プロローグ「そして今日も日は昇る」
※注意事項※
前作「光輝士セイグリッター」、前々作「セクサーロボ!」と同じように、この作品は製作者の趣味で作られております。
熱血青春や、硬派な漢の物語を期待する方は見ないでください。
本作品はデスゲーム・サバイバル物ですが、作者はデスゲーム物の事もサバイバル物の事もあまりよく知りません。
至らない点は多々あるでしょうが、ご了承ください。
また本作品は「仮面ライダー龍騎」「機神大戦ギガンティック・フォーミュラ」等に影響を受けております。
展開、キャラクター等が一部酷似します。
というか、ほぼ龍騎です。
ご了承ください。
………………
【刀光剣影 (とうこうけんえい) 】意味:殺気がみなぎり、今にも殺し合いが起こりそうな雰囲気のこと。また、戦いの激しい様子。刀はきらめき、剣の影はちらつくという意味から。
………………
気がつけば、朝が来ていた。
半開きの目に、割れた窓から差し込む光が射す。
「うう………うんっ」
男は、気だるさの残る身体を、ゆっくりと起こした。
ベッド代わりにしていたソファーから、ぱさりと、汚れた毛布がずり落ちた。
この所、携帯のアラームに頼らなくとも早く起きれるようになっていた。
健康的な生活を送れていると言うべきなのだろうが、素直には喜べない。
側に置いてある机には、昨晩夕食とした食べたインスタント食品と惣菜の容器が、乱雑に置いてあった。
「………朝、かあ」
ようやく一晩越せた、と、男は拭うように顔を手で擦った。
ふと、眼前の机に、顔が写った。
彼の顔だった。
「………酷い顔だ」
自分の顔でありながら、彼はそう言った。
確かに、僅かであるが髭が延びている。
この所、剃る余裕もないからだ。
元より彼は自分の見た目について良くは思っていなかったが、最近はとくに酷い。
ふうとため息をついた後、彼は顔を上げる。
視線の先にあるのは、もう一つのソファー。
もう一人、そこには眠っている。
そけに居たのは、女。
ブロンドの髪をした美しい女が、すうすうと寝息を立てて眠っている。
醜い自分とは正反対だと思いながら、男は、そのほどよく肉付きのいい身体に手を伸ばす。
そして………。
「………エマさん、朝だよ起きて」
優しく、彼女の身体をさすった。
「………ううん」
すると、彼女もゆっくりと目を開いた。
サファイアのような青い瞳が、太陽光を反射してキラキラと光る。
「あ………」
ふと、二人の目が合った。
少し照れる男に、女はにっこりと笑いかける。
「………おはよう、竜也くん」
男は嬉しかった。
当然だ、美女に微笑みかけられるだけでなく、挨拶もしてもらえるなんて。
男からすれば喜ぶべき事態なのだろうが、素直に嬉しいとは思えなかった。
「………おはよう、エマさん」
自嘲するように情けなく、男は彼女に笑いかけた。
「ともかく、朝御飯を食べたらここを動こう、こうしている間にも敵が………」
優しげに、女に話をしている。
その時だった。
………ズドンッ!
轟音と共に、大地が振動し、彼等のいる建物が揺れる。
「きゃあっ!?」
よろめき、女が男に抱きついた。
それまでの日常なら喜ぶべきシーンだったが、今はそんな場合ではない。
「て、敵襲かあっ!」
男が声を荒げた瞬間である。
彼等の眼前、窓から写る外の風景に、突如として巨大な土埃の塔が立ち上がる。
そしてそこから、巨大な一角のヒトガタが現れた。
ビル一つ分の大きさを持つ、巨大な一本角が特徴の機械仕掛けの巨人「マーズトロン」だ。
『ハロー!クソッタレがぁ!目覚め代わりの一発をプレゼントしに来たぜぇーーッ!』
頭の悪い声が、マーズトロンの拡声器から響く。
そしてマーズトロンは、その太い腕を大きく振り上げる。
腕はハンマーのように、マーズトロンの眼前にある建物に。
男と女のいる建物に、叩きつけられた。
ズドンッ!!
その一撃により、彼等のいたビルは、積み木を崩すがごとく崩壊した。
秒もかからず、一撃の出来事だった。
「ははははっ!ざまあみろ!!」
二人が死んだと思い、マーズトロンの搭乗者は下品に笑った。
操縦席のモニター越しに、崩れるビルを見つめている。
その時。
「………へ?」
突然の事であった。
ビルの崩壊により立った土埃の向こうから、赤い腕が延びてきた。
それは、マーズトロンの頭に真っ直ぐに伸び、掴みかかる。
そして。
「うおおおおおっ!!」
土埃を掻き分け、赤い機体が現れた。
二本の角を持った、鬼とも竜人とも取れる機体だ。
「こ、こいつ!?」
「だああっ!!」
驚く、マーズトロンの乗組員。
赤い機体に、女と共に乗った男は、操縦席のレバーを前に倒した。
すると赤い機体は、マーズトロンの頭を掴んだ腕とは逆の腕で、マーズトロンに向け、殴りかかった。
ドガシャアアッ!
金属と金属のぶつかる音が響き、殴りつけられたマーズトロンが、後ろにあったビルに激突した。
「ぐわあああ!?」
崩壊したビルの下敷きになるマーズトロン。
これでも、まだ倒されてはいないだろう。
「………何故だッ!?何故こんな事に………!」
男は自問する。
何故こんな事になったと。
何故こんな事になっているのだと。
だが、誰も答えてはくれない。
誰も教えてはくれない。
現実は、ただそのまま、男の前に立ちふさがっていた。
『テメェ!生意気な真似しやがって!!』
拡声器越しの下品な声が響き、瓦礫の下からマーズトロンが現れる。
今は、考えている場合ではない。
「この………舐めるなァァァッ!!」
まずは、目の前の敵を倒すのが先だ。
男は赤い機体を、マーズトロンに向けて突撃させた………!