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牡羊譚  作者: 毛野智人
6/13

(六)

 ある年の春のこと、例年通り秋に種を蒔いた小麦が芽を出す時がやって来た。しかし今年は様子がおかしい。国中の農夫達の声が集まり、ついに王宮に緊急事態の報せが届いた。

「陛下、大変でございます」

「いかがした?」

「畑の民達から…麦の芽が出ないとの報告が!」

「何? どの地方においてのことだ」

「全土にございます」

「何だと?」

 ボイオティア中の畑の小麦が芽を出さない。アタマス王が治めるボイオティアの地は空前の食糧危機に直面した。

 アタマスは頭を抱えた。国庫に多少の備蓄はあるものの、このまま全土で不作が続けば、遠からず備蓄は底を尽きてしまうだろう。幸いにも近年いくさはなく、国内は平和が続いている。それを内部から揺るがし、民を餓えて死なせでもしたら王として完全に失格である。否、もしかしたらもう既に王としての資質を失しているのではないのか。不作の原因は未だ不明である。天候も例年通りで、農夫達は何一つ異変を感知していなかった。残る原因は王の治世上の問題くらいしかない。そうだとすれば、神の警告としての不作の可能性が高い。アタマスは真偽を確かめるため、神託を受けようとデルフォイの神殿へ使者を派遣することにした。

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