地下………地下街や地下鉄、インフラなど、空洞がある、つまり地盤が不安定になっている所に、破砕工事等で使われる爆弾を仕掛ける。


爆弾自体は、運営が刃物や銃のような「殺し合いの為の道具」としてカウントしていたらしく、島のあちらこちらで入手できた。


そして、地下に仕掛けた爆弾を、その上にデモンギアが到達すると同時に、起爆。


あの巨体を持つデモンギアだ、重さもかなりあるだろう。

それが、崩れやすい空洞のある場所の真上に来たと同時に、そこに仕掛けた爆弾を爆発させる。


すると、どうなるだろうか。

デモンギアの足元は崩れ、その巨体が地面に沈んだ。

全身こそ沈まなかったものの、デモンギアはその場に拘束される。


いってみれば、落とし穴だ。

原始的なトラップではあるものの、それはデモンギアに対しては有効に働いた。



『うぎゃああああ!ぎいいい!!』



それは、デモンギアを動かしていたのがガオウだった事。

単純で短気な彼は、怒りが勝ってしまい、この落とし穴から脱出する方法を考えるに至らなかったのだ。



「い、ま、だぁぁぁ!!」



瞬間、ガンドラグーンが両肩のビームセイバーを引き抜く。


奴をつなぎ止めるのは僅かでいい。

必要なのは、あの巨体の動きを止める、ほんの一瞬。

十分すぎるほど、時間は稼げた。


なら、後は倒すだけだ。



「いっけぇぇぇーーーーっ!!」



ガンドラグーンが飛び上がり、二振りのビームセイバーを振りかざす。

すると、どうだろう。

ビームセイバーの刀身が、突然延びた。

デモンギアの巨体を、そのまま切り裂けそうなほどに。


巨大なビームの刃が、デモンギア向けて振りかかる。

その時。



『ヒッ!』

「ぐっ!」



突如、咄嗟に、ガオウはデモンギアより一発のビームを放った。

それは、ガンドラグーンに命中こそしなかったが、僅かに掠り、体制を崩させた。


それが、勝負の決め手となった。



ずばあああっ!



巨大ビームセイバーは、確かにデモンギアの身体を引き裂いた。

だが、それはデモンギアを前から、左右の端を切り裂いたに過ぎなかった。

中心部………本体に攻撃を加える事は、叶わなかった。



『クク………ぎハハハ!』



切り裂かれた、デモンギアの左右のボディを再生させながら、ガオウが嗤う。


その見下ろす先には、エネルギーを大幅に消費し、ビームセイバーの刀身すら展開できなくなっているガンドラグーンの姿。

立つ力も残っていないのか、跪いている。



『残念ダッタなァ!オレサマの勝チダ!』



デモンギアが、その巨体に秘めた火器の全てを、ガンドラグーンに向ける。

憎き相手を、今度こそ仕留めんと。


………多くの人が、この光景を見て、ガンドラグーンと竜也の最後を予見しただろう。

だが、そんな状況においても、竜也は。



「………そうだな、「俺は」勝てない」



笑っていた。

余裕の笑みを浮かべていた。

その理由は。



『………な、に?』



言われて、初めてガオウは気づいた。

跪いたガンドラグーンの頭上。

丁度、デモンギアの中枢たる上半身部分目掛けて飛来する、その一撃を。


腕のドリルを高速回転させて迫る、ジーガロスカスタムの姿を。



「つ、ら、ぬ、けぇぇぇ!!」



ずばぁ!



ジーガロスカスタムのドリルが、中枢ユニットとして組み込まれていたガオウごと、デモンギアのボディを貫いた。


上半身部分が吹き飛び、その残骸がバラバラと落下する。


呆気なく、そして一瞬で、勝負はついた。


上半身部分を失ったデモンギアが、まるで植物が枯れてゆくかのように、萎びて風化してゆく。

それは、デモンギアから増殖したデスレイヴもそうだった。

デモンギアの「死」に反応するかのように、渇いた泥のようになって崩れ落ちてゆく。



『ぱんぱかぱーん!見事、イベントエネミーを撃破したのは、布浦晴斗さん!おめでとうっ!おめでとうーっ!』



そしてバルキリーリングより現れたユミが、晴斗を称えてぴょんぴょん跳び跳ねる。


戦いは。

この狂った「イベント」は、こうして終わりを告げた………。





………………





夜が明け、朝日が顔を出した。


イベントエネミー………デモンギアが倒されたなら、もうここに用はない。

第四都市部に集まっていたプレイヤー達は、次々と、そこを後にしていた。



「デスゲームでこんな事を言うのは変だけど、協力感謝するよ、じゃあね」



紫とカオルも、プルトーネとマーズトロンと共に、その場を去ってゆく。



「………助かった」



晴斗もそう言い残し、ジーガロスカスタムと報酬の資材と共に、帰っていった。



「………さて」



朝日を受けて、充電を終えたガンドラグーンと共に、竜也も帰路につく事にした。

家………廃ビルで、エマが待っている。



「俺も………帰るか」



ガンドラグーンがバーニアを吹かせ、激戦により廃墟と化した第四都市部の街を後にする。


こうして、このゲームの初めての「イベント」は、終わりを告げた。



………だが、誰も、気付いていなかった。


これは「終わり」などではない。



これから始まる「惨劇」の、始まりに過ぎなかったのだ。




地下深く。

ケイオスアイランド最深部にて、「それ」はデモンギアを介して得たデータを受け取りながら、そこに佇んでいた。


目覚めの時を、待つように………。

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