警戒不要の子供に戻っちゃった の巻
黄ばんだパンツを洗われた。
恥ずかし過ぎて、ベッドで半日死んだ。
「パンツが丈夫すぎたんだよ。10年近くも履けば黄ばみもする!」
座りきった目をしながらも、むっくり起き上がる。
寝室に隠っていたが、なんで家主が隠れる必要があるんだ。
パンツを長年はく事の何が悪い!
そもそも恋人でもない男にパンツ見られたとこで、どうだってんだ。
なまじっか美形なだけに狼狽えてしまったが、大した事じゃないじゃないか。
・・・てか、恥ずかしがるほうが自意識過剰で恥ずかしいんじゃないか?
「よし、起きよう。で、やっぱり追い出そう。」
中身が子供だろうと、あんなにでかくなられては、こんな風に意識せずにいられない。
異性とまともな交流が無いまま、30間際まで処女膜抱えて生きてきたのだ。色々拗らせ過ぎてても仕方ないじゃないか。
女としての魅力の欠片も無い、チビな年増のちんくしゃ(クソッたれな友人評価。・・・多少は自覚あり)が、麗しい淫魔にそういった方面で相手にされるとは思っていないが、喪女仕様でいちいち恥じらったり身悶えたりするのも疲れる。
それに・・・ちらりと汚部屋の隅に目をやる。
視線の先には、いつ脱ぎ散らかしたかわからない丸まった汚れ物。
床には書物や調合胴が散乱し、足の踏み場もない。
クンクンと部屋を匂うと、どこからか先週摘んできたドクダミ臭が。
こんな部屋を、あのお貴族さまのような美青年に見られたら・・・。
よし!追い出そう!
無理無理無理。
いくら自虐的なギャグを売りにしている魔女とは言え、生き恥晒し続けるなんて無理。
勢い込んで寝室をでると、作業机兼ダイニングテーブル兼物置棚の椅子に、13、4の子供がしょんぼりと座っていた。
「あ、あれ?」
「ウメ・・・」
「戻っちゃったわけ?」
「すみません。お昼に果物用意したかったけど届かなくて」
庭の木は高くはないが、脚立もなく子供の手が届く程は低くない。
昼抜きなんて普通だから気にする必要はない。
が、沈鬱な横顔が眼福なので慰めるのはやめておこう。
美少年の生憂い(?)が自宅でただで見られるなんて、ついてる。
くるりと見渡すと、朝の食事の後片付けも終わっていて、水瓶には新しい水がたっぷり入っている。
「明日のお昼には何か作ります」
可愛らしく拳握っちゃったりして。
あーあ。またしても追い出す理由が無くなっちゃった。
もう、腹をくくって同居するしかないか。
その夕方。
テーブルで薬を作っていたウメは、ナイチンゲールが洗濯物を取り込んでいるのに気が付いた。
なんかこそこそしてるなーと思ったら、ヨレヨレのキャミソールやら伸びきったパンツやらがシーツの隙間から見えていた。
あーあれ、今から畳まれて、ウメのぐちゃぐちゃのチェストに仕舞われるんだなーと考えた。
己の心を覗いてみる。
・・・羞恥心は湧かない。
よし。問題なし。
こうして処女魔女は、喪女歴を更新していくのだった。