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俺と神社と神様と

お題

『神社』

『スイカ』

『モノローグ』

 何十匹もの蝉が大コーラスを奏でている夏休み。

 俺は、学校の裏手にある林の中を進んでいた。

 俺の手には、大きなスイカとドライアイスが入ったビニール袋が握られていた。


「あっちぃな、くそ……」


 Tシャツの裾で顔を流れる汗をぬぐうと、俺はパキパキと小枝を踏みしめながら林の中へと進んでいった。

 なぜこんな苦労をしているのかと言えば、それはわがままな神さまのせいである。


「文句のひとつでも言ってやらなきゃ気がすまねえぞ。……ったく」


 そんなモノローグを展開しながら、俺はひたすらに足を動かした。





「おーそーいー!」

「仕方ないだろ、わざわざ駅前まで買いに行ったんだぞ」


 俺は、やっとのことで目的地であるさびれた神社にたどり着いた。

 そんな俺を出迎えたのは、見た目年齢10歳程度の女の子であった。

 しかし、この女の子、実際には(よわい)586歳という超高齢の神さまである。神さまの世界では、これでもまだまだ若造らしいのだが。


「あ、お主また(わらわ)の年齢の事を考えておったじゃろう! 歳のことは考えるでない!」


 さて、この神さまの厄介なところが、今見てもらった通り人の心を読み取れる点だ。

 おかげさまでコイツの前では嘘1つつくことが出来ない。まったく、めんどうな。


「お前がわざわざそうやって子どもの格好してるから余計に年齢を意識しちまうんだろうが」

「はぁ~? わざわざお主の思考を読み取って、お主の嗜好に合わせた姿をしているんじゃぞ! あ、今のはいいシャレになっておったろう?」

「うるせえよ。大体な、俺がロリコンなのは認めるが、俺が好きなのは年齢相応の性格と容姿を持った完璧なロリであって、お前みたいなロリババァは守備範囲外だっつーの」

「むう……。姿かたちは変えられても性格までは変えられないからのう……」


 そう言うと、神さまはくるりと一回転してその姿を子供から立派に成長した大人へと変身させた。見た目はだいたい25くらいか?

 腰まで伸びた黒髪は後頭部でまとめられていて、確かこういうのはポニーテールと言うんだったか。


「ふむ、やはり子供の姿では動きづらいな」

「だったら最初からそっちの姿にすればいいのに……」

「それで、ちゃんと妾の言ったものは買ってきたのであろうな?」


 俺の苦言を無視して神様は催促の目をこちらに向ける。


「ちゃんと買ってきましたよっと。ほら、キンキンに冷えたスイカだ」

「おお! これがスイカか!」


 この神さま、どうやら今までスイカを食べたことが……というより、見た事が無いらしい。

 というのも、この神社に祀られたのはいいが、この神さまが祀られたとたんに神社ごとこの林に飛ばされ、碌に外の世界を体験できていないそうだ。

 俺のようにごくまれに林で出会った人間とコミュニケーションを取っていると、初めて会った時に話していた。


「……別のものを買って妾をだましてないじゃろうな?」


 そんなことするか。嘘だと思うなら心を読め。


「……本当のようじゃな!」


 この読心術、わざわざ喋る必要もないうえに下手な勘違いが起こらないので、その点に関しては便利だ。……クラスメイト相手だとわずらわしい事も多いからな。


「人の能力を便利と簡単に言うのは感心しないぞ」

「人の心を勝手に読むのは感心しないな」


 なんて軽口を叩きながら、俺は鞄から家から持ってきた包丁を取り出す。


「神さま、これで半分にするぞ。スプーンも持ってきたので半分ずつ……」


 と、俺が言い終わらないうちに神様はその右手を刀に替え、スパッとスイカを真っ二つにしてしまった。

 ……そういえば、神さまはこういうのも出来たんだっけ。


「ほれ、こっちがお主の分じゃ。受け取れ」

「いやいや、こっちじゃなくてそっちの大きい方をくれよ」

「何を言っとる。妾の方が年長なのじゃから妾が大きい方を食べるに決まっておろう。年功序列という言葉をしらんのか」

「さっき俺に年齢のことでどうこう言ってた人の発言とは思えないな」

「ごちゃごちゃうるさいのう。なら、妾の方に入ってる種はやろう」

「いらんわ!」


 やけに人間味のある神さまだけど、なんだかんだで、俺はこんな風に神様と過ごす時間を気に入っていた。















「……お? 今のがデレというやつかのう?」

「だから心を読むな! ……ってか、嫌いだったらわざわざスイカなんて買ってこねえよ」

「……そ、そうか」

「なんで照れた」

ついにお題『モノローグ』が五回目だそうで。

今回の話、個人的にかなり気に入ってるので普通に書いてもいいかもしれない。

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