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刀光剣影タイタンギア  作者: なろうスパーク
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第14話「重鉄巨機・プルトーネ」

女………手塚宰の作戦は、こうだった。


再洗脳を施したバイク部隊を、ガオウの「王国」から手に入れたコーカサスに搭乗させ、第一波の攻撃を仕掛ける。


そして竜也達が、相手がコーカサス部隊だけだと思い込み、油断した所を真打ちである自分が攻撃を仕掛け、拘束する。



単純な作戦であったが、事は思ったよりも上手く進んだ。


ガンドラグーンとマーズトロンは、コーカサス部隊相手に対空戦を繰り広げ、弾丸を消費していった。


そしてコーカサス部隊がある程度減り、竜也とカオルが油断した隙をつき、二機のタイタンギアの動きを封じた。

まんまと、二人は宰の策に引っ掛かったのである。



『アッハハハ!ざまあないわね、デパートの時は私の策を破ったくせに、こんな作戦に引っ掛かるなんて!』



森の向こうからスピーカー越しの宰の声を撒き散らしながら、触手の主は、木々をなぎ倒して向かってくる。


それは、マーズトロンに似た、太く力強い四肢を持っていた。

だが、その首から先はタケノコを思わせる長い逆三角形状の形状をしており、その頂点に赤いバイザーをつけた頭部らしきユニットが鎮座している。


ガオウのタイラントのような威圧感や下品さこそ感じられないが、機体の各部には刺が並んでいる。

右手にはマーズトロンやガンドラグーンが持っている物と同じ、タイタンギア用のマシンガン。

左手にはシールド。


そして背中には、オクタヴィアにも使われていた支援ユニット。

これが、本来の使用法である。



「………「ロンブリス」か、どうやら、このゲームの運営には、相当なタイタンギアマニアがいるらしい」



危機的状況を前に、宰を乗せて現れたタイタンギアに対し、カオルが皮肉るように言った。



ロンブリス。

それは、アメリカ等の大国の支配に反抗する中東方面の国々が開発したタイタンギア。


小国への輸出用に作られたマーズトロンのモンキーモデル機をベースに、様々な部分に改良が加えられており、オリジナルのマーズトロンに勝るとも劣らない性能を持つ。

マーズトロンの使用を前提に開発された支援ユニットを難なく搭載できたのも、その為である。


ベース機であるマーズトロンが旧式化した今も、一部小国では現役で運用されている。


なおロンブリスとは、スペイン語で「ミミズ」を意味する。

これは、切られても再生するミミズの姿から、大国の支配に屈しない不屈の精神を表しているらしい。



そのロンブリスが、オクタヴィアにも搭載されていた支援ユニットの触手を、それこそミミズのように伸ばして、ガンドラグーンとマーズトロンを拘束している。


力任せに引きちぎろうにも、触手は思った以上に頑丈らしく、ガンドラグーンのパワーでもびくともしない。


ビームセイバーなら切断できたかも知れない。

だが、拘束されている事により両手は使えず、ビームセイバーを引き抜く事もできない。


ならばブレストナパームをと考えたが、巻き付いた触手がガンドラグーンの胸を覆っている。

この状態でブレストナパームを使えば、確かに触手は破壊できる。

が、零距離で爆発が起きるのだから、ガンドラグーンも無事では済まない。


どう考えても、竜也には逆転の手段は浮かばなかった。

八方塞がり、まさに詰みだ。



『さて………そろそろ終わりにしましょうか?』



宰がニヤリと笑うと、拘束されたガンドラグーンとマーズトロンの廻りに、残ったコーカサスの部隊が集まってきた。


それはガンドラグーンとマーズトロンを取り囲み、そのボディに内蔵した重火器を、銃殺刑を行う軍人のように向けた。



………タイタンギアが、何故既存の戦車や戦闘機等の兵器を上回る存在として君臨しているか。


その理由の一つが、タイタンギアが砲弾やミサイルのような高い破壊力を持つ武器に対して、それが向かってくより早く動けるからという事。


タイタンギアは、戦車の砲身が向けられるよりも早くその場から移動し、

戦闘機のミサイルに対してもロックオンされるよりも早く、その戦闘機に飛びかかる事ができる。


だが、それはあくまでタイタンギアが「機動」しているからだ。


