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狩猟と迫る試練


[あいつが行方をくらましただと!?]

屈強な体をした男が言った。

[その通りだ。アラン。だが、大丈夫だ。あいつは森を抜けて国境を目指してるらしいから、国境を封鎖すればいい。国境とはいえ森の中だ。人目につかないからあいつらを使えばいい。]

いつも話してる二人のうちの初老のほうの男が言った。

[いや、あいつらはまだ子供だ。実戦で使うにはまだまだだろう。それにあいつにはかなわないだろうな。そうだな、俺が行こう。

[それは、困る。お前はあいつと違って[力]を持っていないだろう。]

[忘れたか?あいつはこの俺が育てた。[力]のこともよく分かっているつもりだ。なにより、生身の人間で、あいつに対抗できるのは俺ぐらいだろう。]

[そうか‥無事に帰ってきてくれ、お前がいなくなったら昔からの顔見知りがいなくなってしまうからな。]

[そうだな。必ず連れ戻してみせるさ。]





気づいたら朝だった。ノアは目を覚ました。と、右側にいたゾーイがいない。左側を見てはっとした。ノア以外誰もいないのだ。よく見るとみんな家のそばや中にいるようだ。ノアも眠気まなこで起きあがって、家に近寄った。。

[おはよう]

ノアが挨拶すると、

[お、熟睡してたじゃねえか。もういいのか?]

外で槍の手入れをしていた村長が声をかけてきた。

[うん。もう大丈夫だよ。]

[そうか、じゃあ外に座って待っとけ。今日は狩りに行くんだ、たくさん食べて、力つけないとな。はっはっは]

ノアは外に腰をおろした。見るとエリックとクリスが槍の手入れをしていた。その後家の中を見ると、なんとゾーイがイーヴァやポーラに囲まれて料理をしていた。包丁の使い方にかなり苦戦しているようだった。

[え?なんで?ゾーイが料理をしているの?]

イーヴァが言った。

[なんかやりたいんだってさ。でもそれにしてもあんたは本当に料理が下手なのね。]

ポーラも言った。

[女の子が料理できないのはきついわね。]




ポーラやイーヴァのおかげでなんとか料理は形になった。みんな苦笑しながら食べていた。ゾーイにもう料理はやらせない方がいいな。朝食も食べ終わって、狩りに行く準備をした。といっても、ノアはシールド、ゾーイはロングソードを手にしただけだ。他に持つものはない。

[ふふーん。どう?]

そこにイーヴァがやって来た。イーヴァは他の村人と違って弓矢を持っていた。動きやすくするためなのかずいぶんと軽装だ。

[すごい。その弓矢似合ってるよ。]

[でしょ?これで鹿や猪を仕留めるんだから。]

さらに、村長とエリックとクリスがやって来た。みんな鎧を身につけて、ただえさえ大きい体がますます大きく見える。

[行くぞ。]

村長が言ったのを合図に、ノアたちは森の中に足を踏み入れた。この森はもうずっと見てきたから慣れてしまった。しばらく歩いていると向こうからかさかさという音がして猪が出てきた。

[猪だぞ。狩れ!]

村長が叫ぶのが早いかエリックが槍で一撃を食らわせた。そこにクリスも追撃をくらわす。

[おい!クリス!無駄なことをするな。むやみに傷つけて食べるところが減ったらどうする。]

エリックが言った。

[俺が仕留めようと思ったら、お前が横取りしてきたんだろうが。]

[お前が遅いだけだろ。]

[まあいい。次は絶対俺が仕留めてやる。]




ノアたちはさらに森の奥に進んでいった。と、またもや奥で物音が聞こえる。

[そこだ!]

クリスは真っ先に走りだして音のする方へと向かっていく。だが、次の瞬間、クリスの体は宙に飛ばされていた。幸い尻餅をつく程度で済んだのだが、お腹に赤黒い痕が‥。クリスはお腹を負傷していた。ノアはすぐに駆け寄り、手当しようとする。そんなことをしている間にクリスを吹き飛ばした主が姿を表した。鹿である。とても角が大きくて、とてもじゃないが前から攻めて勝てる相手ではない。鹿はノアとクリスの方へと向かって来る。ノアもクリスも顔面蒼白になってしまった。と、ゾーイが鹿に向かって、ものすごいスピードで駆け出した。鹿の背中に一撃をくらわせると、鹿が振り返るよりも速く、ゾーイは鹿の頭を一刀両断していた。

[すごいわ!こんなに狩りが上手い人なんて見たことがないわ。]

イーヴァはつい叫んでいた。

[ゾーイ。お前がここまでできるとは期待していなかった。よくやってくれた。]

村長も言った。

[いや、ちょっとクリスのこと忘れてない?]

