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刀光剣影タイタンギア  作者: なろうスパーク
17/40

第16話「狂、奇、乱、舞」

時刻は、午前10時。

空に輝く太陽が、そのガラス張りの部屋をキラキラと照らす。


高町紫は、今日も太陽の光を浴びながら、机が一つ置かれた部屋で一人、紅茶を楽しむ。

ティータイムは、このゲームに参加する前からの彼女の日課だ。


香りを楽しみ、一口飲む。

紅茶の旨みが、紫の口の中に広がってゆく。



「………やっぱり、カオル君の入れた紅茶は最高だね、これに限るよ」



紅茶の味を楽しんだ後、そっと、ティーカップを机に置いた。

そして、ふぅとため息をつく。



「………さて」



振り向かず、けれども背後にいる「彼」向けて、紫は口調を崩さず口を開く。



「そろそろ、君の用件を聞くとするか、加納蓮」



太陽光の当たる方を向けて座っている紫とは、真逆の方向。

丁度、影になる場所から、加納蓮は紫を睨んで立っていた。



「俺の事を知ってるのか?」

「有名だよ?悪党は絶対に許さず、必ず殺す鬼刑事って」

「殺すのは度の過ぎる外道だけだ、全員じゃない」



サングラス越しの蓮の瞳は、今にも殴りかかりそうな程鋭く、敵意と憎しみに満ちている。

紫は、それを知っていた。

その上で、いつもの態度を崩さずにいた。



「でも、よくここの監視を掻い潜ってここまで来れたね?」

「職業柄、こういう事には慣れてるんでな」



そんな、見方によっては馬鹿にしているとも言える紫を前に、蓮は表情を崩す事なく、自身の懐に手を入れる。



かちゃり。



取り出したのは、銃。


延長銃身とスコープのついたそれは「サンマグナム2000」と呼ばれる、米国産の拳銃。

放つ一撃で、専用の弾薬を使えば分厚いコンクリートの壁をも貫く一品。


いくら蓮が、危険な犯罪を相手にする特犯課とはいえ、個人で持てる物ではない。

恐らく、島にあった物だろう。


それが。

人に向けるには危険極まりないそれが、蓮の手に握られ、紫の後頭部向けて突きつけられていた。



「ちょっと………冗談が過ぎやしないかい?」



こんな状況でも、紫は余裕を崩さない。

それ所か、こんな冗談染みた事まで言ってみせる。



「………答えろ」



紫の冗談を無視し、蓮は冷たく、まるで犯人に自白させる取り調べのように、紫に言い放つ。



「………「アンジェラ」はどこだ」



その名を言う蓮の、サングラス越しに見える目は、明らかな怒りと憎悪で染まっていた。





………………





場所を、廃墟の街に戻す。

そこでは、相変わらずガンドラグーンとジーガロスの戦いが続いていた。



「このっ!ブレストナパームだ!」



近接戦闘がダメなら距離を置こう。

そう考えたのか、竜也は、ガンドラグーンを後ろに引かせてブレストナパームを放つ。



「ふんっ!」



だが、ジーガロスは腕に内蔵したガトリング砲を使い、ブレストナパームを撃ち抜く。


ドワォッ!


空中で撃墜されたブレストナパームは、ジーガロスに当たる事なく、その場で爆発を起こす。

二体の間に爆煙が広がり、視界が遮られる。



「視界が………まさか?!」



しまった、これが狙いか。

晴斗が気付いた時には、遮られた視界の向こうから、爆煙を突き破ってガンドラグーンが現れた後だった。



「そこだぁぁーーーっ!!」



作戦は、竜也の狙い通りに進んだ。


ブレストナパームを、わざとジーガロスに破壊させ、爆煙を発生させる。

そしてガンドラグーンを見失い、間合いと立ち位置が解らなくなった一瞬を狙い、攻撃を叩き込む。


ガンドラグーンは、上手くジーガロスの懐に飛び込んだ。

そしてビームセイバーを引き抜き、ジーガロスを切り裂こうとした。



ピピピッ!

突如、二機の索敵センサーが、タイタンギアの接近を知らせる警報を鳴らした。


何だ?

竜也と晴斗は、突然の事に気を取られる。

その直後。



ズワアアアッ!