今のガンドラグーンとマーズトロンのように、拘束され、動きを制限されている状態では、その機動力も発揮できない。


そしていくらタイタンギアが頑丈とはいえ、人の手で作られた以上、人の持つ物で破壊できてしまう。


二機を取り囲んでいるコーカサスは、ドッグファイトの出来ない鈍重さと引き換えにタイタンギアの装甲を破壊できるほどの、火力を有している。

今の二機が、回避行動の取れない単なる「的」の状態なら、それは確実だ。



「く………ここまでかぁっ………!」



まな板の上の鯉のような状態に、竜也は歯を食い縛り、悔しさから来る諦めの表情を浮かべていた。





………………





ロンブリスの触手に絡め取られ、コーカサスの火砲を向けられる、ガンドラグーンとコーカサス。

その光景は、彼等の背後にあるホテルからも、はっきりと見えていた。



「ガンドラグーンが………!」



急いで服を着て、飛び出してきたエマ。

彼女がホテルのバルコニーから身を乗り出す。

その視線の先には、危機に陥る二機のタイタンギアの姿。



「………なるほど、これはまずいね」



声のする方を振り向くと、そこに居たのはティーカップを持った紫の姿。

絶体絶命の危機にも関わらず、彼女は余裕を持った表情で、ティーカップの中のコーヒーを飲み、テーブルに置いた。

そして。



「まあ、お客様に戦わせるのもアレだからね」



紫はエマの隣まで歩いてくると、右手に巻かれた彼女のバルキリーリングに指を触れた。

そして。



「そろそろ………私も行かせてもらおうか」





………………





宰は、上機嫌だった。

自分のプライドを踏みにじった竜也が、自分が指令を下すだけで死ぬ状況にある。


口を三日月のように吊り上げ、コーカサス部隊に攻撃を命じようとした、その時。



「………んっ?」



センサーに反応があった。

新たなタイタンギアの出現を知らせる反応だ。


ガンドラグーンとマーズトロンのセンサーにも、タイタンギア出現を知らせる反応が出ている。



「まさか………!」



カオルは、何が起こったか解った。

マーズトロンのメインカメラを反応が現れた方角………ホテルのある方角に向ける。


ズドンッ!


それとほぼ同時に、ホテルの前にバルキリーリングより呼び出されたその巨体が、姿を現した。



「お………大きい………」



バルコニーにいたエマを、その巨体の出現により出来た影が包む。


その機体は、タイタンギアの平均体高である50mを上回る巨体を、その太陽の元に晒していた。

一歩動く度に、ズシンと地面が揺れる。


両足の向こう脛に、巨大な斧のようなパーツが装着され、腰の所まで延びている。


巨大な戦斧………「バスターアックス」を両手に握り、両肩には鎧のようなブロック状のユニットがある。


胸にはビーム砲らしき窪みがあり、そこを挟むように巨大な排熱口が両サイドに搭載されている。


青を基調に、金の縁取りを加えたカラーリング。

王冠を思わせる頭部と、荘厳な見た目もあり、まるで王族か神官を思わせる。



「さぁて………やろうか、「プルトーネ」!」



その機体「プルトーネ」を駆るのは、このホテルの主たる紫。

紫に答えるかのように、そのバイザーを赤く輝かせる。



「もう一体タイタンギアを隠し持ってたか………でも、そんなノロマな機体で何が出来るというの?!」



プルトーネに向かい、嘲笑う紫。


彼女の言う通り、見たところ鈍重なプルトーネには、上記に挙げたようなタイタンギアの強みである俊敏さが欠けているように見える。

なら、二機のように拘束しなくとも、コーカサスの攻撃は当たる。



「コーカサス部隊!先にあのデカブツを片付けてしまいなさい!」



ならば、二機より先にアイツを始末しよう。

そう考えた司は、コーカサス部隊に指令を下した。

プルトーネを攻撃しろ、と。


何機ものコーカサス部隊が、プルトーネ向けて迫り来る。

だが、そんな状況に紫は慌てる様子すら見せない。



「………やれやれ、ゴチャゴチャした戦いは嫌いなんだがね」



それ所かそんな事を言いながら、手元のコンソールを操作する。

すると、プルトーネの肩のユニットが展開。

足の装甲からも、隠されていた砲口が現れる。


そこにあったのは、ミサイルランチャー・ユニット。

その数、肩に通常タイプを12口。

足にマイクロミサイルを18口。



「一気に片付けさせてもらう!」



ズワーッ!


