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狩人と獣

ノアたちは魚を焼くために火をつけようと思ったがあいにく落ち葉なんてものは落ちていない。しょうがないので木の枝を折ってきてそれを燃やすことにした。ノアはリュックからマッチを取り出して火をつけた。周りが暗いので火はとても目立つ。

[魚を突き刺すものとか持ってたりしない?]

ノアがゾーイに尋ねるとゾーイは自分の持っていた剣を取り出した。

[え?剣で刺すの?]

[うん。]

ゾーイはそう言いながら魚を剣で刺して火に炙っていく。しばらくすると食べられる頃合いになったので外して食べようとする。魚は剣で刺されたせいでぐちゃぐちゃだったが、うまい具合に骨と身が分離していて、骨を間違って食べずに済んだ。この魚が食べられることは知っているが捌き方など 知らないので手当たり次第に身をほじるしかなかった。




魚も大概食べ終わって火に暖まっていたところ、遠くからなにかが近づく音がした。よく目を凝らして見ると、人のようだ。

[おーい!お前たちなんでこんなところで焚き火なんかしてるんだ!ってお前ら、武器屋にいたガキじゃないか。本当に死にに来たのか?]

[あ、僕たちを馬鹿にしてきた、おじさんだ。ここで、食事を取ってるだけだけどなんかおかしいことでもあるの?]

[おかしすぎるだろ!まず、獲物の前で食事をとる狩人がどこにいるんだよ。しかも火を焚いて目立つばかりじゃないか。]

[え?僕たちは狩人じゃないよ。]

[は?じゃあなんでここにいるんだよ。]

[僕たちはクリムゾンに行こうとしてるんだよ。電車に乗りたかったけど訳あって乗れなくて、歩いて行ってる最中なんだよ。]

[無謀だな。これまた。地図と方位磁針は持ってるのか?]

[うん。]

そう言ってノアはカバンの中からそれらを取り出した。

[今から南の大きな大樹のそばにある集落に寄ろうと思ってるんだ。]

[集落だぁ?そんなもんあるか、ボケ。貸してみぃ。]

そう言うと男はノアの地図をひったくって、男の持っている地図と見比べてみた。

[この地図、なんなんだ?狩人協会から渡されたもんじゃないな。お前、この地図をどこで手に入れた。]

[どこって家にあったけど。]

[国印が押されてないな。少なくとも、国が許可した地図じゃないってことは分かる。その違法に作られた地図に書いてあることが本当だとすればだ、その集落は国によって意図的に隠されたってわけだ。その存在を知ってるということは、お前ら国に消されるかもしれないぞ。]

[いや、もう消されかけてるよ。]

[どういうことだ。]

[そこのゾーイは施設から抜け出して追われてるんだ。]

[施設?]

[僕もよく分からないけど、ゾーイは生まれてからずっとそこにいたみたい。]

そのとき、後ろからうなり声が聞こえた。一同が振り替えると、そこには[熊]がいた。熊は熊でもただの熊ではない。体毛は青く、目は赤い。体長は2メートルほどあって爪は透明、アスルグマである。ノアたちは鞄を下ろして一斉に武器を構えた。

[お前たちに構っていたら獲物のほうからのおでましか、手間が省けたな。]

熊はノアたちに構うことなく男に襲いかかってきた。男は背中に担いだ大剣を構え、応戦した。熊の爪と剣が甲高い音を立ててぶつかり合う。だが、熊の方は片手が空いているので、もう片方の手で男を攻撃しようとする。あ、危ない!ノアはそう思った。ゾーイは咄嗟に拳銃を撃ったが熊には効いてないようだった。だが、男はノアたちの予想を裏切った。今受けてる爪を受け流し、熊の、両手を上げてがら空きになった腹を攻撃した。さらに、動きが鈍くなったところを脇からすり抜けて背後に回り、背中にもう一撃を食らわせた。熊は振り返って攻撃しようとするが、男はしゃがんで両方の手とも回避し、大剣を置いて、短剣を取り出し、飛び上がって首の側面を攻撃した。熊は大きな音を立てて倒れた。

[すごい!攻撃を見ていて熊のことを熟知してる感じがするよ。]

[まあ、これでも狩人になって長いからな。]

[熊はおじさんしか狙わなかったけど、どうして?]

[そりゃあこれを持っているからさ。]

そう言うと、男は赤い布を取り出した。

[うわ、臭い!]

[鹿の血を使って染めた布だから、臭いんだ。これを使って熊をおびき寄せる。]

男はナイフを使って熊の手をとって、リュックの中に入れた。

[これが目当てだったんだよ。]

[これは何に使うの?]

