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二人を結ぶ赤い有刺鉄線  作者: 赤砂多菜
第三章 Road
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第10話

「まだ、それ飾ってたのか」

「きゃぁ、修平君。何歩き回ってるの?!」


 ベッドに寝たままだった美月が慌てて静止するように手を振る。

 その様子を見て修平は可笑しそうに笑った。


「大げさだよ。一日大人しくしてたら、だいぶ楽になったよ」

「それは薬が効いてるだけじゃないの」


 修平は美月の病室に飾られた額縁に手を触れた。

 そういえば、これをここに置いたのも自分だった。

 美月の母親が描いた、二人の未来像の絵。

 花嫁を抱き上げている花婿。


「飾ってて悪い? 私はまだ修平君の事諦めた訳じゃないのよ。振り向いて貰えるように自分を磨いてる最中なんだから」


 拗ねたような顔から一転して笑顔になる。

 それはかつて普通に学校に通っていた頃よく見た美月の笑顔だ。

 まっすぐ前を向いて走っていく彼女はとても美しかった。


「そうか……」

「修平君?」

「道が見えた気がする、俺が進まなきゃならない道が」


 修平はベッドの横のパイプ椅子に座った。


「聞いて欲しい。亜矢に関するこれまでの事。

 もし聞きたくなかったら言って。黙るから」

「……教えて」


 そして、ぽつりぽつりと修平はこれまでの事を語りだした。

 それは茨の道というにはあまりにも過酷な現実。


「信じられないと言いたいけど……、事実なんだよね」

「ああ」


 美月は『でも、どうするの?』とは問わなかった。

 何の助言も出来ない美月にとって、それはとても無責任な言葉に思えたから。

 ただ、


「私だけが手放せば解けるものとばかり思ってたわ」

「何が?」

「修平君に絡まった有刺鉄線」

「なんだよ、それ」

「私が引っ張るから、修平君を締め上げて傷つけるとばかり思ってた。

 でも、違ったのね。私ってホント間違えてばかり」

「俺もさ」


 修平は立ち上がった。


「次も間違えないって保障はどこにもない。

 俺の知ってる亜矢はいなくなった。でも、もし美月の言う有刺鉄線が亜矢のほうにも伸びているのなら、無理矢理にでも手繰り寄せる。

 好きとかそんな次元の問題でなく、亜矢をあそこまで追い詰めた責任を取る。

 それが俺の進むべき道だ」

「そんな身体になるような事だもの。止めたいけど……無駄よね?」

「悪い。でも、俺にからまった有刺鉄線を解くには、この道を行くしかないんだ」

「わかった。まったく、このペンダントを選んでよかったわ」


 美月は胸元の十字架のペンダントを掴む。


「生まれて初めてよ。神に祈るのは」

「ありがとう、美月」


 そして、修平は病室を出て行った。



*---*



「おいおい、もう登校しても大丈夫なんか?」

「自主退院」

「お前なぁ」


 修平は健二を校舎裏に呼び出した。

 2つ、頼みたい事があったからだ。


「健二、以前加太が振り回したナイフ、持っていっただろ」

「ん? これか?」

「て、なんで今持ってるんだよっ?!」

「いや、なんてーかな。

 あんな奴やったけど、これが形見やと思うと変に手放されへん思うてな」

「持ってきてもらおうと思ってたけど、今もってるなら丁度良い。それ貸してくれよ」

「貸してくれって、どうするつもりやねん。まさか恋敵でも刺すつもりちゃうやろな」

「恋敵って祐介さんの事か? まさか。おれは恋敵と呼ぶには釣り合わないさ。

 それに祐介さんには話したい事とお願いしたい事があるからね」

「修平、お前もしかして、まだ諦めてへんのか?」

「もう、諦める諦めないじゃないんだ。

 前にしか俺に道はない。ただそれを歩くだけさ」

「……俺にもっかい祐介さんに連絡とれと?」

「もし、健二が無理だというなら俺は自分の足で探すよ」


 健二は目尻を押さえ込んだ。悩もうとしたが悩むだけ無駄だった。


「分かった分かった。毒食えば皿までだったか、とにかく連絡をとったる」


 そして、ナイフを手渡す。


「それを何に使うつもりか分からんけど滅多な事はすなや。

 お前を信じて渡したんやからな」

「ああ、助かるよ、健二。約束する、誰も刺さないから」




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