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シューベルトP  作者: mgmg
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もしも、シューベルトがアイドルグループのプロデューサーになったら?

こんにちは。フランツ・シューベルトです。

そう挨拶をしたら、大抵の人はジョークと取って愛想笑いをするか、大丈夫かこいつ?という目で訝しむだろう。

私は現在、「田中 修司」という存在で人生を過ごしている。ややこしい自己紹介で申し訳ない。しかし、私には所謂「前世」の記憶がある。そして、私の前世はフランツ・シューベルトなのだ。

27年前、おぎゃあと母の腹から生まれた私は軽い絶望感を覚えた。1828年に病気で死んだ私が、1989年に生まれ変わったのだ。しかも日本人として。

前世の記憶を持ったまま田中修司として育ってきた私は、それはそれは気味悪がられながら生きてきた。子供の癖に泣かない、騒がない、我侭も言わない。成熟した精神が、母と幼稚園の先生をむしろ困らせていた。そのため、ある日母に、「五線紙がほしい」と言うと泣いて喜ばれた。

私には父がおらず、母しか家族がいなかった。母は朝から夜まで働きに出ており、私が夕餉を作り、母の帰りを待つ、というのが日常茶飯事であった。


テレビや新聞で見る限り、私は死後の世界で非常に有名になっていたそうだ。演奏会で私の曲がよく演奏されるし、学校の音楽室には私の顔写真が飾られていた。

私が音楽で収入を得るようになったのは非常につまらない教師生活を抜け出してようやく、といったところなのに、今の時代は勝手に人の曲を我が物顔で演奏し金をむしり取っていく。

なんと嘆かわしい!私の曲は勝手に編曲されているし、校訂が終わっていない「冬の旅」も勝手に手が加えられ、勝手に出版されている。さらに、現在流行っている「JPOP」とかいう音楽は私の理解が及ばないところにある。見た事のない楽器をやかましく鳴らし、歌は歌うというよりも喚いている。モーツァルトのリートよりも品がない。

「クラシック」と呼ばれる音楽は、JPOPよりはましだが、まるで幼子の鼻歌のように幼稚であった。なによりも、これは音楽なのか?と問いたくなるような「現代曲」に関しては、現代の人も「判らない」というのだから、たまったものでない。


私が生きていた頃とは明らかに生活の質も音楽の質も変わっている。これに順応して生きていかねばならぬ。と幼少期に硬い決意をした。また作曲家として返り咲こうとしたが、家が貧乏であった為大学に行けず、高校を卒業してテレビ業界の仕事に就いた。機械をいじり音量を調節する仕事を何年か続けた後、ADとなり、趣味で作曲を続けていた事が会社の偉い人にばれ、コネを使って作曲の仕事が貰えるかと思いつつ、テレビ業界でずっと仕事をし続けた結果。


「プロデューサー、おはようございます!」

「おはようございます!よろしくお願いします!」


「…おはよう」


フランツ・シューベルト、もとい田中修司。アイドルグループのプロデューサーになりました。

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