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二人を結ぶ赤い有刺鉄線  作者: 赤砂多菜
第一章 Missing
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第14話

 家に帰った修平は、そのままゴロンとベッドに横たわった。

 思い返すのは、唇に今も名残が残っているような柔らかな感触。

 キスなんて初めての経験だった。

 これまで異性と付きあった事なんてなかった。

 亜矢がつきまとっていた事もあったが、そもそも恋愛に興味が持てなかった。

 だが、今は?

 美月は付き合う相手として最高だと思う。

 綺麗で聡明で明るくて。彼女以上の存在なんて探すのが難しいだろう。

 いや、そもそも修平と彼女では圧倒的に釣り合いが取れていないのだ。その点で言えば実は加太の事は言えない。

 それは、とてつもない幸運。

 なのに、この腑に落ちない気分はなんだ。

 頭の中の人物像が美月から別の人物に変わっていく。

 あいつ、絶対泣いてたよな。

 昇降口で別れたままの亜矢。

 家は斜向かいだ。

 会いに行こうと思えばいつでもいける。

 だが、今の修平にとっては千里の道のように遠く感じる。

 あいつは俺の事が好きなのか?

 兄妹的なものじゃなく。

 でも、俺は? 俺はどうしたいんだ?

 自問する修平だったが、答えは一向にでなかった。

 この問題には解法などないのだから。



*---*



 それからも修平は美月の家に通い勉強を続けた。

 さすがに夕食は遠慮したが。


「で、どう。今の所自信の程は」

「そうだな。前々回分を取り戻す……いや、40台狙えるかも」

「ちょっと目標が小さいわね。男なら1桁台目指しなさいよ」

「いや、それはちょっと無理がありすぎるだろ、ハードル高すぎ」

「何が無理よ。私が実践してるじゃない」

「それは元々の出来が違うんだ、俺はあくまで一般人だ。お前みたいな完璧超人じゃないっ」

「人をバケモノみたいに言わない」


 座布団代わりにしていたクッションが、修平の顔面に命中する。

 それの勢いに負けたように修平がそのまま床に倒れこむ。


「ねぇ、今週末空いてる?」

「ん? ああ。またデートか?」

「うん、今度は映画にしない? ほら、いま人を殺せない殺人鬼ってキャッチフレーズでCMやってるでしょ」

「ああ、欠落の代償か。またコアなもんを……」

「だって、ラブコメとか展開が読めてつまんないもの」

「いいぜ、待ち合わせは現地集合?」

「うーん、人がいっぱいいるかもしれないから」


 美月はパソコンで地図を呼び出す。


「ここの交差点でどう?」

「分かった」

「じゃ、約束ね。帰りにウチよってご飯食べてく?」

「おーい。また繰り返すのか、あれを」

「こうなったら、あの二人が慌てるほどイチャついてやる」

「勘弁してくれよ。俺の心臓がもたない」



*---*



 風呂から上がり、部屋に戻ると携帯が震えているのに気付いた。

 普段からマナーモードにしているからなのだが。

 液晶ディスプレイには北大路と出ている。


「もしもし」

「修平君? 私だけど」

「どうした? また家の前に加太が居たりするのか?」

「ううん。用もなく電話しちゃダメ?」

「え? い、いや。そんな事ないけど」

「あははっ」

「……美月?」

「いや、私もこんな事は初めてだから、少し緊張してるかな」

「かけといてそれかよ」


 二人はそれからしばらく話し続けた。

 服を着るのを忘れていた修平は危うく風邪をひくところだった。


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