5/6
第五章:曇天
レインに中々会えない。
雨は降る事はあったが、帰るころには止んでしまう日も多かった。
春弥は、だんだん不安になってきた。
卒業までもう僅か。この学校でしか会えない、雨の日しか会えない。レインに会えない現実が、春弥をひどく焦らせた。
時間は無慈悲に流れていく。予報を見ても、傘マークはついていない。
春弥はひどく後悔した。
いつになっても降らない雨、迫る卒業の日。
レインの瞳が、髪が、声が、レインと過ごした記憶が、だんだん錆びて崩れてしまうような。
会いたい。
彼女を忘れてしまわない内に、もう一度、笑い合いたい。自分を成功に導いた彼女に、お礼を言いたい。
春弥の心の叫びは、彼の心の中で何度もこだまし、奥底まで響いた。これが唯一、彼女との記憶を引き戻す、しかしそれも応急処置に過ぎなかった。
彼女の形を忘れれば忘れるほど、春弥は彼女を欲した。
しかし、その強い想いは天に届かず、最後まで、雨は降らなかった。