紫がニヤリと笑みを浮かべた直後、その34口のミサイルランチャーから、ミサイルが一気に吐き出された。


孔雀の羽根のように広がったそれは、四方八方よりコーカサスに向かい、飛来する。


コーカサスが動くより早く飛ぶミサイルは、次々とコーカサスの機体に命中し、破壊する。


一つ、二つ、三つ。

次々とミサイルが命中し、何機もいたコーカサスは、爆煙を待ち散らして撃墜されてゆく。

まるで、弾幕型のシューティングゲームか何かのように。



「………ふう」



紫が一息ついた頃には、空にはもう何もいなかった。

ただの一度、34の発射口から放たれた34発のミサイルは、瞬く間にコーカサス部隊を壊滅………否、全滅に追いやった。



「な………な………な………!?」



眼前に広がるコーカサス部隊の残骸の前に、開いた口が塞がらない宰。



「な、なんて火力………!?」



そして、プルトーネのあまりにもの火力っぷりに竜也も唖然としている。


ホテルは無傷。

プルトーネ部隊は全滅。

ガンドラグーンもマーズトロンも無事。

そして、プルトーネという強力な援軍の登場。


戦況は、一気に逆転した。



『どうする?まだ戦う?』



その場から一歩も動く事なくコーカサス部隊を葬ったコーカサスから、スピーカー越しの紫の声が飛ぶ。

ロンブリスと、それを操縦する宰に対してだ。


宰は、額に汗を垂らして状況を確認する。

攻撃役として用意したコーカサス部隊は全滅。

そして、プルトーネという強敵の出現。


ロンブリス一機で戦うには、かなり厳しい。



「………ふんっ!」



次の瞬間、ガンドラグーンとマーズトロンを拘束していた触手が離れ、二機が自由の身となる。



『覚えておきなさい!』



まるで三流の悪役のような捨て台詞を吐き、宰はロンブリスを来た方向とは逆に向けて走らせた。

いくら彼女でも、ロンブリス一体で三機のタイタンギアを倒すのは無理だというのは理解できたのだろう。


なにはともあれ、助かった。

竜也はそう思い、ふうと息を吐いた。





………………





戦いは終わった。

広大な駐車場に、撃墜されたコーカサスの残骸がいくつも落ち、沈む夕日がそれを美しく照らしている。



「プルトーネは見ての通り整備に手間がかかってね、滅多な事じゃ出せないんだ、ごめんよ」

「いえ、助けてくれただけで感謝してます、それに、車まで貰っちゃって………」



使い物にならなくなったジープに代わり、新しい車を与えられた竜也とエマは、再び拠点に向かおうとしていた。

紫とカオルは、それを見送りに来ていた。


車を与えてくれただけでなく、紫は地下の整備ドックにあったタイタンギア用の弾薬や資材、バッテリーを提供してくれた。

何から何まで、感謝してもし切れない。



「それと竜也、ガンドラグーンを整備していた時に、機体の中にブラックボックスが見つかった」

「ブラックボックス?」



神妙な顔で、カオルが竜也に警告するように言う。

ブラックボックス。

つまり、ガンドラグーンの内部に、未知の機関が存在しているという事。



「あのタイタンギアには未知の機能が備わっているという事だ、気をつけてくれ」

「は、はい」



当初は竜也の失礼な発言から嫌悪感を見せていたカオルだったが、心の底から嫌ってはいないようだ。

一緒に戦った事もあり、親切に教えてあげている。



「それじゃ、次に会う時も敵じゃない事を楽しみにしているよ」

「はい、こちらこそ、それでは」



エマがアクセルを踏むと、車は走り出す。

ホテルを離れ、街の方へと走ってゆく。



「さて、こっちは散らかった駐車場の掃除でも………」



見送りを終え、戦いで散らかったコーカサスの残骸を片付けようと紫が振り向いた。

その時。



「………ぐっ?!」



突如、紫の胸に痛みが走る。

目を見開き、苦しみながらその場に倒れる。



「先生!これを!」

「あ、ぐ………!」



すかさずカオルが駆け寄り、懐から薬らしき物を取り出し、紫に手渡す。

紫は、苦しみながらもそれを口に投げ入れ、飲み込む。

水が無いので少し痛むが、そんな事は言ってられない。



「はあ………はあ………ふう」



薬を飲んでしばらくすると、紫は落ち着きを取り戻した。

痛みは引き、呼吸を落ち着かせる。



「………発作のタイミングが、前より短くなってるね」

「先生………」

「時間はあまり無いって事だろうね、急がないと………」



紫とカオルの目の前で、夕日が沈んでゆく。


それはまるで、紫に残された「タイムリミット」が着々と迫りつつある事を、暗喩しているようにも見えた。

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