第8話 生きるということ
感想、御指摘ありましたら、是非お願いします。
―――王都郊外サヘル村
村の中心地から幾ばくか離れた場所にその丘はある。村と王都が一望出来る場所にアンナの両親の墓は建てられていた。
時期は春になるだろうか、暖かい風が全身を抜けていって少しこそばゆい。
「お父さん、お母さん……」
墓石の前でアンナは両手を組み膝立ちする。
「私はもう逃げも諦めもしないと誓います。私を守ろうとしてくれたこの命お父さん、お母さんの生きた証。精一杯…うっ……」
アンナの目に涙が滲み出るが、落とさないよう気丈に振る舞っているのが見えた。
「……精一杯、生き抜いていきます。どうかここで見守っていて下さい。」
アンナは祈りを捧げ終えるとこちらを振り向いた。
「死神さんにはお世話になりました。本当は早く両親のもとに逝きたいのですが、まずはこの命を精一杯使っていこうと思います。」
あ……うん。そだね。
結局、あたいは彼女をヴァルヘルムに送るのを見送った。
本来なら自殺しているはずの彼女に干渉し、生きる選択肢を与えられたのだ。
ラグナロクなんか知ったことではない。しかし……
アンナ!!次死にそうになったら迎えに来るからな。それまで死ぬんじゃないよ!!
「姉御……何言ってるかあたちちょっと分からない。」
大丈夫だ。あたいも分からん。
「………ウフフ。可笑しな死神さん。」
二度目のアンナの笑顔にはもう陰りはない。本来の笑顔はこんなにも素敵なんだと思わず蕩けていると不意に脳内から声が聞こえてくる。
「なんじゃぁ〜〜!!この変態は!!スケバン戦乙女よ!!お主エライもん送りつけおってぇ!!」
いや、聞こえてこない。
それじゃあ、アンナ。あたいはこれで失礼するよ。……間違ってもまた死のうとするんじゃないよ!!!
「はい!」
アンナの目には光が満ちていた気がした。
春の風がこそばゆい。あたしは早々に戦乙女降臨と唱えた。
とりあえず一章完結です。
ギャグ書こうとするとシリアスになる。シリアス書こうとするとふざけてギャグを入れてしまう。
あると思います。
次章はもっと明るい話になるはず、、、