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逆さ虹の森の大冒険  作者: 美作為朝
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3 根っこ広場

 天界王の刑罰とは別個に、逆さ虹の森はどんどん深くなっていきます。いろんな葉っぱが生い茂りもはや月の明かりすら、地上には届きません。

 藪や葉っぱや木の根っこが動物、仙人たちの一行の行く手を阻みます。

 一行のなんだか急に暗くなり足元が悪くなってきました。


「クマさん、もうちょっと離れてくれる?あるきにくいんだけど」


 お人好しのキツネが言いました。


「だって、暗いし本当に怖いんだよぉ」


 とクマさん。仙人は怖がりのクマの肩に乗っています。

 結構ずるいです。

 この狡さで虹の洗濯を手抜きして落としたのかもしれません。


「やっぱりクマさんどんどんくっついているよ」


 お人好しのキツネが文句を言うときはそれは事実です。


「でも距離をとったよ」


 とクマが珍しく反論します。


「おい、クマ、俺は弱虫は嫌いだぞ」


 アライグマがクマに凄みます。


「ぎゃああああああああああああ」


 途端クマが悲鳴をあげました。肩に居た小さな仙人が驚いて飛び上がります。


「根っこが動いているぅ!」


 最初に気付いたのは、飛んで移動している歌上手なコマドリです。動物たちは無表情なヘビを除いて大騒ぎです。いや無表情ながらヘビも驚いています。いつもより青い舌のピリピリが少しだけ早くなっています。


 この一帯の深い木々の根っこはお互い絡み合い、どの根がどの木の根か一切わかりません。しかも、この闇夜で足元不用意。動物たち全員がひょいひょい歩きで根に絡まいないように必死足を上げて先を急ぎます。

 こういう運動会の競技がありそうです。ないかもしれません。

 動物たちも漸く、状況が飲み込めてきました。根っこは絡み合いながら確かにニュルニュルと動いています。

 その目標は、お人好しのキツネです。

 ここ、<根っこ広場>の<正直者の木>の根は"嘘つき"に絡みつくのです。食いしん坊のヘビには悪いですがまるで獲物を見つけたヘビか、タコの足のようにニュルニュルと迫ってきます。


「みんな逃げろ!」


 暴れん坊のアライグマが大声をあげます。アライグマも<正直者の木>の根っこの目標になっています。なぜなら、倒したこともない相手の肝を食べたと嘘をついているからです。

 アライグマは拳闘タコのある小さな拳で根っこを殴りつけ戦います。

 お人好しのキツネはしょうがありません、みんなと仲良くするコツはある意味嘘をつくことだからです。


「急ぐんじゃが」


 仙人は熊の肩に居るのから掛け声だけでよく楽なものです。


 一番の目標はキツネとアライグマですが、<正直者の木>の根っこたちはほぼ動物たち全員に襲いかかります。

 なぜなら、ほぼ全員大なり小なり嘘をついたことがあるからです。この世に一切嘘をついたことのない人、いや動物、木々植物、昆虫などいません。 

 この<根っこ広場>の<正直者の木>も少し困ったものです。この木々も本当に正直なのでしょうか?。恐らくそう思いこんでるだけでしょう。その証拠にこの広場の根っこは自身で絡み合っています。世の中本当に難しいものです。

 アライグマは得意の小さな拳のパンチを根っこにあててどうにか善戦していますが、キツネは肩まで根っこに絡まれ、もう根っこの波、いや海に飲み込まれそうです。


「助けて、、、」


 その時、根がたくさん生えているであろう地の底から聞こえるような低い世にも恐ろしげな声が聞こえました。


「おーまーえーも、嘘をついているだろ、根っこで絡め取って地中に飲み込んでしまうぞぉおおお」


 言われたのは、怖がりのクマです。怖がりのクマは怖がりなだけにほとんど嘘をついていません。


 歌上手のコマドリがルート音に2度3度のフラットで出来た。マイナー調の劇伴げきはんを重ねます。ゴジラのテーマもこの音の組み合わせを逆さまにしてほぼ出来ています。


「ひぇええええええええええええええええ」


 恐怖に駆られたクマはあたり構わず、暴れまわり、根っこを叩きのめし、あるいは食いちぎり、まさにこの死地の中に活路を見い出していきます。 

 お人好しのキツネもどうにか、クマによって根っこから救い出されました。

 この一大事にも食いしん坊のヘビは青い舌のピリピリがちょっと減っただけで無表情のまま根っこの間をすり抜けて<根っこ広場>を端までたどり着きました。無表情は最強です。

 クマの奮闘により、全員が下生えの草地のところまで到達しました。

みんな肩で息をし息もえです。


「根っこの声は僕がやってたんだよ。クスクス」


 いたずら好きのリスが言いました。

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