自己紹介
というわけで、俺は部室へと入った。珍しいことに、歓談部のメンバーが全員揃っている。歓談部は全7人である。1年と3年が2人ずつ、そして2年が3人所属している。
「こんにちはー」
俺が挨拶をすると、全員が挨拶を返してくれた。まあ、バラバラだったから誰がどう言ったのかは聞き取れなかったが。
部室の中心に置いてある大きな机を囲むようにして、他の6人が座っていた。特に座る場所の指定は無いが、学年毎に固まる傾向がある。だから、俺は同学年の月宮早織の隣に座った。
「よお月宮姉と月宮妹」
腰まで届く長くて綺麗な茶髪をポニーテールにしていて、凛とした顔立ち、少し胸が寂しい気がするがそこを抜けばかなり可愛い部類に入るだろう。
そして、そんな彼女の隣にはまったく同じ容姿の少女が座っている。そう、この2人は双子なのだ。もう1人の名前は月宮早苗。早織が姉で早苗が妹である。ちなみに、早苗の容姿は割愛だ。見分け方は、髪型でポニーテールが早織、ストレートが早苗。
「なあ終ちゃん、そんなのはいいから雑談しようよ」
「何言ってんすか部長、スピンオフと言えども自己紹介はしておかないと、こっちから見始めた人が混乱しますよ」
背もたれに体を預けた格好で、いかにも面倒くさそうに話しかけてきたのが歓談部の部長の――
「だから終ちゃん、そんなのいいってば」
「何で俺の心の中を読んでるんですか。つーか、部長はまだ本編に出てないんだから、余計に紹介しないといけないでしょうよ」
「いやあ、案外そんなの気にしてない人多いかもよ? ほら、あらすじに書いてる通りに僕が登場した話を見てから来てる人がマジョリティーだと思うな」
「って、さっきから随分とメタな話を……」
仕方無い、サクッと紹介しとくか。
彼は部長の藤原創。ストレートの金髪、中肉中背、ちょっとイケメン。以上だ。
「その紹介は雑すぎやしないかい」
「あんたさっきまで自己紹介なんかしなくていいって言ってたじゃねーか!」
「それは、それ。これは、これ」
「うわあ、卑怯な言葉を! つーかさっきからずっと俺の心読んでますよね!?」
「さあ、部活を始めよう!!」
「無視か! 可愛い後輩の質問ガン無視かこの野郎!!」
部長は突然立ち上がって、奥にある大きなホワイトボードを取りに行った。それを使って雑談をするのが歓談部の活動だ。
雑談とはいえ、一応テーマに沿った話をする。ホワイトボードはテーマのことを書いたりするために使うのだ。まあ、結局いつも脱線するけど。
ああ、今のうちに簡単に部員の紹介をしとくか。
まず、もう1人の3年生だな。それが、今ちょうどお茶を淹れに向かった黒髪の女性である。名前は橘薫。彼女には和風美人という言葉がぴったり当てはまるだろう。肘くらいまでの長さの髪をハーフアップにしている。
また、月宮姉妹と違い、服の上からでも分かるほど胸が大きい。欠点といえば、天然だというところか。
なんか月宮姉妹(特に姉)から睨まれてる気がするが、気にせず続けよう。
俺の隣にいる小っこいのが、1年生の二宮未来。ショートカットの茶髪で、体は(特に胸は)小さいが、とても活発な少女である。結構弄りやすい。
最後に、二宮の隣にいる長身で長いストレートの銀髪の少女が、金原・F・エミリアだ。日本人離れした容姿から分かる通りハーフだ。確か、父親がイギリス人だったか? 中学生になってから日本に来たらしく、まだまだ知らないことだらけのようだ。
長身で中々に大きな胸(胸の話ばかりしている気がするな)と、隣の二宮とは正反対だな。
「黒神先輩、何か失礼なことを考えてませんか?」
「ん、いや、二宮は今後に期待だなーと」
「どこのことを言ってるんですか!?」
二宮が綺麗な八重歯を見せながら迫ってくる。うん、やはりこの子は面白い。
「さて、今日のテーマについて発表しようか」
部長が戻ってきたな。まあ、なんとか全員を紹介出来たからよしとするか。
「テーマは……ずばり『自己紹介』だ!!」
――は?
何言ってんだこの人。しかも得意気に。
「いや、さすがに本編を見ている人がいるとしても、自己紹介は大切だ。より僕らのことを知ってもらうためにも、自己紹介をしようか。じゃあ、薫ちゃんから!」
「ちょっと待ってください先輩。もう全員紹介しましたって」
「いざやるとなると緊張するわね~。えっと、私は……」
「橘先輩!?」
橘先輩、何故かやる気を出してる。
「私は橘薫。えっと、えっと……歓談部の副部長をしているわ」
「…………」
「よし、じゃあ次は」
「え、終わり!? 今ので終わり!?」
「何を言ってるんだ終ちゃん、自己紹介とは簡潔にするものだよ。じゃあ次、早苗ちゃん!」
何故だ、何故俺が間違ってるみたいな空気になっているんだ!
「はーいっ。私は月宮早苗っ。横にいるのがお姉ちゃんの早織だよっ」
「ちょっと、私の分を取らないでよ!!」
「私たちは双子なんだよっ」
早苗はなんと早織の分まで自己紹介をしてしまった。
思うんだが、この自己紹介では読者に部員の容姿が伝わらないだろう。やっぱり俺がやったので十分なんじゃ……
「ほい、次は終ちゃん飛ばして未来ちゃん」
「なんで俺を飛ばすんですか!!」
「あたしは二宮未来! この溢れんばかりの元気があたしのチャームポイントだよ!!」
「何故躊躇いも無く自己紹介を始める!? 俺、先輩!!」
あと、終ちゃんっていうのも訂正させたい。不名誉だ。
「じゃあ、次。エミー!!」
「あ、はい。えと、エミリアと言います。ワタシはイギリスと日本のハーフです」
「んで、最後に部長の僕、藤原創だ! 宜しくぅ!!」
そこまで言って、部長は席に座った。そして、最初と同じく背もたれに体を預ける。
「ふー、これで十分でしょ。今日はおしまいおしまい」
「いやいや、ええ!? 色々言いたいことあるんですけど、とりあえず……俺の紹介をさせろぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺の絶叫が響き、歓談部の今日の活動は終了した。まあ、全員あと1時間くらいはいると思うが。
これが歓談部だ。ちなみに、全員揃うのは稀である。普通は俺を含めても4人くらいしか来ない。特に3年生は受験を控えているため、滅多に来ない。
さて、こんな感じで歓談部の日常を紹介していく。
最後に一言。
自己紹介って、やっぱり大事だよね。