突如、二機のすぐ隣にあった廃ビルの一つが爆発し、土煙と砂塵が舞い上がる。

そして砂塵の中から、けたたましい機械音を鳴らしながら、それは飛び出した。



「何………んっ!?」



竜也が、ガンドラグーンを通じて最初に見たのは、ガンドラグーンとジーガロスに迫る、刃。

しかも一つや二つではなく、いくつもの小さな刃が連なり、流れるように動いていた。


咄嗟にガンドラグーンを飛び上がらせて回避すると同時に、竜也はそれが「チェーンソー」の刃だと認識した。

しかも、タイタンギアの武器サイズの、巨大な。



「チェーンソーだと!?」



ジーガロスもまた、ガンドラグーンとは逆方向に飛び上がり、戦いに介入してきたその一撃を回避する。


晴斗の反射神経を持ってすれば回避は容易い。

が、流石にチェーンソーが襲ってくるとは考えていなかったのか、度肝を抜かれている。



『………あーあ、外れちゃった、上手く行くと思ったんだけどなあ』



砂塵の向こうから、スピーカー越しの少女の声が響く。

殺し合いをしているとは思えない、まるで遊んでいるような。



『でもま、簡単にいったら面白くないって言うしね!』



砂塵の向こうから、声の主が姿を現した。


………それを見た途端、竜也も晴斗も、そして遠くで見ていたエマも、その姿を見た途端に呆気に取られた。


一応それは、「50mほどの人型」というタイタンギアの基準は満たしている。

問題は、その外見である。


か細い手足。

締まったウエスト。

膨らんだバスト。

スカートのように広がるバーニア。

二振りのお下げを思わせるバーニア。


そう、それはまるで女性のような外見をしていた。

しかも、お人形………それも美少女フィギュアのような、抜群のプロポーションの。


両手の、手の平があるべき場所には代わりに巨大なチェーンソー。

顔の左半分を覆うような、赤い巨大な片目。

ハイヒールのような足の先には、ローラースケーターのようなホイール。


それは、度重なる原型を留めないほどの改造の結果。

可憐な少女でありながら、それは死神や悪魔、または殺人ピエロを思わせる、異形の姿をしていた。



『ふふふ、二人とも強そうね、私と「ブラッディマリー」の相手をしてくれそう♪ふふふふふっ!』



わくわくするような少女の声と共に、その「ブラッディマリー」と名付けられた機体の両手………チェーンソーが、ギュルギュルと唸る。


ターゲットに定めるのは、ガンドラグーンとジーガロスの二体。

二対一の一見すれば不利な状態にも関わらず、少女は歓喜の笑いを飛ばし、それに答えるようにブラッディマリーのチェーンソーが唸る。



『ふふふふふっ!さあ!楽しく遊ぼっ!!』



コックピットに座るゴスロリ少女の狂喜の笑いと共に、ブラッディマリーの目が赤く輝き、足のホイールが高速で回る。

砂塵をあげながら、その巨大な殺戮人形が戦場へと放たれた。





………………





………アンジェラ。

その名を知る者は多い。

その人物、その家族。

インターネットで都市伝説を調べる人々。

そして………その被害者遺族達。



「………誰?その人は」



紫は、しらばっくれるように蓮に返す。

本当は知っているかのように………いや、彼女も知っているのだ。

紫も、アンジェラを知る者の一人。



「とぼけるな、この悪徳弁護士が………!」



今まで紫に対して態度を崩さなかった蓮が、口調を強めた。

彼女がアンジェラに対して「知らない」と答えた事が、蓮の逆鱗に少しだけ触れたのだ。



「そもそも、お前がヤツの弁護に付かなければ………こんな事にはならなかったんだ………!」

「そんな事を言われても困るよ、日本は法治国家だからね、極悪人でも弁護しなきゃ裁判はできない」



怒る蓮と、澄ます紫。

拳銃を向けられながらも、紫は再びティーカップを持ち、紅茶を飲む。



「………そうか、あくまでも無関係を貫くか………」



そんな紫に対する怒りを、蓮は必死に押さえる。

もしも、こいつから情報を聞き出す必要がなければ、サンマグナムの引き金を引いていたのにと思いながら。



「………だったら教えてやるよ、アンジェラが何者なのかをな」



アンジェラ。


年齢は16歳。

大手病院の院長の父を持つ、所謂セレブに分類される美少女。


そして………日本犯罪史上最悪の、凶悪な殺人鬼である。


彼女は、幼少の時から生物を「解体」する事。

そしてそれを「飾りつける」事に、一種の快感を感じていた。


そして十歳になる頃には、虫や魚、犬猫では飽きたらず、もっと大きな物を「飾りつける」事に夢中になった。