ノアがクリスを手当しながら言った。

[あの馬鹿。向こう見ずに突撃するからこうなるんだ。お前の腕じゃ叶いっこないんだから大人しくしてればいいものを。ノア、どうだ。]

[鎧を来たままだとうまく出来ないよ。まあ、鎧の上から包帯を巻いておいたから、後は帰ってから手当するよ。]

[そうか、すまないな。じゃあ俺がクリスをおぶって行くから。その後は任せていいか。]

[うん。分かったよ。]

仕留めた獲物はゾーイと村長で手分けして運んで、エリックはクリスをおぶってなんとかイリス村までたどり着くことができた。ノアはクリスの手当をして布団に寝かせた。








ノアたちがイリス村に寄ってから4日が経った。クリスのケガはだいぶよくなり、狩りが出来るほどではないが、日常的な動きが出来るようになった。ノアとゾーイは村長 、エリック、イーヴァと共に何度も狩りに出かけた。獲物がとれない日もあったが前日の残りでなんとかなった。ノアは、狩りをしないときは、村の人々や子どもたちといろんな話をしたり、イーヴァやゾーイに本を見せて過ごした。

[ねえ、この森の向こうには何があるのかしら?]

イーヴァが訊ねた。

[北には山が、南には草原があるよ。]

ノアはそう言って、本に載っている写真を見せた。

[この絵、すごい細かいわね。]

[いや、これは写真っていってね、光を焼き付けたものなんだ。]

[すごくきれいね。特にこの草原っていうやつ、黄緑色がずっと続いているなんて、私も草原に行って見たいわ。]

[僕たちはこれから隣国のクリムゾンに行くから、この草原を初めて生で見ることが出来るよ。]

[本当?私も行きたいなー]

[行きたいなって言われても、ほら、言った通り僕たちは警察に追われてるんだから一緒に来ると、イーヴァまで命を狙われてしまうよ。]

[そんなことがあったら私の矢で倒してやるわ。]

[でも、警察は拳銃も使って来るんだよ。勝てるの?]

[拳銃もうちにあるのよ。前、イリス村に迷いこんだ人がくれたのだけど、使ってみたら私の矢の方が威力があったのよ。だから大したことなんてないでしょう?]

[それは、すごいね。]

確かに、何回か、イーヴァの狩りを見てきたが、確かにイーヴァの矢は獲物を貫通するほどの威力があった。

[まあ、連れていってもいいけど、村長とポーラには言わなくていいの?]

[そんなの関係ないわよ。イリス村では、というか周りの村もそうなのだけど、熊を倒すと、この村を離れることができるのよ。とは言っても、大半の人はここイリス村に残ったり周辺の村に行く程度なんだけどね、]

[なるほどね、じゃあ明日にも熊を倒せばいいってことだね。]

[あ、それと、熊は一人で倒さなきゃいけないから。手出しは無用だからね。]

[分かったよ。]






ノアの父は郵便局に出かけた。といっても小さいところだが。錆び付いて重くなった扉を開けると、受付の者に

[ベネディクト・ルースだ。カイルを呼んでくれ。]

[カイル、ですか。承知しました。]

受付の者が奥に消えていって、しばらくすると、金髪で丸顔の優しそうな青年が出てきた。

[ベネディクトさんですか。用事は中で伺います。どうぞ、こちらへ]


言われるがままにノアの父はカイルの後についていって奥の部屋に案内された。窓もなく、家具も置いてない殺風景な部屋だ。カイルは部屋の鍵を閉めた後、言った。

[今回はどうしたんですか?久しぶりじゃないですか。ここに来るなんて。]

[ちょっとクリムゾンに送ってもらいたいものがあってね。]

そう言うと、ノアの父は一通の手紙を取り出した。

[こちらの者にチェックされると困るんだ。秘密裏に送れるか?]

[もちろんですとも。]

[では、頼んだぞ。]





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