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あわせコス(緋夜さん宅とコラボ)

緋夜さん宅逆引き境界(http://ncode.syosetu.com/n6994by/)の緤さんと終夜さんとうちの隆リリのコラボ。

「肩パット2枚くらいいれちゃおっかー! アイラインいれるからじっとしててねー!」


 紫色のウィッグをつけたリリアンがニッコリと笑った。大人しく椅子に座っていた緤は視界に入る金色のウィッグをどけて顔を少し上に向ける。

 

「コスプレのメイクはあんまり詳しくないから、頼んだぞ」


「まかしてー!」


 リキッドアイライナーが緤の目尻を縁取っていき、アイシャドウのチップがその周りを軽く撫でていく。しばらくしてリリアンが緤の肩を軽く叩いた。

 

「やったぁあ! 完璧! ちょっと鏡みてよイケメンができたから! 私天才かもしんない!」


「まじでか! みるみる!」


 緤がパタパタと姿見のある場所まで駆けていく。鏡には金髪でバスケのユニホームを着た男が映っていた。鏡の前でポーズを決めた緤が歓声をあげる。

 

「クオリティ高いじゃんか! さすが俺! デルモのコスも完璧にこなすなんて! 自分の美しさが末恐ろしい!」


 リリアンはなんの意味があるのか両腕をパタパタと振って緤にかけよってきた。

 

「私のメイク技術も褒めて欲しい!」


「よくやった! 俺の美しい顔を間近で見続けたら気絶してもおかしくないのによく頑張ったな! まあ俺の為に最善の努力を尽くすことは当然だがこのデキは褒めてやってもいい!」


「うん! 彼氏で免疫がなかったら殴ってたところだよ!」


 2人で両手を合わせてきゃぴきゃぴと飛び跳ねるさまはとても仲がよさそうだが、会話が会話だった。

 リリアンと緤の会話を遠巻きに眺めていた終夜がため息をつく。

 

「……っていうか、なんで俺までまきこまれなきゃならねぇんだ」


 かえりてぇ。と呟いた彼の頭には緑色のウィッグが乗っていて、目には黒縁眼鏡をかけていた。指先に包帯を巻いてバスケのユニフォームを身に着けている。彼の横にいる隆弘も同じユニフォームを着ていて、頭には青いウィッグが乗っていた。肌は黒いドーランが塗られていて、眉まで青い色をのせられている。

 隆弘は眉をひそめた状態で呟いた。

 

「なんつーか……運が悪かったと諦めるんだな」


「アンタも大変だな……いろいろ」


「俺は神に愛されすぎてるからな。このくらいエッジが利いてねぇと人生のつりあいがとれねぇよ」


「ああ……そうだ、あんたもそうか……ああ……」


 帰りてぇ。

 と、終夜が小さく呟いた。

 

 3日前、リリアンが突然みんなでコスプレがしたいと言い出した。それがきっかけだ。カメラ担当とコスプレ要員あと2名を用意するから、現在人気の某バスケ漫画のコスプレをやりたいと言ったリリアンは、光の速さで手はずを整え、終夜と隆弘も拒否する暇もなく巻き込まれた。

 緤に至っては最初から乗り気だった。というか、2人はどこかで最初から打ち合わせしていたらしい。

 隆弘は黒いドーランをぬりたくられ、ひどく疲れた様子でタバコを咥えた。

 

「で、カメラとあと1人ってのはいつくるんだ」


 今まで緤ときゃぴきゃぴはしゃいでいたリリアンが隆弘を見る。

 

「えっとねぇ、カメラの上田くんと赤担の水梨はもうすぐ来るよ! 黒担はすこし時間かかるかも! 遠いとこから来るからー! 30分くらいだってー!」


「で、お前のメイクが30分だから賞味1時間ってことだな」


 隆弘の言葉に終夜が眉をしかめる。

 

「うそだろ……最低でもあと1時間このカッコしてなきゃらなねぇのかよ……」


 隆弘もタバコの煙を吐き出して壁にもたれかかった。

 

「1時間か……皮膚が死ぬな……たぶんこれ呼吸してねぇぞ、俺の皮膚」


 リリアンと緤は両手を合わせてきゃぴきゃぴ飛び跳ねながら顔を見合わせた。

 

「あれくらいで軟弱だな! 俺なんてほとんど1日化粧してるぞ!」


「私もだよー! 皮膚なんて寝てる間に呼吸させときゃなんとかなるんですー!」



「「ねー!」」


 隆弘と終夜が同時に天を仰ぐ。隆弘の吐き出した煙草の煙がふわりと立ち上って消えた。

 

 

「「帰りてぇ」」


 当然、彼らの願いが聞き届けられることはなく――その後丸一日、彼らの皮膚は呼吸を禁じられたのだった。

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