人間にとって最も身近であり、なおかつ捕まえ易い存在。

彼女の「芸術」の新しい素材となったのは、同じ「人間」だった。


政治にも顔が利いていた父の手により隠蔽される中、アンジェラは多くの人間を殺害し「芸術」とした。


子供から女性、果ては自分より大きい成人男性までも捕らえ、生きたまま解体し、飾りつけた。

これは噂だが、彼女は生きたまま解体される人間の、断末魔の叫びを聞いて笑っていたという。


………そして、彼女の14 歳の時の最後の殺人。

これは、公衆便所に住むドブネズミですら嘔吐するほどの、胸糞の悪い物だった。


アンジェラは、ある日幼い子供とその母親に出会った。

アンジェラはその母子を誘拐し、富士山麓にある別荘に監禁した。


そこで、母親を水も食べ物も与えず、何日も放置した。

そして子供の方は、いつもやったように解体して飾りつけただけでなく、その肉や内蔵を使って、なんと「料理」をした。


そして極限までに飢えた母親の前に、その子供の「料理」を出した。

何も知らない母親は、その料理に手を出した。


そして食べ終わった後、アンジェラは母親に、今食べた料理が子供の肉で作られていた事。

そして、解体・料理される最中の子供の様子を録画した物を見せた。


全てを知らされた母親は発狂し、自らの心臓を手渡されたナイフで貫き、自害した。

事切れる寸是まで「ごめんね」と泣きながら呟いていたという。


その一部始終を、アンジェラは録画していた。

そしてそれを、自身の最高の「芸術作品」としたのだ。


この事件は、父親が仕事で海外にいた事と、ある刑事が捜査に関わった事もあり、今回ばかりはアンジェラも捕まる事となった。



………だが、アンジェラに法の裁きも、正義の民衆の私刑も、下される事はなかった。


慌てて帰国した父親の雇った、ある弁護士が優秀だった事。

そして、今までの事件の証拠や資料が、父親によって隠蔽された事。

更に、マスコミでさえも父親の手で握り潰された事。


結果、アンジェラは裁きを受ける事なく、事件その物が「なかったこと」となり、彼女は今も普通の女子高生の化けの皮を被って、何処かで暮らしている。


そして、アンジェラの名前だけは、都市伝説として語り継がれるという結果になった。



………感のいい者なら、もう気付いただろう。



その捜査に関わった刑事こそ、今サンマグナムを構えて憤怒に震えている、この加納蓮。


そして父親の手回しの元、そこにほんの少しでも正義があったなら死刑が確実であろうアンジェラの裁判を無罪放免にまで持っていった弁護士こそが。



「………ああ、思い出した、そういえばそんな事もあったね、懐かしいなぁ」



遠い日の思い出を語るような表情で、血塗られた過去に対してそんな事を言ってみせる、この高町紫だ。



「………よくもそんな態度が取れたモンだな………このド外道がッ!」



押さえ込んでいた怒りもピークに達したのか、蓮は声を荒げて、確実に命中させる為に両手でサンマグナムを握った。



「答えろ!アンジェラは何処にいる!このゲームに参加してる事は解ってんだぞ!?」



こんな状況においても、紫は驚く事も、怯える事もしない。

拳銃を突きつけられながら、ティータイムを楽しんでいる。



「………かつて弁護を担当した私なら、何か知っていると思ったのかな?」



時間が経ち、少し冷めた紅茶を一口飲む。

歯を剥き出しにしたドーベルマンのように自分を睨む蓮の方を向く事なく、紫は彼の質問に答えようとした。



「残念だけど、彼女が今どこにいるかまでは、私も………」



私も知らないよ。

そう言いかけた、その時だ。



バコォォォーーーンッ!!



銃声が鳴り響いた。

紫の目の前で、テーブルに置いたティーカップが四散し、テーブルと床に穴が空いた。


背後では、蓮の構えたサンマグナムの銃口から煙が上がっている。



「自覚が無いようだから教えてやる………ヤツの弁護をやった時点で、俺の中ではお前も殺されて同然のド外道なんだよ」



一発撃って、感情が少し落ち着いたように見える。

だが、そこには先程までよりも深く暗い怒りと、明らかな殺意が籠っている。


かちゃり。

蓮は再びサンマグナムを構え、その目標を四散したティーカップから、アンジェラの後頭部に向ける。



「もう一度言う、アンジェラは何処だ………解っているだろうが、「質問」は既に「拷問」に変わってるんだからな………!」



今度は当てる。

そう脅すように、蓮はサンマグナムの引き金に指をかけた。

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