[使うんじゃねえ、売るんだよ、アクセサリーとかにするんじゃないか?よく分からんけど。]

[ふーん。そうなんだ。]

[俺はすることも終わったし帰ることにするぜ。嫌な予感しかしないが、死ぬなよ?]

[ゾーイがいれば大丈夫だよ。、あ、そういえばおじさんの名前聞くの忘れてた、僕はノアだけど、おじさんは?]

[なんだ?二度と会うこともないだろうに。名前なんか聞いてもしょうがないだろうに、ったく、フランクだ。じゃあな。]

そう言うとフランクは北へと帰っていった。フランクの姿は木々に隠れて瞬く間に見えなくなり、森に静寂がもどった。ノアたちは集落に向けて歩き続けた。



数時間ほど歩いて来て、かなり日が傾いて来たのが木々の隙間から分かる。

[日が落ちる前に食事を済ませないと。]

そう言うとノアは周りから食べられる実を見極めて持ってきた。ソートラに加えてソートラより一回り大きくて細長い実もあった。

[この、大きい方の実は、コイチって言うんだ。コイチの木にできるよ。大きいから食べごたえがあるかもね。]

そう言うとノアはコイチにかぶりついた。とてもみずみずしい。ソートラよりも味が薄いような感じはするが、食感もしゃきしゃきしていて美味しい。ゾーイも珍しそうに食べる。そんなことをしていると周りが暗くなってきた。

[夜、真っ暗の中動くのはきついから今日はここで、休もう。]

[うん。]

下に敷くものなんてないからノアは地べたに横になって寝ようとする。一方のゾーイは木に寄りかかって座っていて寝そうにない。

[ノアはまだ寝ないの?]

[うん。]

[そうかー。]

ノアは目を閉じた。




[あいつが入ったのは村の医者の家でした。]

[ベネディクトか。あいつは以前、王宮で働いていた役人だったらしい。詳しくは知らないが、彼は何か問題をおこして[島流し]にされたんだ。]

[だから他の地域からの交通が困難で、情報も一切入ってこない隔離された村であるアロースにいるわけですね。]

[そういうことだ、彼は当然、国の秘匿情報を知ってるだろうから、あいつの件も知ってるかもしれない。もしかしたらこちらも知らないようなことが関係してるかもしれないな。ひとまず彼に聞くことで何か分かるかもしれん。]





ノアの父は仕事を終えて家に帰って来たところだった。ノアがいなくなってから2日が経った。居たら居たでうざったかったが居なくなると今度は1人になってしまって寂しいものだな。ノアは無事だろうか。ゾーイがいれば大丈夫だと思うのだが。かわいそうなことをしたな。でも、これもお前のためなんだ。許してくれ。突然車が来る音がした。車?こんなところに?いったいどうしたんだ?車はノアの家の前に止まって中から警察官が二人出てきた。いや、警察は警察でも幹部のやつだな。服が違う。一般的な警察官が青いスーツなのに対してこいつらは紺だ。すぐにノックの音がした。

[警察だ。ベネディクト・ルースだな。]

[どうしたんだ。]

[一昨日、この家に来たやつがいるだろう。そいつについて聞きたい。]

[ああ、確かに一昨日に来たやつはいる。倉庫の米をむさぼり食っていたから止めさせて家に泊めた。そいつは傭兵になるためにクリムゾンに行きたいと言っていたから道案内に息子を一緒に連れていったが、それがどうかしたのか?]

[実はあいつは殺人犯として捕まっていたが、脱獄して逃亡しているんだ。現にお前の息子と共に行動している時も警察官を3名殺した。]

ほお?こいつらは私がゾーイについてどのくらい知ってるか分かってないようだ。私の名前をわざわざ出してきたということは、てっきり私の過去を含め、すべてを知ってるのだと思ったが‥

[なんだと?それで、私の息子は大丈夫なのか?]

[それが‥‥私の部下が列車の中でお前の息子と一緒にいたあいつを追い詰めたが逃げられてしまって、それから二人とも消息が分からない。]

良かった。ゾーイはなんとか逃げているか。

[ああ、‥道案内をさせただけなのに、こんなことになるとは思わなかった。頼む、どうか私の息子を無事に保護してくれ。]

[ああ、分かった。お前はあいつについて他に知ってることはないか。]

[いや、ない。すまないが、もう立ち去ってくれないか。事実と向き合う時間が欲しい。]

[ああ、悪かったな。]

そう言うと二人はルースの家から出ていった。





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